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「弾き抜く」という事 [演奏技術]

「ここは『弾き抜き』たいですね。」

指導者にその様に指摘されることがありました。

かな漢字変換では「引き抜く」しか出ませんが,「弾き抜く」です。むろん演奏の事です。

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「弾き抜くってどう言う事?」
いわずもがなでしょう。きちんと誤魔化さずに弾く事です。単音部とか易しいところは,無意識に弾き抜けますが,特に声部が重なり特徴的な動きがあるような箇所は,ふつうに弾いていてもごっちゃになって,なかなか弾き抜けませんので,丁寧な個別練習が必要なところです。


シロートの演奏にありがち(むろん当方もシロート)ですが,弾きやすいところは気持ちがこもって丁寧に弾かれていても,弾き抜くべきところがイイカゲンでは,しまりのない演奏になります。例え話をすれば,お友達づきあいでもそうでしょう。どうでもいい時ばかり丁寧に付き合ってくれても,肝心のところでイイカゲンではあまり良いお友達とは言えませんね。

お話に例えてもいいでしょう。
普通は大事なところは丁寧に言葉を選んでしゃべるものですが,どーでもいいところは丁寧にお話ししていても,肝心なところで言葉が不明瞭になれば,聞き手は「何かこの人隠しているのかな?」とか,悪くはなくても「ちゃらんぽらんな人なのかな?」くらいの受け取り方になるはずです。

もっとも,このようなたとえ話も,受け取りようによっては良し悪ししではあります。
人によってはそのようなたとえ話が全く通じない方もいます。当方は,新しい事柄を学ぶ際,以前学んだものを基礎に,「〜のようなもの」で,「今回はここが違うぞ」とか考えます。しかし,たとえられた話じたいが通用しなかったり,たとえ話じたいの思考習慣が無ければ話が通じません。

また,具体例を挙げないと分かりにくいかもしれませんが,そうすると逆に「この曲の(場合)ここはこう弾く(だけだ)」という,特殊なケーススタディになってしまうおそれがあります。


技術が楽か難しいかではなく,たとえ技術的に難しいところでも,弾き抜くべきところはありますし,技術的に楽なところでも,むしろテキトウな方が良い場合もあります。だから,まずは技術の安定が音楽的な演奏には不可欠です。基礎技術練習や練習曲は,いわば弾き抜き箇所のためと言っても良いでしょう。また,技術面と音楽面とは本来独立に考えないといけないわけですが,それがごっちゃだと,こういう話も伝わらない事でしょう。

弾き抜くべき箇所をしっかり弾き抜いているかどうか。演奏の良し悪しがはっきり出る所です。
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REIKO

「やり抜く」の演奏版が「弾き抜く」でしょうかね?
その楽曲の聴き所(技術的にも難しいことが多い)が弾き抜けているかどうかは重要ですね。
大抵の曲は、その中で比較的易しく弾ける箇所と難しい箇所が混在していて、曲の難易度は後者が弾けるには…で付けられるので、難しいとされる曲でも易しく弾ける部分がかなりあります。
実力を大きく超える曲だと、その易しい部分は程なくカタチにできても、残りが大変…ついつい弾ける部分だけ楽しんで後はテキトーに誤魔化してしまいがちです。
難しすぎる曲に取り組んでも上達に繋がらないというのは、そういう理由もあるんだろうと思います。

by REIKO (2023-08-07 12:06) 

Enrique

REIKOさん,
全くおっしゃるとおりですね。
どんな難しい曲でも易しいところもありますし,その逆もありで,弾き抜きポイントとなる難しいところが少なければ,そこを徹底して練習して何とかなりますが,そういう部分が多いと曲になりませんね。
それでもえっちらおっちら最後まで行って,あらかた弾けている積りになるのも困ったものです。
以前ご指摘の様に,そういう個所は最初に克服しておくと直ぐに仕上がるわけですが,最後に残ると仕上がりまでの時間が→∞になってしまいますね。

by Enrique (2023-08-07 13:09) 

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