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送配電に関して~配電方式など~ [科学と技術一般]

順不同で知らない用語を手掛かりに,その分野の学習をします。


当方の場合,電力関係の知識は圧倒的に少ないので,知らないキーワードからその関連技術を掘り下げる作戦です。ただし,どんどん深みにハマると分野の横断学習ができなくなるので適当なところで切り上げます。

さて,電力関連で「キュービクル」という言葉をよく聞きますが,何のことやら知りませんでした。
スイッチやブレーカーなどの配電盤に変圧器や変流器,場合によっては電力用コンデンサや直列インダクタなどが収まった鋼製の箱です(図1)。四角のcubicと関連すれば覚えられそうです。昔教わった記憶がありませんが,知らなかっただけでしょう。

図1 ビル屋上などに配置されたキュービクルの例
元々キュービクルの英語の意味は,小さく仕切られた小部屋の事を言うようですが,業界では配電盤を箱入りの閉鎖型にしたものを言うようです。これがあるか無いかで,高圧以上の受電をしているかどうかが分かります。これがあれば高圧(交流では600V〜7kV,それを超えるものは特別高圧)で受電しています。高圧や特別高圧で受電すれば,そのような自家用設備が必要になりますが,電力の単価が安い上に力率改善などすれば基本料金が割引かれます。特別高圧で受電している大工場などでは電力単価が非常に安くなっています。本来なら電力供給事業者側が負担すべき変電所をまるまる取り込んでいるようなものですから当然でしょう。電力契約の仕方が一般民家などの低圧受電の契約とは異なり実量制,協議制などのためです。

関連してスポットネットワーク方式というものがあります。配電方法の一種らしいですが,その説明は以下のようなものです。

スポットネットワーク受電設備は図2に示すように,常時2~4回線の22kVまたは33kVの特別高圧配電線から受電し,各回線の変圧器二次側を連系した方式で,配電線1回線が停止しても何の支障もなく受電できる方式である。
図2 スポットネットワーク方式の接続図。
いきなりこの説明をされても全然分かりません。おそらく理由は従来の受電方式からして分かっていないからです。まずここから学習しないといけません。ネットで情報を探してもやはり基本事項は分かったとする上での説明が多いようなので,テキスト(電気学会編「送配電工学(1980)」)をあたります。

◆◆◆

配電のイロハからです。図3に示すように,送電線で送られてきた高圧の電力は配電変電所で配電用の電圧6600Vに降圧されて,各需要家に配電されます。その仕方には架空配電と近年増えてきた地中配電があります。

配電図3.png
図3 電力系統を構成する配電設備の概要図。
配電変電所以降の架空配電系統の概要は図4に示すようなもので,常時閉にされる区分用および幹線用開閉器と常時開にされる連絡用開閉器を介して他系統と接続されます。個別の具体的な配電方式には,図5の(a), (b)に示す樹枝状配電方式とループ配電方式があります。(a)は架空幹線から分岐線を樹枝状に伸ばしていくもので,負荷に応じて幹線および分岐線を伸ばして行くものです。適宜配電変圧器を設置していきます。(b)は配電変電所からの線路形状がループ状になっているものです。下流の結合開閉器は,常時開いて故障発生時のみ投入して電力を逆送する常時開路方式と常時閉じておく常時閉路方式があるとのことです。

配電図4.png
図4 架空高圧配電系統
配電図5.png
図5 6.6kV架空配電方式
地中配電の系統例は示しませんが,架空配電と特に異なるのは,柱上変圧器などを用いる事ができないため,地上に変圧器や開閉器類を収めた「高圧キャビネット(図6)」を設置します。

図6 配電用の高圧キャビネットの例(「(株)マンホール商会」さんのページより)。街角などの美観に配慮して,こげ茶などの目立たない色にペイントされている事もあります。


さて,ようやくスポットネットワーク方式に関わる部分に立ち入ります。
近年配電には従来の6600Vよりも高圧の20kV級(22kVや33kVも含む)の配電系統が採用されます。ここでよく使われるのがスポットネットワーク方式のようです。

まず従来からある配電方式は樹枝状方式です。需要に応じ樹枝状に幹線・分岐線が作られます。工事費が安く最も多く使われている方式ですが,事故時には事故点の先が全て停電するため信頼性が低い方式と言えます。

樹枝状方式を改善したものが,図7(a)に示す低圧バンキング方式です。複数台の変圧器の2次側低圧配電線をバンキングブレーカもしくは区分ヒューズを介して接続して,変圧器相互の負荷の融通を図ることで電圧変動や電力損失を低減させる事ができるとのことです。

さらに進化したのが,同図(b)のスポットネットワーク方式です。
2〜4回線分の配電線から断路器・ネットワーク変圧器・ネットワークプロテクタ(ヒューズと遮断器)を介して2次側で接続して高信頼のネットワーク母線を得る方式です(最初見たとき三相配線と区別がつかずちんぷんかんぷんでしたが,三相1回線分を1本で表す単線図で書かれているので,この例の場合は3回線分の低圧二次側をネットワーク化しているという事がようやく理解できました。)この方式のメリットは,回線の1本に故障があっても,負荷への給電は継続できる事が大きく,また高圧の遮断器が必要ないなどの経済的メリットもあります。都心の高層ビルや大工場などの極めて集中化した大容量負荷群に用いられるとの事です。

ネットワーク方式には同図(c)で示すレギュラーネットワーク方式があります。やはりどの回線に事故があっても無停電で配電できる方式の様です(おそらく上述のスポットネットワーク方式はレギュラー方式に比べてフィーダからの取り込みが集中しているためスポットと言う様です)。
配電図7.png
図7 各種配電方式

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YUTAじい

おはようございます。
ご心配ありがとうございます。
by YUTAじい (2021-09-24 05:51) 

Enrique

YUTAじい様,
痛々しいのにniceだけするのも気がひけましたので,一言添えさせていただきました。
by Enrique (2021-09-24 17:47) 

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