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送配電に関して~コロナ対策~ [科学と技術一般]

順不同で知らない用語を手掛かりに,その分野の学習をします。


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「コロナ損」は昔習った記憶がありますが忘れているので復習です。

ここ1年半以上,コロナという語を聞かない日はありませんが,コロナ禍が発生するまでは,コロナという語を聞く日はほとんどなかったと思います。商標などに使われていた語で,一般用語としてはほとんど使われませんでした。新潟のヒーターやエアコンの会社コロナ,出版社のコロナ社,メキシコのコロナ・ビール,それから昔トヨタ・コロナという中型車がありましたが,カローラの上位車種でしたし,コロナMark IIはけっこう高級車でした。

ここでいうコロナとは,元祖?コロナ。ここでいうのはコロナ放電です。おそらく元祖は太陽のコロナからでしょう。太陽上空に広大に広がる超高温のガス状の物質の事ですが,冠状に見えることからコロナ(冠)という名前がついています。ちなみに冠状のものがあるタイプのウイルスをコロナウイルスと呼んでいるわけです。

ここは電力技術の学習ですので,送電線に昔から発生するコロナについてです。
送電は電圧を上げれば上げるほど有利になります。送電電力が電圧の2乗で増加し,送電ロスは2乗で減りますので良いことづくめです。ただし,絶縁とこのコロナ損の増大が問題になります。

コロナ放電は,送電電圧が上がることによって電線表面で発生してくる物理現象です。
理想化した電線表面は等電位ですので,いくら電圧を上げてもコロナ放電は起こりえません。しかしながら,送電線はピカピカの単銅線ではなく撚線ですので,電線表面に電位のムラを発生します。送電電圧が高く,電位の傾き(すなわち電界強度)が3kV/mmを越えると,部分的に空気の絶縁破壊が起こり部分放電を起こしている状態を言います。放電電流は小さいものの,空気を電離したり音や光や熱を発生しますので当然電力損失を伴います。晴天時にはいずれも問題になることは少ないですが,特に雨天時に問題になるケースが多いようです。これをコロナ損と呼びます。また,図1に示すように送電電圧がコロナ臨界電圧を越えた部分でのみ発生するため,これによる電流は第3次などの奇数次高調波電流となり,中性点接地がされている場合は零相電流を発生して通信線への誘導障害,中性点接地がなされてなければ電圧波形をひずませるなどいずれも悪影響を及ぼします。

コロナ電流手書き.png
図1 コロナ放電による高調波電流発生の様子*
送電電圧波形eが正負でコロナ臨界電圧を越えた部分でのみコロナ放電が発生するので,それによる高調波電流ic(ピンク色)が発生。これは赤で示す第3次高調波などの奇数次の高調波電流にほかなりません。
また,これによるいわゆるコロナ雑音を発生するため,放送受信への影響を考慮する必要があります。また雨天時にはコロナ放電で電離した水が同極性の電線を蹴って飛び出すことによって送電線を揺らす「コロナ振動」を発生させることがあります。

原理的には電位ムラを減らすには太い単導体を用いれば良いわけですが,様々な理由により**多導体方式***を取ることが良く行われます。またコロナ振動を起こしやすい1~3Hzの固有振動数を避けるなどの振動対策も必要です。
後注
*とある書籍から引用(著作権問題があるので手書き)しましたが,コロナ電流が「発生する」様な図ですが,コロナ損は抵抗になるわけですから,放電タイミングでむしろ送電電流が若干減ることになり送電電流がわずかに矩形波状になるのでは無いかと考えられます。奇数次高調波電流が発生する事実とは矛盾しませんが。
**電線の製造と敷設の問題だと思われます。
***多導体方式は,コロナ損の低減だけでなく,線路のインダクタンスを低下させ送電容量の増大も図れるとの事です。

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Ujiki.oO --> コロナ禍 + クレジットカード + ASUS ゲーミングデスクトップ ¥220,000円

素晴らしいコンテンツに感謝です! この記事でも Enrique さんの脳内の世界は素晴らしい奥行きを感じます。例え数年後の加齢で指が動かなくなっても、脳の空間は狭くならない・・・・
 ところで数日前だったか、詳細が定かではないのですけど、日本政府が「宇宙発電」に取り組むとか・・・・ どうやって地上の電力網に供給するのか、何度考えても理屈が判りません。林立するビル群の陰となる一階のロビーを明るくするのに、鏡の組み合わせで太陽光を天井で光らせるのと同じで、太陽の光を収束し地上に中継するのでしょうか? 人や動物がバタバタと死にそうです。 何か電波を地上に送るのでしょうか? やっぱり人や動物がバタバタと死にそうです。 まさか、有線で送る? 宇宙エレベーターを唱えていた方々は、雷の怖さを考えたのでしょうか?! どうやら「戦争に利用する」破壊や殺人目的の「宇宙発電」なら理解できます。

 先祖の守護霊の加護とでも言うのでしょうか、ゲーム特化型最新鋭機を今年の1月から4台発注し、4台とも返品しました。縁が無いと簡単な買い物でさえ成就しないと言う摩訶不思議の体験中です。 古い古い中古PCから抜け出せないでいます。 Enrique さんのPCは凄いのでしょうね。脱線ばかりして済みませんっ!!
by Ujiki.oO --> コロナ禍 + クレジットカード + ASUS ゲーミングデスクトップ ¥220,000円 (2021-09-26 10:29) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

「コロナ」という言葉は今回の「コロナウイルス」によって一般的に大変悪いイメージになってしまいました。太陽のコロナやコロナ放電など幻想的な自然現象の名前だったのが、あっという間に悪者の代名詞になってしまいました。「コロナ」が可哀想です(^^;

by たこやきおやじ (2021-09-26 10:42) 

Enrique

Ajiki.oOさん,
宇宙空間で発電するアイデアは昔からありまして,送電はマイクロ波です。直進性と減衰の少なさのバランスが良いからでしょう。
ビームの太さはむろん送電電力によりますが,危険な事は確かでしょう。例えばレーザーで目印を付けたり飛行機などの航路にはかからないなどの安全対策はしないといけないでしょう。鳥は確実に焼き鳥になります。
有線の送電線でも数十万Vの高圧を裸線で送っていますから危険は危険ですね。送電電圧により安全離隔距離(500kVで11mとか)なるものが定められています。
私のパソコンはMac3台と12年くらい経ったPCです。当方パソコンには凝りません。
by Enrique (2021-09-26 20:05) 

Enrique

たこやきおやじさん,
自然現象としてのコロナは中々壮大なもので,太陽コロナをはじめ「セントエルモの火」もコロナ放電現象だと言われています。
ただ送電に関しては厄介なものであるのは書いた通りです。
by Enrique (2021-09-26 20:08) 

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