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電気機械の学習~変圧器~ [科学と技術一般]

電気機械の学習をしています。
今回は変圧器の概要を整理します。変圧器とはいわば静止形誘導機であり,誘導機の前に学習すべき内容ですが,自分の都合ですっ飛ばしました。

EnriqueAutographSmall.png
変圧器の基本は,磁束を共有した一次巻き線と二次巻き線が巻かれた磁気回路からなる電気機器です。動かずに電圧やインピーダンスの変換をしますので「静止器」の代表的なものです。「縁の下の力持ち」のような重要な役目を果たします。これが無ければ長年続く交流送電そのものがあり得なかったはずです。変圧器を語ると,定性的には「電圧を変換する機器」でだいたい片付いてしまうので,やはり重要なのはその具体的な定量的取り扱いです。まず基本的な例題です。

例題: 図示の単相単巻変圧器。定格一次電圧が3000V ,定格二次電圧3300V。この変圧器の二次側に負荷を接続して一次電圧\(V_1=3000\text{ V}\) ,一次電流\(I_1=100\text{ A}\) 。励磁電流及び巻線のインピーダンス降下は無視する。ようは理想変圧器で考えるという事です。
変圧器.png
単相単巻変圧器
(1) 巻数比
巻数比\(a\)は,変圧比に等しいので,
\[ a=\frac{V_1}{V_2}= \frac{3000}{3300} \fallingdotseq 0.9091\] これは易しい問題ですが,一次と二次を逆に記憶しているとアウトです。弱電的な発想では出力/入力で2次/1次としたくなりますが,変圧器では1次/2次とします。電力用変圧器では二次電圧を下げる事が多いからだと思われます。例えば電圧を1000Vから100Vに落とすのが巻き線比\(a=10\)という事です。

(2) 分路巻線の巻数 \(w_c\) が500回であるとき,直列巻線の巻数\(w_s\)
これは一次二次の巻き線が共通になっている単巻変圧器であることに注意して,
\[ a=\frac{w_c}{w_c+w_s} =\frac{10}{11}\] より,
\[ w_s=\frac{w_c(1-a)}{a}= \frac{500}{10} = 50回\] (3)直列巻線を流れる電流\(I_2\) 及び分路巻線を流れる電流\(I_c\) \[ \dot{I_1}= \dot{I_c} + \dot{I_2} = 100\text{ A}\] より,
\[ \dot{I_2}= a \dot{I_1} = \frac{10}{11}\times{100} \fallingdotseq 90.91\text{ A}\] \[ \dot{I_c}= \dot{I_1} - \dot{I_2} \fallingdotseq 9.09\text{ A}\] (4) 自己容量\(S_s\)
あまりピンとこない語句ですが,これは,単巻変圧器独特の量で,負荷容量\(S = V_1I_1 =V_2I_2\)よりもずっと小さい,
\[ S_s = V_1I_c = 3000 \times 9.09 = 27270\text{ VA}\] で,27.3kVAとなります。

(5) 巻数分比\(K\)(負荷容量Sに対する自己容量\(S_s\)の比)
指示通り求めると,
\[ K = \frac{V_1I_c}{V_1I_1} = \frac{I_c}{I_1} \fallingdotseq \frac{9.09}{100}\ = 0.0909\] 以上,変圧器の初歩の問題ですが,基本を整理しておくことは重要でしょう。ただし自己容量\(S_s\)というのは知識として知っておく必要があります。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

巻数比は勘違いしそうですね。私も、オーディオ用に少し本を見て確認しておこうと思いました。(^^;

by たこやきおやじ (2021-11-08 11:17) 

Enrique

たこやきおやじさん,
電圧を上げるのは発電所直後の送電側で,世の中の大多数の変圧器は電圧を下げる方なのでそうなっているものと思われます(真空管の電源回路は上げますが)。今回学習始めるまでは逆に思っていました。
by Enrique (2021-11-08 12:25) 

U3

今では代数式が殆ど理解できない私です。

久々に記事更新しました。あと一回で完結となります。
今回もかなり真実を明らかにしていますが、次回には真相がほぼ明らかになるでしょう。
ほぼ一味確定しました。
乞う御期待!
by U3 (2021-11-09 15:08) 

Enrique

数理系の方は算術計算が却って苦手の様です。
しかし世の中には理でなくおかしな情に流される方たちもいて,汚い手を使って多数派工作?までやると,困ったものです。余程悲しい出来事だと思いますが,そもそも悲しいだの嬉しいだの,そんな主観では議論にすらならないですね。 


by Enrique (2021-11-09 20:37) 

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