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楽器の取り扱い感覚から思う事 [楽器音響]

弦飛びの傷が目立つ中古楽器があります。

「弦飛び」という事象は,実地経験はありませんので,付いているキズから想像した話になります。恐らく,ブリッジ側で弦の取り付けが悪く,弦を張った時に弦がスリップして勢い良く外れ,その際に弦の端部で表面板を叩いて付けてしまうもののようです。

非常に深いキズを見る事もあり「どうやったらこんなに激しいキズが付くのだろう?」と疑問に感じる事があります。弦が外れる時の初速度はゼロですから,かなり加速した段階で激しく叩くのでしょう。むろん弦は一瞬で外れるわけではなくて,ほどける際にブリッジの巻きつけた数センチメートルの移動があるわけですから,その際に加速された弦の端部が表面板を激しく叩くのでしょう。

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表面板についた弦飛びと思われるキズ。
現在はチップを使っています。
String.jpeg
通常の弦の留め方。軽いキズが見られます。

「モノに対する愛情」とか言いますが,なかなか愛情というものも数量的には測れないモノですし,仮にそれが強くても,それが全てとも思えません。サディスト的嗜好のある人ならば,多少手荒に扱った方が甘やかさず愛のムチ?だと思うのかもしれません。「そんなバカな?」とも思いますが,弦飛びもそうですが,そうとでも考えないと,首をひねる様なこともあります。


ギターに限らずですが,モノの扱いというものはどうも人によりかなり異なるもののようです。当方の娘は色んなモノを良く壊します。例えば娘の車の冷暖房は,夏は最低温度で冬は最高温度になっていますので,「せっかく温度調節機能があるのになぜそんなことするんだ?」,と聞くと,「設定温度なんて信用して待ってられない。」との事です。むろんそれで壊れるものでもありませんが,モノに対する感覚がまるで異なるようです。

技術者が「良かれ」と思って作ったものでも,一部のユーザーには全くの「お節介な無用の長物」になることもあるようです。当方の様な年代の人間から見たら,手動調節の煩わしさから解放されて自動で快適温度にしてくれる機能をなぜ殺すのだろう?と思うわけですが,オートエアコンが付いた車なんて上位車種だったオジサン世代とは,ありがた味がまるで違うという事かもしれません。

クルマの話で最近気になる事は,どうも乱暴な自己本位な運転をする車は,だいたい特定の色の特定の車種に集中するように感じます。むろんデータを取ったわけではなく,思い込みのバイアスがあるかも知れませんが,妻もそうだと言います。車種や色の嗜好とも関連するのかもしれません。今度保険屋さんに聞いてみたいと思います。

宅配便で送った陶器が立て続けに壊れた事があります。コワレモノと断わっても,同じ場所から同じ担当者が運んだ際の事象なのでしょう。

モノの強度への想像力にしても,人に対するやさしさにしても,むろん直接目に見えるものではありません。それは当然抽象概念ですが,それが目に見える形で出てくるのが,ものの壊れ方であったり,事故につながりかねない運転であったりするのかもしれません。


ただし,モノの壊れ方のモードが昔とは異なっています。
家電品にしろ,クルマなどにしろ,本体は大丈夫でも,稼働時間が過ぎているとかでエラー表示が出て動かなくなったりします。それは使い方の丁寧さとは必ずしも関連なさそうです。本質的に主要な仕事をする部分というよりも,センサー類や制御部分の不都合の事も多いような気がします。しかし,全体丸ごと買い換えないといけません。部分修理しても他の部分が連鎖的に故障するからだそうです。

当家の温水器もエラー表示が出て,追い炊き機能アウトで給湯機能もエラー頻出になってもう1か月経ちますが,交換修理の目途が立ちません。なんでも,海外製部品に頼るボイラーの製造が出来ず,モノが無いのだそうです。センサーの故障でエラーを表示してもう使えないと。「買い換え」も効かないと。どうすれば良いのでしょうか?薪で焚く五右衛門風呂の方がずっとロバストです。

モノにはホメオスタシスは無いので,せいぜい正しい使い方をして安定させるくらいの事でしょう。無生物である機器が鍛えられるわけもありません。しかし,機器に組み込まれるAIが進化して,手荒な使い方をする人にはより壊れにくいロバストな動作をさせるとか?より面倒くさい状況になるかも知れません。
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コメント 12

風神

「弦飛び」って言うんですか、フォークギターで似たことをやった事があります。
押しが甘かったのか、ブリッジピンがスポンと抜けた事があります。
目に見えてひどい傷が付いた記憶はありませんが、ナイロン弦もスチール弦のような形状なんでしょうか。そうだとしたら、ブリッジ側で激しく外れると、あの先のボールですからかなりの傷になりそうですね。
by 風神 (2022-02-08 15:40) 

八犬伝

娘さん、短気なのでしょうかね?
なんでも、コンピューター制御の時代になってきているので
モノが壊れやすくなり、しかも修理不能
もしくは、修理代が馬鹿高くつく時代になってしまいましたね。
by 八犬伝 (2022-02-08 20:05) 

枝動

壊れ方で思い出すのが、あるメーカーの社長が「5年位で壊れる設計」にしているとのことです。
アナログ時代は手入れ怠らなければ、10年以上20年近く使える物がありましたが、最近の機器は確かに5年寿命の物が多い気がします。
壊れ方を従業員で検証すると、まずスイッチ類を壊しますね。力任せで扱いが荒いんでしょうね。
でも今じゃ、扱い方以前に基板の当たりハズレでしょうか。
by 枝動 (2022-02-08 21:21) 

gonntan

バイアスと言えば、夕方暗くなっても遅くまでライトをつけないのは
黒っぽい車が多いなと、私は思っています。
by gonntan (2022-02-08 21:22) 

oga.

最近は長持ちしそうかどうかでモノの判断をしているのですが、どうしても許せないのが充電池内蔵で修理に出さないとバッテリー交換ができない機器たちです。何年かで買い替えることを前提にしているとしか思えないです。
デジカメとかは何とか充電池が交換できる余地が残ってますが、これも10年以上経過すると専用電池が製造終了になってしまう。というわけで最近信用できるのはエネループなどの単三電池が使える機器たちになってしまいました。
by oga. (2022-02-08 22:53) 

Enrique

風神さん,
クラシックギターの弦にエンドボールはありません。
クラシックギターの弦は切りっぱなしで,それをブリッジに結びます。(画像を追加しておきました)。弦飛びの傷は,弦の端部が叩くものですが,ナイロン弦は柔らかいので,それでも傷がつくのは,よほど条件が悪かったのだろうと想像されます。もっともナイロン・モノフィラメントは滑るという短所はあります。
by Enrique (2022-02-10 07:11) 

Enrique

八犬伝さん,
娘はどうも感覚が異なる様です。色んな感覚の人が居そうです。
楽器は大きくは変わらないのでありがたいですが,旧来のモノなのに軽々に新技術を取り入れすぎるものや利益主義に陥ったものはダメですね。ただ選択肢があれば良いですが,なくなってしまうと困ります。

by Enrique (2022-02-10 07:18) 

Enrique

枝動さん,
SDG'sだとか環境への配慮を盛んに言う割には,モノの消費サイクルを早くさせたいというのは,本音と建前が異なる一つの例なのでしょう。
仕事上のある装置の不都合で業者を呼んだら,操作するメンブレンスイッチをボールペンで押し破って,即交換前提にしてくれたのを見ました。
現在は,いくら丁寧に扱っても,「基板がダメ」とか言うのが,黄門様の印籠のようになっています。基板自体,不都合は一つか二つの単体部品である事が多いわけですが,基板修理なんて絶対しません。良くて基板交換,機器全体交換と言うのが多いです。大昔の真空管を交換して修理完了という方が,よほど先進的に思えます。
by Enrique (2022-02-10 07:29) 

Enrique

gonntanさん,その通りだと思います。
車種もありますが,ライトだけならまだしもと思います。
by Enrique (2022-02-10 07:31) 

Enrique

oga.さん,
電池の様な消耗部品をメーカーサービスにすると言うのは確かにそう言えますね。その様な思想のメーカー品はなるべく買わない使用しないが良いのでしょうが,選択肢がなくなると困ります。良心的なメーカーが潰れて,そうでないところが生き残ると消費者の利益になりません。消費者は製品の思想をしっかり吟味して,決してブランドイメージなどでは購入しない事が重要と思いますね。
都市伝説でかつてソニータイマーとか言われたものですが,住居用機器には本物のタイマーが内蔵されていて,何の不都合なくてもご丁寧に点検整備を呼びかけてきます。単なる表示だけならまだしも,動作停止してしまうものは困ります。
by Enrique (2022-02-10 07:43) 

風神

Enriqueさん
画像をありがとうございます。初めて知りました。
このブリッジへの留め方でも外れるんですね。信じられません^^;
by 風神 (2022-02-10 15:43) 

Enrique

風神さん,
特に高音弦は滑るので,ブリッジのこちら側で弦の張力をとめておかないとヌルヌル・バシッと外れます。クラギの弦張りは難しいと言われますが,ほんのちょっとしたコツです。
by Enrique (2022-02-11 06:14) 

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