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アンプの話(3) [電気音響]

「アンプの話」も3回め。マイクの次はアンプなので,その順番で書いてきた。クラシックギターは本来生音で勝負するものである。やむなくPAを使う際の関連で,マイクの話からしている。やはり,マイクが一番大事だと思う。次はやはりアナログでアコースティックな点でスピーカーである。その点マイクを使わないエレキ楽器では音の入り口であるピックアップも大事だが,弦振動を直接電気信号に変換し音を介さないので,同程度にアンプも大事なのだろう。

好き嫌いは別としてエレキ楽器がこれほど普及拡大した理由に,そのアナログ性にあると思う。楽器など感性が要求される分野にはアナログ技術はなじむ。いち早く電子技術を取り入れたエレキ楽器だが,クラシックで電気を受け入れないのと同様,真空管アナログにこだわるのは理解できる。一方デジタル技術は,信号をデジタル化さえしてしまえば,アナログでは考えられなかった高度な演算が可能である。

DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)の誕生がそうしている。DSPの応用はおよそデジタル信号を扱うありとあらゆる分野にインパクトを与えている。音響学でもこれを使う研究分野が急速に進んでいる。実例は枚挙にいとまがないだろうが,例えば補聴器の性能が格段にあがって,難聴の人に朗報となった。補聴器は,マイクとスピーカが背中合わせの音響機器であるので,アナログ時代はハウリングを起こさないことが最大の課題であったが,DSPの出現で,一挙解決した。ハウリングのピー音は実生活にはないので,連続音を選択的に消すことがデジタル演算で容易に可能になったようである。その他ノイズ(電気的ではなく外来の)を消すことも容易になった。

デジタル技術ではアナログで行っていた処理も当然出来るので,一挙にデジタル時代になったわけだ。では,デジタル万能かというと,そうでもない。必ずアナログ部分が存在することと,アナログ技術で非常に単純に出来ていたことも,デジタルでは一定の複雑な処理を通さないと出来ない。いわば,自然現象をデジタルで合成していると言うこと。だから,自然現象で再現困難だったこともプログラム次第でできるのだが,アナログで出来ることはそのまま,アナログで残ってほしいと言うのが願いである。あまり自分ではやらないが,アナログ用の電子部品すら手に入らなくなって,アナログ電子工作が出来なくなるのが心配である。それと,デジタル化するとブラックボックス化してしまうことである。メリットとデメリットは裏腹でもある。現在PCの組み立てを電子工作と思っている人は殆どいないだろう。例えばローパスフィルタという基本的な電子回路は,アナログならば,コンデンサと抵抗の2個の素朴な部品で出来るものが,デジタルではAD変換してデジタルフィルタを入れてDA変換しないといけない。各部に複雑な専用の半導体部品と配線がいる。

単純なものがムダに複雑化されると,楽器など感性を要求される分野から拒否されるだろう。エレキの人たちが真空管アンプにこだわるのはその一例と思う。アナログ動作のトランジスタ製もしっくり来ないようだから,最新のデジタルアンプなどもってのほかだろう。エレキはやらないので想像だが,おそらくエレキギターの手触り感が出ないのではないだろうか?手袋して弾いているような感覚は否めないのではないだろうか?

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