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側・裏面板を見る [楽器音響]

前記事ではギターの側・裏面板として使われるハカランダ材の代替材について書きました。

楽器になったものは木目で見るしかありませんが,ここでは実際の楽器の画像で見ていきたいと思います。

当方所有の楽器の画像から。

ブラジリアン(ハカランダ)。ベラスケス63年製です。柾目のハカランダ。スプリット(鉈割)材ではないかと思います。この頃は,ハカランダ材はふんだんにあったのでしょう。妻に弾いてもらったところ,「あらいい音ね」とのご託宣。

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マヌエル・ベラスケス63年製。ブラジリアンの柾目材です。

アルカンヘル・フェルナンデス65年製。 これはシープレス(糸杉)です。通常フラメンコギターの側・裏面に使われる素材ですが,銘器アントニオ・デ・トーレスにもシープレスのものがあり,ヨーロッパ伝統の材でもあるようです。現在当方のメインギターです。

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アルカンヘル・フェルナンデス65年製。シープレス材です。

ホセ・オリベ66年製。柾目のハカランダ。この頃はまだ材はふんだんにあったのでしょう。

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ホセ・オリベ65年製。やはりブラジリアンの柾目材です。

ヤコピ77年製。見事なハカランダです。ほぼ柾目材ですが,少しうねった木目をボディシェイプにあわせています。

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ホセ・ヤコピ77年製。やはりブラジリアンの柾目材です。

1978年製・野田公義1500S。当方が初めて入手した手工楽器。典型的なインディアン・ローズウッドです。この時代の国産楽器は(当方の感覚では)定価10万円がインディアン並,定価15万円がインディアン上,定価20万円がブラジリアン・並,30万円がブラジリアン上だったと思います。もっとも70年代は物価上昇が著しかったので,1,2年違うと価値観が全く異なったかもしれません。60年代ならば定価10万円以下でもブラジリアン製の楽器がありました。

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野田公義78年製。典型的なインディアン・ローズウッドです。

2002年製・星野良充。
見事な木目ですが,マダガスカルではないかと思います。この年代からして,ブラジリアンの良材使用は難しそうです。

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星野良充2002年製。マダガスカルだと思われます。

オットー・フォーヴィンケル2003年製。Otto Vowinkelはオランダのトップ製作家です。ブラジリアンの様ですが,あまり良材とは言えませんが派手な木目の好きな人には良いかも知れません。しっかりと乾いたハカランダの音はします。

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オットー・フォーヴィンケル2003年製。ブラジリアンのようです。

以上素性のはっきりとした手持ちの手工楽器の画像を挙げました。
メープル製の楽器は,探せば出てくるかも知れません現在引っ張り出せません。あとお安めの楽器にはマホガニー製というものがあります。多くあるネック材と同じですから,比較的見分けやすいと思います。


問い合わせの多いのが,流通量が多い量産楽器の素材です。有名なところでは,松岡良治,YAMAHA,ヤイリ,茶位幸信あたりでしょうか。むろんこれらのメーカーの上位機種には手工高級品もありますが,多く出回っている定価10万円以下のもの(年代にもよりますが70年代以降)では,ほぼ例外なくラミネートです。70年前後あたりブラジリアンのラミネートもあった様ですが,殆どがインディアンのラミネートのようです。

60年代,70年代のギターブームの頃には多種多様のメーカーがクラシックギターを作っており,失礼ながら全く聞いたことのない個人名のものもあります。お安い楽器の素材を詮索しても仕方ないと思いますが,「ビンテージ品!ハカランダ!」などと称して,オークションなどに出ているものもありますので,注意が必要です。まず「掘り出し物」などありません。悪意でなければ出品者ご自身もわかっていないのでしょう。

インディアンは色が濃い縞模様のイメージだったのですが,松岡良治に使われているものは70年代初期は色が濃いのですが,どんどん色の薄いものを使っています。

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72年製松岡良治No.20。インディアンのラミネートの様です。

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2000年前後の松岡良治MH100。インディアンのラミネートの様ですが色が薄いので別の素材かも知れません
以上,ブラジリアンと言っても鉈割りの柾目材を最高に,鋸挽きの柾目・板目材(以上ソリッド;単板),場合によってはラミネート(合板)があります。インディアンの方は大概柾目材で,量産楽器にはやはりラミネートが使われます。現在の量産品には色んな素材が使われておりちょっと見には何のローズか区別つきません。

70年代以降の定価10万円以下の量産品では,ごく初期のマホガニー材などのものを除いて,ローズ系ならばラミネートと見て良いでしょう。ただ中古品でラベルからは定価が分からないと言うこともあるでしょうが,ひと桁読み間違える事はまずありえません。ど素人の方だと,数千万円のトーレス も,数千円の量産楽器も区別はつかないと思いますが。「聞いたことの無い名前だが高級品かも?」というのはまずありえません。

沢山の楽器を見ていれば,選別眼はついて来ますが,側面・裏面の素材だけを詮索してもしようがなくて,要はバランスです。例えば指板が色の薄い材で,側面・裏面がハカランダな訳がありませんし,付いている糸巻きの質からでもある程度判断することができます。糸巻きでもお値段は数百円から数十万円まで価格差がありますから,オリジナル状態ならば,お値段相応のものが付いているはずです。ただし,国産・舶来・年代にもよります。

あと,手工品と量産品の違いの区別は楽器を見ても分かるはずもありません。手工品,Hnad Craftedとラベルに記載されるものもありますが,手工品として名の通っているものはあえて手工と書く必要も無いですし,逆に100%機械生産の楽器というもののありませんから,どんな楽器であれ多少は人の手にかかっていると言うのが実態です。年間10本程度作る個人製作家の方はまぎれなく手工と言って良いでしょうが,そうでないという区別は特に無いでしょう。
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