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楽器の扱いに関して [楽器音響]

弦飛びのキズに関する記事を書きましたが,楽器の取り扱いもさることながら,やはり中古楽器の販売で「フレットの残り」という記述を見る事があります。

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その様に書いて販売している人は,ギターを弾いたことがあるのだろうか?と思います。
フレットが車のタイヤの様に摩耗する消耗品だと思っている節があります。

確かに,フレット棒は洋白などの銅合金を使っていて割と柔らかいので,すり減る事はあります。特にクラギは低音側が巻き線ですので,こちらの弦がフレットに強く押さえつけられると,くぼむようです。

アコギのフレット減りの例。[コピーライト]Haze Guitars.
こんなに酷いのをクラシックギターで見たことはありません。 弦での減りよりも,指頭のメカノケミカル摩耗効果でしょう。弦のフレットへの強い押し付け効果もさることながら,ゴシゴシ擦る効果も大きいのでしょう。こんな状態になれば,当然打ち換えが必要です。
部分的にフレットが窪んできた楽器はフレットのすり合わせをして均します。その事を称して「何分山」と言っているのだろうと思いますが,クラシックギターに関してはほぼ信用しません。

普通に弾いていれば,そうそうすり減るものではありませんが,部分的なすり減りはフレットの擦り合わせをしますし,それでもダメな場合はフレットを打ち換える事になります。フレットがすり減って打ち換えが必要なほど弾いている楽器というのも,ものすごいものです。


安い楽器で何分山とか書いているのは,見方を知らないだけだと思います。
本当に部分的にすり減って,すり合わせをして,7分山や8分山になっている楽器なのか?本当にそうした後の「何分山」なのであれば,すり合わせのコストを掛けるだけの楽器なのかどうか。あり得るとしたら,元々フレットに凹凸があったのですり合わせた可能性とか。

当方がついているプロの方は,自分の楽器で摩耗によるフレットの打ち直し経験は無いと言っています。当方の学生時代買った楽器でもそうですし,別のプロがかれこれ10年以上使う愛奏楽器を見せてもらっても,ローポジションの低音側のフレットにほんの僅かのくぼみが確認できる程度です。素人がこれ以上の摩耗を与えるのは余程の弾き方をしているとしか思えません。

実際凹んでいるものを見ることも有りますが,状態から見てプロの何十倍も弾いているとも思えないので,楽器のキズなどもそうですが,世の中にはかなり無茶な弾き方をする人もいるのだなという印象はあります。


あと,笑ってしまうのが,クラシックギターなのに「トラスロッドは触わっていません」とかいうもの。無いものはさわり様も無いのですが。ただし物事には例外がつきもので,デイヴィッド・デイリーというアメリカの楽器は,トラスロッドが入っているそうです。ただし,アコギの様にはネジで調整出来ません。やはり,触りようが無いのです。「触らぬ神に祟りなし」という金言もあります。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

私の河野は、昔はオーガスチン青で力んで弾いていましたが、今ルーペでよく見ると、1フレットが窪んでいるというよりも少しキズが付いているという感じでした。(^^;

by たこやきおやじ (2022-02-10 13:37) 

風神

窪むもんですね。そうなるパーツとは思ってもいませんでした。
未だかつて凹んだフレットを見た事が無いです。

by 風神 (2022-02-10 16:00) 

Enrique

たこやきおやじさん,
力一杯弾いてもそうそう減るものでもないと思います。
この例の様に指頭で擦ったほうが酷いものや指板まで凹んでいるものを見る事もあります。
ただし摩耗には,フレットの堅さもあり,焼き鈍した柔らかいフレットの方が引き心地はしっくりくる感じはあります。古楽器では,メタルではなく巻きガットでしたし。
by Enrique (2022-02-11 06:22) 

Enrique

風神さん,
本来は消耗部品で楽器の寿命よりも短いです。ただしそうそう減るものでもないのですが,激しく弾く人で押さえる強さだけではなく手汗も効いているのではないかと思います。
あと,アコギの人は指頭が固くなっている人がいますが,基本クラギではなりません。
by Enrique (2022-02-11 06:25) 

EAST

Enriqueさん

アコギのフレット減りの例のコメントに「指頭のメカノケミカル効果」と記載されていますが、メカノケミカル効果というのはどのような現象でしょうか。調べてみたのですが、フレットを指で押さえることと、どのような関係があるのかわかりませんでした。
手汗でフレットが減るのでしょうか。


by EAST (2022-02-15 16:55) 

Enrique

EASTさん,
摩擦摩耗には複雑な機構があります。
昔,加工専門の方に超硬工具を見せてもらったときに刃先を触ってしまい叱られたことがあります。硬い金属を加工する硬い硬い刃先は,指先には大変弱いのだそうです。摩耗にはむろん硬さも関係しますが,柔らかい指先でも硬い金属をすり減らしてしまう事があるわけです。
「メカノケミカル」は機械的に化学変化を促進する様な効果ですが,機械的と化学的効果の相乗効果くらいのつもりで書きましたが,「腐食摩耗」という言い方もあり,こちらの方が近いかもしれません。
機械的な機構だけでは,硬い金属を柔らかい指先が削るわけがありません。見てきたわけではありませんが,手汗成分で金属を微少に腐食させながら指紋でごしごしやるイメージでしょうか。
by Enrique (2022-02-16 07:04) 

EAST

Enriqueさん

丁寧なご回答をありがとうございます。

フレットの表面の汚れを拭くことは摩耗面でも意味があるのですね。私は年に2回ぐらい弦を張り替える際に拭く程度ですが。

最近、家の近所で梅が咲き始め、メジロも見かけるようになりました。地域によっては豪雪で大変なようですが、春らしくなってきました。
by EAST (2022-02-18 17:00) 

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