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ポータブル電源が普及中 [雑感]

かつてなら非常用電源と言えば,エンジン発電機が最も信頼のおけるものでした。

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近年急激に存在感を増しているのが,充電式のポータブル電源です。

このあたりが,定番でしょうか。

Jackeryというのは,iPhoneのバッテリー技術者がスピンアウトして興した会社と聞いています。
日本のJVCケンウッドも参加しています。JackeryのOEMなのかJVCケンウッドがどこまで技術参加しているのかは良く知りませんが業務提携しているのは事実です。
JVCケンウッド ポータブル電源 BN-RB62-C 充電池容量 174,000mAh/626Wh

JVCケンウッド ポータブル電源 BN-RB62-C 充電池容量 174,000mAh/626Wh

  • 出版社/メーカー: JVCケンウッド(Jvc Kenwood Corporation)
  • 発売日: 2021/09/23
  • メディア: エレクトロニクス
上のJackeryのものと中身は同じでしょうが,容量のバリエーションが異なる様です。
バンバン売れるものだから,その他多くのメーカーが参入しています。
そうお安いものは出ていません。いわゆるデジモノとは異なり,リチウムイオンバッテリーやパワー半導体の容量あたりのコストが掛かりますから,大幅に安いものは作れないはずです。

まだコスト面や重量当たりの出力面では,エンジン発電機には及ばないものの,かなり肉薄しています。
これは,エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリーの普及が大きいわけです。

エンジン式発電機が燃料の確保が必須であるのと同様に,蓄電式では充電が必須です。家庭の電源に加え,ソーラーパネルや自動車のDC12Vからも充電出来ます。従来エンジン発電機を使っていた用途が直ぐにこれに置き換わるとも思えませんが,それとの併用や最近はやりのソロキャンプのお供などレジャー用には最適でしょう。

お手軽で,騒音が無いのが何よりものメリットでしょうか。さらに言えばエンジン発電機は掛けていれば電気を使わなくても燃料は食いますが,蓄電式は大体は電気を使った分だけ減るという点は合理的です。

当方もソーラーセルパネルの設置にあたって,蓄電装置としてこれは魅力でしたが思い留まりました。理由の第一はお値段,第二は余りにも便利すぎると言う点です。

手持ちのバッテリーにチャージコントローラとインバータを追加すれば同じことがお安く出来ます。
ただし,全部新品で買い揃えるとなるとそうでもありません。

蓄電にはバッテリーのコストが大半を占めます。リチウムイオンバッテリーを単体で買ったりすると,すべての量産工業製品と同様にたくさん出るものが安くなりますので,却って割高になると思います。当方のシステムには昔から使われている鉛蓄電池,YUASA製50Ahのディープサイクル・バッテリーEB50を使用しています。

鉛蓄電池はクルマ用のものがお馴染みですが,これは性能が少々異なるディープサイクルバッテリーです。
鉛蓄電池の発明は1859年だそうですから160年以上経っています。これほどの枯れきった技術の工業製品というのも少なそうです。全く改善の余地もなさそうなシロモノですので,クルマ用と蓄電用のディープサイクル型というのは何が違うのだろう?と疑問です。原理は全く同じですが,それぞれの使われ方に特化した電極形状の違いだけの様です。何分クルマ用の方が大量に出回っていますから,新品価格も安く,さらに再生バッテリーなるものは更に安く入手できますので,安いクルマ用を蓄電に使う方もいますが,耐久性が異なります。車の場合はエンジンをかける際の瞬発力が重要ですから100A以上などの大電流を短時間流せる様,鉛電極をスポンジ状にして表面積を稼いでいます。放電は金属鉛が食われる化学反応ですから,クルマ用で深放電してしまうと鉛電極がボロボロになっておシャカになってしまいます。その為鉛電極が食われない程度の放電量でのそこそこの充電状態で使うことが要求されます。一方,蓄電用途では,例えば昼間溜めた電気を夜の間に丸々使い切りたいとかいうこともありますから,深放電しても電極が痛みにくいディープサイクル型が有効で,その点でクルマ用は向きません。

ちなみに,50Ahというのは電圧が12Vですから,600Whですから,上のJVCケンウッドブランドのポータブル電源と同じです。バッテリーだけだと安いですが,あとチャージコントローラとインバータが必要です。全部揃えると金額は大差ありません。

RENOGY製のチャージコントローラ。当方のものは今のところしっかり動作しています。
太陽光発電の電気を無駄なく蓄電池に充電してくれます。かりに当方のパネルが年間240kWh(≒0.25kW×24h×365day÷9)発電するとして,その半分の性能改善に役立つとすると,年間2800円程度の価値ですから数年で元は取れそうです。

インバーター。これはものすごく値段の差があります。お値段が容量に比例的なところを見てもパワー半導体のコストが大半のはずですので,そうそう安くも作れません。今回購入したものは安いのがたたって不良品でしたが。交換品でなんとかなるか,と言うところです。AC100で使うには必需品ですので,これだけのコスト計算はできません。DC12Vの状態のままで使うならばこれは必要ありません。

なお,バラで購入する際は,少なくとも機器間の適切な定格容量と定格出力の組み合わせは必須です。間違った組み合わせで,期待した様な発電量にならないと言ってもそれは自己責任です。しかしながら,ネットショップ上に溢れる品物で定格などをはっきり表示していないものも少なくありません。定格などを示さず,売る方もよく分かってない様な物,能書きのおかしなものや単位の表記を間違っているようなものは避けたほうが賢明でしょう。

ユーザーの方も,電子レンジが使えなかったとか言って文句言っている人がいますが,インバーターが1000W定格だとしても元のバッテリーの容量が足りなければムリですし,仮にそれが十分あったって1000W定格で電子レンジはムリでしょう。通常電子レンジは高周波出力で1000Wくらい出せますから,消費電力は必ずそれよりも何割増しかになります。100Vで1000Wということは,バッテリーからは80A以上流れることになります。それだけ流すにはどうみても端子や付属の電線が少々ヤワです。短時間使用で壊れない程度の仕様でしょう。

それに,そもそもバッテリーに溜めた電気を熱系のものに使おうというのは使用法が間違っています。電気は何にでも変えられる高級なエネルギーなのですから,電気でなければできない情報通信関係の電源など小電力で高級なものに使うべきです。料理したければ太陽光や燃料で直接やるべきですし,ドライヤーならヒーターを切って冷風で使えば,はるかに電気は食いません。現代人は電気を無駄なことに使いすぎです。

ポータブル電源のヒットは,バッテリーその他関連の知識が要らずお手軽だからでしょう。怪しげなものを組み合わせて失敗することもありません。非常用やレジャー用の小容量の蓄電設備を一からそろえるよりも,ポータブル電源はずっとお勧めです。当方も手持ちのものがなければ買っていたはずです。それと,最新のリチウムイオンバッテリーと,昔ながらの鉛バッテリーでは,重量が格段に違います。50Ahの鉛蓄電池だと,バッテリーだけで20.5kg,それにチャージコントローラ1kg強と同程度のインバーターが加算されます。上で見たJVCケンウッドブランドの同容量のポータブル電源だと6.5kgで,1/3以下です。

ポータブル電源は大変便利なものですが,むろん電気代のコスト計算には全く乗りません。非常用と考えれば保険のようなものですし,レジャー用とすれば趣味嗜好品でしょう。
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