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楽器を続けられる人 [雑感]

楽器店には,沢山沢山の楽器が並びます。
その数の多い事には驚かされます。「そんなに買う人いるのかな?」と思うわけですが,需要があるから並ぶのでしょう。

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数えきれないほどの色とりどりのエレキギターが並び,鉄弦のアコースティックギターも何十本あっても,クラシックギターは1本もないとか,隅っこに申し訳程度に2,3本あるかなという状況です。

クラシックギターはヴァイオリンやチェロよりも少ないのかな?といった状況です。


何でも,フェンダー社の調査によれば,ギターを賈って1年以内で止める人が9割だとか。楽器店でのあの多さからして,さもありなんと。何となく簡単に弾けそうな気がするからかも知れません。確かに,コード奏法でのカッティングやアルペジオならすぐ弾けるようになりますが,それだけでは音楽にならないので,歌でも歌うか,バンドでも組まないと面白くありません。一方,一人でも楽しめる独奏は,1年程度でそうそうカッコよく弾けるものではありません。

むしろ,クラシック曲ならいくらでも易しい曲はありますので,それから段階的に始めれば,そこそこの曲なら1年くらいで何とかかもしれませんが,ポピュラー曲をいきなりカッコよくというのはムリだと思います。

その辺の奏法に関する認識の落差が課題のような気がします。


上手くなるコツは?
上手に弾ける秘訣は?

とかいった質問や回答がネット上に溢れています。
しかし,どういうジャンルのどういう演奏が上手いと思うのか?本人はどうしたいのか?質問に質問したくなります。
そもそもギターの奏法ほど,分かりにくく,誤解にまみれたものも少ないのではないでしょうか?

まずは,ギターとはピックで弾くものという誤解。指で弾くのは特殊奏法でしょうか?
クラシックギターでピックを使うことは全くありませんので特殊奏法ですらありません。


学生時代,エレキの知人に,クラシック奏法では当たり前の重音をつなげて弾いて見せたところ,「何でそんなことができるんだ?」と驚愕していました。エレキの彼は弦を指ではじくなどという文化は全くないので,コインをピックがわりにして弾いていました。1本の弦をはじいてメロディを奏でるか,「ジャン」とストロークするしかしかないのです。

むろん,エレキはエレキの世界がありますので,とやかく言うつもりはありませんが,ピック奏法が全てだと思えば,右指も使って弾くクラシックギターの奏法は全く別もので,ありえないものなのでしょう。

これだけでも,同じ名前の楽器でありながら,ここまで奏法の違う楽器も少ないのではないでしょうか。ギターという名前の付く楽器ながら違う楽器と思った方が良いのでしょう。


名前が同じでも,奏法から使われ方から何から全く異なります。
楽器のボディも,ネックの太さも,弦の材質も異なるのに,それでも混同される難しい楽器,誤解に満ち溢れた楽器です。

ピアノには,クラシック用の楽器とか,ジャズ用の楽器とか,ポップス用とはありません。
ヴァイオリンもそうです。フィドルと呼ばれているものでも,全く同じものです。

ギターは全く逆で,ギターと呼ばれている楽器でも,ジャンル用途が全く異なります。
クラシックギターは万能楽器で,いわばピアノやヴァイオリンのような位置付けなのですが,アメリカに渡って,スチール弦のウェスタン・ギターなどになったわけです。エレキギターは電気楽器として最も成功した楽器と言われます。それだけ多くのバリエーションが現れたのが,これらギター末裔楽器の発展・大衆化の原動力でもありますが,その反面,大いなる誤解を生んでいる事も事実です。


その様な楽器が他にあまりないからでしょうか。スチール弦を扱う人はそれがギターだと言うし,エレキギターを使う人はそれをギターだと言う。おそらくギター人口はエレキの方が遥かに多いので,電気を使わない従来ギターをレトロニムでアコースティック・ギターということになったのですが,その一般名称をヤマハがスチール弦楽器の商標に使ったものだから,国内ではさらに誤解を生んだのではないでしょうか。

クラシックギターは電気を使いませんので,一般名称としてのアコースティック・ギターに入る訳ですが,スチール弦楽器のみの事を指すヤマハの「アコースティック・ギター」には入りません。敢えて区別するためにガット・ギターというようです。この名称もまたメンドウなものです。確かに本来は弦にガットを使いましたが現在ではナイロンを使う事が多い上に,弦の種類を楽器の種類に当てているのも何ともなものです。そういうコンセプトのネーミングならば,ウェスタン・ギターもエレキ・ギターも「スチール・ギター」と呼ばないといけません。そういう名称のまた別の楽器があります。ネーミングが理屈にはまっていない場当たり的なものである事も誤解の原因の一つでしょう。


広い意味での「ギター」ほど「同床異夢」の楽器もないのではないでしょうか。
プロでも別の種類のギターを上手に扱える人は滅多にいません。奏法が全く異なりますから当然でしょう。
誰かの演奏が,かっこいいと思って,そんな様に弾きたいと思って楽器を購入しても,まず技術的問題以前に,違った種類の楽器を入手してしまったらどうしようもありません。

一口にギターと言っても全く異なる種類のものが混在する事を知らないといけません。
「ちょっとくらい種類が違ったって,ギターはギターだろう。」と,おそらくそういう誤解が,大いなる誤解を生んでいることでしょう。

むしろクラシックギターならば何でも弾けるのですが,エレキとかアコギとかは特定のジャンルに特化された楽器なのですが,一般の楽器店に多く並ぶ楽器はほとんどがそれらだというところが問題なのです。


初心者にはその辺の事情は全くわからないでしょう。
その辺の事情を良く踏まえて,少なくとも,1年以上続けたいならば,やりたい音楽ジャンルや奏法などを専門家とよく相談する事でしょう。

上手くても下手でも,各ジャンルで上手く趣味嗜好が合えば長年続ける人はいます。
今となっては間口の狭いクラシックギターの範疇で特にそれは顕著だと思います。
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U3

私はS・YAIRIのギターもトランペットもテナーサックスもまともに演奏できませんでした。
根気がないのと目的がハッキリしないのでそうなったのだと思っています。
by U3 (2023-10-12 09:53) 

Enrique

U3さん,
選ばれた楽器からして,音楽ジャンルはジャズ系がお好みではなかったのかな?と思います。S. YAIRIのギターというのはクラシックギターだったのでしょうか?それともスチール弦のフォークギターでしょうか?両方作っていますのでメーカー名では楽器の種類は特定できません。ジャズご嗜好ならばフルアコやセミアコのジャズギターだったと思いますが,どちらの矢入さんもそれは作っていなかったと思います。
トランペットやテナーサックスは特に何用ということはないですが,どのジャンルであれ独学では難しいので,やはり専門家に就いた方が続いていたとは思います。
by Enrique (2023-10-14 19:31) 

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