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物事の実感について [雑感]

初めてヒコーキに乗った人が,「地形が地図とおんなじだった!」と言うのを聞いたことがあります。

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率直な感想なのでしょう。
前の職場の時だったと思います。割とちゃんとした方が,しみじみとそういっていたので,よく覚えています。また最近どこかでその様な話を聞いたので,思い出しました。

ある意味非常に印象深い発言ですが,正直なところ全く共感できない感想でした。

「地図と実際の地形とは異なると思っていたのだろうか?」
無論そんなことはなさそうです。人間初体験なことには思いも掛けない印象があるもので,目くじらを立てる必要も無いのでしょうが。

改めて考えてみますと,人間とは如何に「実感」というものを大切にする生き物なのかという印象です。「百聞は一見にしかず」とも言います。ヒコーキに乗ってみるまで実際の地形が分からないという事は100%無いでしょうが,恐らくどこか半信半疑なのです。地図など机上の空論ではないかという疑いがどこかにあるのかもしれません。もっと言えば,学校で教科書で習うようなことは,試験のためであったり入学や入社するための手段であり,真理は別のところにある(あるいはそんなものは無い)のだという意識なのでしょうか?

「理屈は理屈で実感は別」の実感至上主義となったら,非常に困ったことになります。
何でもかんでも体験学習。悪い事も体験してみて実感してみましょう。そんなことできません。良かれとしても,地球の姿を見せるのに,だれもかれも宇宙ステーションに乗せるわけにもいきません。

実際アメリカには地球は平坦だと思っている一部のグループがいるらしいですし,宗教上ダーウィンの進化論を信じない人たちが国民の4割方だそうです。むろん進化論は精密科学の理論とは異なるわけですが,科学より宗教の教えを信じるというのも,論理ではない実感主義のなせる業のような気もします。科学と宗教は別の軸にあるものです。

実感がないと物事の理解は難しいものですが,何でも目に見えるものしか信じないというのも困ったものです。実感では地動説は出てきません。実感が実証された事実と異なれば,当然実感の方を修正しないといけませんが,案外それが難しいようです。目に見えないものを実感する(想像実感?)ことが大事な能力でしょう。世の中は,目に見えないものの方がはるかに大事で,目に見えている現象はその表層だったり本質でなかったりすることも多いですので。
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枝動

こんにちは。
あはは、私も初めて飛行機に乗った時、そう言った口です。
確かに、見たこと経験を頼りにして来たところはありますね。
ただ、習ったことが基礎にあって、経験によって確認しています。
目に見えないものを実感(理解)するには、「色即是空空即是色」を理解することに通ずるでしょうか。
「因と縁により存在するわたし。即ち、色即是空。」と理解しています。
by 枝動 (2022-02-12 14:11) 

gonntan

私が見たから本当lって言って、マジックなんかでよく騙されますよね。ちょっと違いますが、錯覚とか錯視とかもありますし。
by gonntan (2022-02-12 21:07) 

ロートレー

北海道から東京へ飛ぶ旅客機が次第に高度を落として、眼下に房総半島の海岸線が広がる景色を見るといつも感激します。
地図を作った伊能忠敬だってこの景色は見ることができなかった訳ですから^^
by ロートレー (2022-02-12 21:49) 

Enrique

枝動さん,
初体験では色んな感想を持つものだろうと思います。
当方は海の波の輝きや浮かぶ船,雲などの形,などなどの風景に目がいき,地図で見慣れた海岸線には興味が行かなかった記憶があります。そのため「地図とおんなじ!」という感想を初めて聞いた時,少々驚きましたが,それは少なくない感想のようですね。
当方,色即是空〜は,現象も理論も全く一体のものだとの理解です。目に見えていても見せかけのものもあるし,目に見えなくても真理は真理なのだろうと思います。
by Enrique (2022-02-13 09:11) 

Enrique

gonntanさん,
当方が言いたかったところでもあります。
「目に見えるものを信じる。」というと,一見騙されにくい様に見えて,見かけでやられることもあります。
服装で店員の対応が異なる事からも,世間一般,見た目は大事なのでしょう。

by Enrique (2022-02-13 09:17) 

Enrique

ロートレーさん,
人の感動のツボは理よりも情なのでしょうね。それは新技術の利用においても。
技術の進歩で,日本中苦労して計測して歩き回らなくても地形を実感できる様になりました。伊能忠敬は飛行機がなくても彼の頭には完全に実像が見えていたはずですから,飛行機に乗ってみて初めて地形を実感する現代人をどう思うでしょうか。
by Enrique (2022-02-13 09:35) 

風神

あるニュースがきっかけで、目にしたもの聞いたものを鵜呑みにして真とすることをやめました。知らない所で、その裏で真実が有るのではと、物事を見るようにしています。仰るように、案外目に見えないものに真実や本質があるように思います。
by 風神 (2022-02-13 10:48) 

Enrique

風神さん,
見たものに素直に感動するのは決して悪くは無いのですが,それを悪用する輩もいることを忘れてはなりませんね。騙され無いと思っている人が案外やられる様ですから。
by Enrique (2022-02-13 11:29) 

八犬伝

よく、ガイドブックに書かれていることを確かめるだけの旅行をする人がいますが
まあ、それはそれで一つのやり方かもしれませんが
寂しいですよね、それだけでは。
隠れているものや、何気ないものを観察し
心に入っていく
そんな風にしていきたいです。
by 八犬伝 (2022-02-13 12:39) 

U3

 話は少し違いますが、実物を見て考え方が変わったという人もいます。
 立花隆の『宇宙からの帰還』に拠れば、初期の宇宙飛行士は大気圏外に出て、まったく心の内が変わらなかった例は少ないと語っています。少なくとも人生観やモノのの見方が変わったという例だけでなく神を見たというものまで現れています。
 それだけでなく青い地球を見て、地上で国同士がいがみ合って戦争することが馬鹿らしく思えてくるというようなことも当時冷戦状態だった米国とソ連の宇宙飛行士が同じように述懐しているのは興味深いことです。
 頭を使って想像、あるいは無から創造する事は大事ですが、実際にモノを見てそこから感じる事の方が遙かに有益なことのように思えます。
 だから私は、体験しなければ分からないことがとても多いと思っています。
 若い頃(20代前半だったと思う)ある芸術系の本を読んでいて印象に残ったことがあります。
『すべての創造は模倣から始まる』
 それを読んでなるほどねと納得しました。確かに「無」から「有」はおいそれとは作り出せないだろうなと思います。
by U3 (2022-02-13 15:55) 

Enrique

八犬伝さん,
自分の目で確かめるというのは大事な事だろうとは思いますが,仰る様に旅でガイドブックに書かれていることだけを確認してくるという事にもなりがちです。
実際に体験しなければ分からない事というのは無数にありますから,何かは得るのでしょう。
by Enrique (2022-02-14 06:33) 

Enrique

U3さん,
実体験の重要さは論を待ちませんね。人間実際に見てみないと分からないことは無数にあります。頭でわかっていても,ピンと来ていなかったことが納得できると。現場主義,実感主義。仕事の上でも実際に現場をみないと分からない事が無数にあるのに,現場を知らない者が机上で政策を行うと上手くいくはずがない。
しかし,それは間違った頭の使い方で,正しい理論は素朴な現物からきちんとした論理で組み立てられますので,必ず役に立ちます。どんな抽象的な数学でも,数の勘定や面積の計算などの素朴なところからきっちり組み立てられていますから,間違い無く役立っています。しかし,それはもう見えていないのです。
本来の理論はモノに則していますから,「実際にモノを見てから」が重要と言うのは理論の適用と矛盾しません。理論の適用とは,かってな想像とは違います。逆に見てもよく分からず理論でないと歯が立たないこともあります。
明日の天気も理論的予測は困難ですが,何年後の天体の運行でも初等数学で予測できます。前者は実際の観測が重要な例で,後者は理論がうまくいく例です。

実証は必須の事で,それによる実感は後からついてくるものと思います。しかし,曖昧な印象に基づく実感を偏重してしまうと,だまし騙されることもあるということで,それを意図的に悪用する輩も出てくるのだろうと思います。

目に見えるものはほんの一面だけという事もよくあり,実際に見た実感が重要という考え方に対する当方なりのアンチテーゼです。
by Enrique (2022-02-14 07:11) 

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