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送配電に関して~接地に関して・その1~ [科学と技術一般]

順不同で知らない用語を手掛かりに,その分野の学習をします。


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接地は,当方が現在学習しているいわゆる強電においても,通信などの弱電においても非常に基本的なものですが,整理がついていないところもあるので,その機能や方法をまとめます。

接地そのものの考え方はシンプルで,接地する部分を大地に接続して基準のゼロVにするものです。しかしながらその目的や方法は様々です。大きな地絡電流が流れるような場合は,接地抵抗の大きさ(小ささ)も重要です。かつての電気法規上の接地の種類は第1種2種3種でそれぞれで単純に接地抵抗が決められていて覚えやすかったのですが,現在の法規では,A,B,C,D種接地と分類され,それぞれに但し書きがあって少し面倒です。

ここでは,過去問に現れた変電所の接地設計を中心に,以下の語句などに注意しながら学習します。
・中性点接地 中点接地
・変電所の接地設計
・地絡電流
・非接地方式

まずは,非接地方式での地絡電流の発生とその求め方を理解する必要があります。
これには鳳・テブナンの定理を使うのが便利です。むろんオームの法則からでも導けるのですが,試験は勿論,実務で地絡電流を算出するにしても,これを使ってパッとやらないといけません。

地絡電流の発生原因は,図1(a)に示す線路の対地容量Csです。等価的にCsを介して大地に接続された回路と考えられます。まず単相回路です。

図1 単相回路の1線が地絡した際の回路図(a)。(b)は同回路で地絡電流が流れる様子。(c)は鳳・テブナンを適用した様子で,結局等価回路は右下の様になる。(公)電気技術者協会さんのページから引用させていただきました。
鳳・テブナンの定理の骨子は,電圧源を短絡除去した等価インピーダンスと開放電圧を新たな等価電源とすることです。上図で等価電源は電流の向きを考慮して-V/2となっています。
これから求められる地絡電流I0は,Cs2個の等価並列インピーダンス1/2ωCsに電圧V/2を印加するわけですから,オームの法則で,

I0 = (V/2) / (1/2ωCs)=ωCs V

となります。
次は三相3線式の場合です。
回路は,図2(a)の様になります。電源が星形ですから,線間電圧Vに対して相電圧は V/√3です。

図2 三相3線回路の1線が地絡した際の回路図(a)。(b)は鳳・テブナンを適用した様子。(c),(d)は鳳・テブナンを適用しないで求めるもの。(公)電気技術者協会のページより。
鳳・テブナンの定理の適用は,単相回路でやった様に電圧源を短絡除去した等価インピーダンスと開放電圧を新たな等価電源とすることですが,三相3線回路の一線地絡では,上図(b)に見る様に,等価インピーダンスは3ωCs,等価開放電圧はV/√3なので,地絡電流は,

I0 = (V/√3) / (1/3ωCs)=√3ωCs V

と計算できます。鳳・テブナンを使わないで(c),(d)の様にやって2相分の電流のベクトル和でも求まるわけですが,試験中にこれをやっていたらアウトです。この辺の基本事項は結果を記憶するくらいでも良いでしょう。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

強電では地絡電流と言うのですか。知りませんでした。(^^;
オーディオでは、一般にシャーシーアースの電位が大地のアース電位より高いので浮遊容量を介して信号電流が漏れる現象があります。しかし、この辺の事が詳しく書かれた本をほとんど見たことがありません。もし何かご存じであればご紹介下さい。何時もお世話になりっぱなしで恐縮ですが。(^^;


by たこやきおやじ (2021-09-28 10:42) 

Enrique

たこやきおやじさん,

接地には安全対策の保安用接地と,電子機器類の性能を維持する機能用接地があります。いずれも接地は重要なことなので法的にも色々決められているようですが,当然両者が原理や現象として変わるものでもありません。

筐体のフローティングが問題なのであれば,なるべく低接地抵抗のアースをとることでしょう。

強電では感電防止や故障落雷時などに機器の損傷を防ぐためのものです。
以前,町内の電柱の接地工事のあいさつに来た業者に接地の種類を聞いてみたのですが,答えられず訳の分からないことを言っていました。

弱電では,小信号を扱うための基準点の設定でしょう。それによりノイズマージンが変わります。オーディオ信号域でも大変ですが,高周波ではもっと大変でしょう。以前電源プラグの極性を変えると音が変わると言っているマニアがいましたが,音はたしかに変わるのでしょうが,ちゃんと接地すれば良いのだと思います。

むろん電子機器類の接地に関しても,なかなか一筋縄ではいかないところがありますが,むかし伊藤健一さんの書いた「アース・シリーズ(アースと雑音,アースと静電気,アースとパルスなど)」が最も実用的で実際面に適応したものだと思います。

接地に関する法令も昔と変わっています。コロナ禍と一緒で,雷などの自然現象は保安用接地と機能用接地の区別などしてくれません。「等電位ボンディング」なる技術もありますが,これについて触れるかどうかは分かりません。アースをどう統一的に扱うかが課題だと思います。

by Enrique (2021-09-28 11:38) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

有難うございます。
伊藤健一著のアース・シリーズは全巻持っております。この本は大変参考にしております。やはりこの本くらいしかないのでしょうか。

by たこやきおやじ (2021-09-28 11:54) 

Enrique

たこやきおやじさん,そうですね座右の書でしょうか。
エレクトロニクス分野ではアース技術は厄介なもののひとつで,あまり学術的な本が無いのですね。

接地というのも,単に一点を地面に繋ぐというだけならばそれで終わってしまいますが,何分電磁気現象ですから,電気回路的な話(とは言っても浮遊容量は静電気的な話)に,電磁気的な話,場合によっては高周波の電磁波工学的な話が入って来ます。それらがごっちゃになったり,混同されたりします。
例えば電気工事屋さんはアンテナ線や電話線のつなぎ方を知りません。電力の配線とは考え方が違いますので。現在光ファイバーが流行るのは,電磁的な雑音問題が無いからでしょう。
例えば,シールド一つとっても,静電シールドなのか電磁シールドなのか磁気シールドなのかによってもアースの扱いが全く変わりますね。

なお,この記事は,まず非接地方式での地絡電流の大きさを求めたものでした。三相回路を追加しました。
by Enrique (2021-09-28 13:43) 

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