SSブログ

暗譜に関して(過去の事例1-1) [演奏技術]

あがりに関して論考した際,自分の場合は暗譜の影響が大きいということを書いた。ここでは自らの失敗例に基づき,メンタル面よりも暗譜そのものの技術面に重点をおいて議論したい。

バッハ田部井.jpg 数年前,Bachの「BWV1000フーガ」を弾いた例である。冒頭のテーマがあちこちに音高や形を変えながら現われる,文字通りのフーガである。バイオリン・ソナタ1番のフーガからのバッハ自身の編曲とも言われるリュート曲である。楽譜はGGの田部井編(写真)を用いた。やはり昔のGG社別冊の「リュート全集」J. Willardの"Lute Suites for Guitars",それに阿部保夫編の「バッハ名曲選集」などいくつかのバージョンを持ってはいるが,それらは参考に止めた。楽譜の画像的イメージが混乱するので,暗譜用に用いる楽譜は1つにすべきである。用いる楽譜の譜割りも重要である。


結果は,冒頭と後半部のかなり長いフレーズを弾き直してしまった。部分的には良かったと言われたが,過去の発表会中,最大の事故であった。あえて,プラス要因をあげれば,最後だけをよく取り出して練習していたので,最後にたどり着いた時は少しほっとして何とか弾き終えることは出来た。そのときのメモを元に事故の原因を探ってみた。録音も残っているので,聴きながらの分析も可能であろうが,恐ろしくて出来ない。

リハーサル,シミュレーションは何度かやった。慣れる事には努力したが,やはり曲が身に付いていなかったのだろう。練習段階でもメモリースリップを何回か経験していたが,その対処法がなかった。曲はさほど長くないにも拘わらず,迷路に入りこんでしまった。以下に具体的反省点を挙げてみる。

(1)最初の数小節以降歌えなかった。直前に訪れたライプチヒでのバッハの墓参りはやはり直接の効用はなく,むしろ,おか目八目と言うか,私以外の家族の方が音を覚えていた(妻は横で歌って教えたかった,と言っていた)。かつてBWV1006のプレリュードを(自分で)全部歌えたのとは大違いだった。

(2)CD等を聴かず,耳からのインプットが殆どなかった。当時はYouTubeもなく,取り組んだ曲を耳から聴くことがなかった。お手本の演奏が頭の中で鳴っていれば,ミスっても修正は可能であろう。譜面からの情報と自分の演奏のみでやっていると,自分のメモリが飛べばおしまいである。他人の演奏を聴く時間があれば自分の練習をすれば良いと思っていたが,これは間違いだった。聴くことも練習のうちであった。かつて,すごい大曲(と当時思った曲)をばりばり弾きこなすのに,初見でも弾けるカルカッシやソルのやさしい練習曲などが弾けない友人がいて不思議だった。彼はまず音を覚え,指板上でその音を探すという練習法のようで,音を探し終えた時には曲が出来上がっていて,音と手の形で覚えているので忘れ難いのだった。極端な例だが,指板上で複雑に音を作っていくギターという楽器の特性上,そういう練習法もあるのかもしれない。

(3)楽曲の性質上歌いづらい。そこで,直前に師から楽譜の写真的記憶を薦められたが,前にも書いたように,これは困難だったので,楽譜のどの辺を弾いているか頭にイメージしながら弾こうと心がけた。しかし,それまでにそのような練習をしたことが無かった。従来取り組んだ曲の楽譜のイメージは大雑把には頭に浮かぶが,そこから楽譜を読み取れるほどの精密なイメージは浮かばなかった。そろばんの玉は少し浮かぶのだが。
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0