弾きやすい曲(バッハ編) [雑感]
「弾きやすい曲」を公開したとき,MASAさんからコメントをいただきました。
クレンジャンスやカルドーソといった新しい人の曲でも弾きやすいものもあるとの事,改めて情報有難うございました。
これらの作曲家はいずれもギタリストで,演奏技術にあった曲を生み出してくれているようで,ありがたいことである。一方ポンセはギターを弾けなかったはずだが,比較的弾きやすいのは立派。この辺は現代の古典といって良いだろう。現代ギター4月号には福田進一さんの手で,バリバリの現代作曲家ベリオの超難曲が紹介されていた。最先端技術を垣間見ることができる。
一般の有名作曲家のギター曲は非常に少なく,あっても難曲となることが多い。かつてならば,ブリテンの「ノクターナル」などが最右翼だった。古今の最高峰としてはやはりバッハ。しかし残念ながら,弾きにくさでも一流。前にも書いたが,その難しさのためギターをあきらめていたこともあった。では,敢えてバッハの曲の中で,ギターで弾かれる曲で最も弾きやすいのは何か?
1.チェロ組曲1番(BWV1007)からプレリュード
原調ト長調が通常ニ長調に移調されて弾かれる。あえて低音に対旋律を沢山入れたセゴビアの演奏のようにしなければ,演奏自体はかなり楽で中級以下の技術で十分弾けそうだ。特に後半の1弦開放弦ミを伴ったカンパネラから6度で5弦開放弦ラを伴いながら上がっていく盛り上がり箇所など,カルリなみの弾きやすさ。
2.バイオリン・パルティータ1番(BWV1002)からサラバンド
バイオリンの譜面そのままで,まるでギター曲。むしろバイオリンでこの重音を弾き分けるのは難しいことだろう。パルティータ1番はいずれもドーブルを伴うものだが,この曲のドーブルもリズムを三連符に細かく切っただけなので,これもかなり弾きやすい。
3.リュートのためのプレリュードBWV999
小品ながら,均整のとれた美しさを持つ佳曲。平均律第1巻1番のハ長調プレリュードとも並び賞される。ピアノの初歩向け曲としても良く用いられる。ニ短調に移されて全体的には弾きやすいのだが中間部の拡張したFコード,小指での5Fセーハのみ弾きにくい。この難所をクリアできるかどうかがポイント。余談だが,かつてジョンのソフトロックグループ「スカイ」の演奏曲目にもこれをアレンジした演奏があった。
4.BWV998からプレリュード
「プレリュード,フーガ,アレグロ」と3曲の組曲風の曲であるが,プレリュードだけならば弾きやすい。ゆったりとしており,例えば1006aのプレリュードなどと比較してもずっと弾きやすい。
5.チェロ組曲3番(BWV1009)のクーラント
チェロ曲は音がバイオリン曲ほど細かくないので,調性さえ合えば比較的弾きやすいものもある。しかし,組曲第5番(リュート組曲3番)のサラバンドなどは,音が少なくゆっくりして技術的には何でもないものの,まるで現代曲のように難解。リュート曲でも,個別の舞曲(BWV996のブーレとかBWV1006a後半の舞曲など)では弾きやすいものも。
バイオリン曲やチェロ曲は鍵盤では片手で弾ける。ギターでは対旋律などを追加して演奏する。逆に両手で弾く鍵盤曲は,如何に初級曲でもギターでは難しい。
ご無沙汰しております。
BWV998からのプレリュードは次に弾いてみたい曲と考えていましたが、比較的弾きやすいとのことで安心しました。現代ギター誌の付録(「...てんこもり」)では、低音部の消音をうるさく言ってるようですが、こだわりすぎのような感じもします。
BWV999のプレリュードは以前弾いておりましたが、テンポ設定を遅めにすれば、私でもなんとかこなせています。
ところで、このシリーズにあった、Gerald Garciaの練習曲については、予備知識がありませんでしたが、このブログのおかげで、アマゾンに発注しました。このうちの1つでもレパートリーにできればよのですが。
では、またおじゃまします。
by やーさん (2009-04-08 06:08)
こんにちは。
バッハの曲では、リュート組曲第1番のブーレとアルマンドが比較的弾きやすいですね。
バッハの場合は、編曲と運指で弾きやすさがかなり変わります。
まずは、弾きやすくて信頼のおける楽譜を選択して、その上で運指も工夫する必要があります。100人のギタリストがいれば、100通りの異なる運指となりますね。
BWV998のプレリュードは名曲中の名曲で、技術的には弾きやすい曲ですが、音楽的には難しく、長年弾いていますが、いまだに満足できる演奏ができません。 つくづく、バッハは難しいと思います。
by MASA (2009-04-08 12:24)
やーさん,MASAさん,コメントありがとうございました。
さて次何をやろうか?というのが楽しくも悩ましい問題ですね。
Garciaの練習曲の前半は開放弦が多用されており,即興でぱっと作ったような曲です。おすすめは,24番のピアソラへのオマージュのミロンガです。本物のピアソラは大変ですが,これならソルの月光くらいの技術で弾けると思います。
バッハのプレリュードはどれも充実した内容で,弾くだけでも大変なものが多い中BWV998は比較的ゆっくりかつギター的なので選びました。楽譜は昔,玖島隆明編のピースしかありませんでしたが,今はかなりの種類手に入ります。運指もかなりバラエティがあると思います(私も昔と今では相当変わっています)。大きくはチェンバロ的に弾くか弦楽器的に弾くかで,変わってくると思います(スラーの有無など)。バッハはやはり大変ですが飽きずに取り組めるのは大きいと思います。
by Enrique (2009-04-08 23:15)
こちらにもちょこっとコメさせてください。
バッハにもいろいろあるんですねえ。楽譜だけは持ってますが、譜面見てるだけで満足するレベルです。でも来年998のプレリュードやるぞい。
by 黒板六郎 (2012-11-12 22:20)
黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
初期の頃の記事ですね。
最もギター向きなのが,リュートのためのBVW995-1000,1006aと7(組曲)あります。バラせば組曲4曲で23曲とBWV998の3曲,あと999と1000の2曲で,28曲になります。
あと無伴奏ヴァイオリン,チェロがそれぞれ6組曲で,67曲(ドーブルも個別に数える)あります。バッハ自身の編曲のダブりを引くと,95-13=82曲でしょうか。
私がリュート曲はレッスンレベルで結構取り組んでいますが,ヴァイオリン,チェロも入れると1/3に満ちません。
その他,無伴奏フルート・パルティータBWV1013が編曲されています。鍵盤曲は技術的にほぼムリですが,ゴールドベルク変奏曲BWV988!はエトヴェシュの画期的な編曲があります(ほとんど音の省略なし)。
あと「アンナ・マグダレーナの音楽帳」の小品など(バッハ以外の人の作品も多い)は昔からギターに編曲されて弾かれますが,決して易しくはないですね。
あとは,「主よ,人の世の喜びよ」などの有名なコラールの編曲ですね。独奏器楽曲からのは編曲と言ってもトランスクリプションですが,こちらは完全にアレンジということになりますか。
バッハは基本編曲ですが,ギターで弾ける曲が沢山あって,レパートリーにこと欠かないのも,愛される原因でしょうね。
by Enrique (2012-11-13 12:48)