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逆算すると言うこと [演奏技術]

リバースエンジニアリングのようなもの?かもしれませんが,
そう後ろめたいもの?でもありません。

押さえにくい運指を,その前の運指で準備をしておく事です。ご自分で運指付けする方ならば,常識事項でしょう。突然複雑な押さえ,特に自然でない手の形で押さえる事は常人では出来ません。

そのためには,その前段階で予め次の押さえに移行しやすい手の形にしておきます。この辺がクラシックギター独奏曲で初見がききにくいひとつの理由でしょう。むろん同じ様な技術パターンを過去に経験していれば対応可能でしょうが,それを初めて見る譜面でパッと判断するのはなかなか大変です。

譜例1に著名な例を示します。
有名なアランフェスの第2楽章の和音の伴奏です。前半Bmから,後半のG和音になったところです。

Aranj2.jpeg
譜例1.「アランフェス」第2楽章の有名箇所後半の伴奏部
この楽譜は,Angel Romero編ですが,1,2拍目のG和音から,3拍目の同音がかぶる複雑な和音の押さえに遷移しますが,この運指では音が少し途切れてしまいます。むろん難曲アランフェスを弾きこなす訓練のできた人からしたら大したところではなく,さしたる問題は無いとしたのでしょう。しかし,ちょっとした工夫でこれは回避できます。1拍目からGコードの押さえの3,4を逆転させておけば,一番動きにくい4指を動かさずに何なく通過できます。

分かりやすい例を挙げましたが,やはり4の指が最も不器用ですから,4指に楽をさせる事を中心に運指を組み立てる必要があります。やはり分かりやすい例を引けば,「禁じられた遊び(愛のロマンス)」冒頭のメロディは4の指で始めるのが良いですが,4指のみに意識が行っていると,2小節目で2指に移行する時にぎくしゃくします(譜例2冒頭)。冒頭の4指では3指や2指で4指をサポートする様な意識を持っていますと,弱い4指も助かりますし,その後の2指へ音の遷移もスムーズに行きます。初級レベルですと,「ここは1音さえ押さえれば良いのだ」と安心しがちですが,むしろ技術的にラクな時に次の遷移を準備しておくのが,こなれた演奏のコツだと思います。

譜例2.愛のロマンス(禁じられた遊び)前半部分(ルビーラ版)


むろん,急激な変化にも対応できる様に基礎練習を積む事は重要です。基礎練習で得た技術をなるべく余裕もって使える様にするのが,このような逆算技術です。その様な両面作戦はご自分で運指振りをする方はもちろんのこと,振られた運指を使って演奏する方にも,ギター演奏には重要な技術だと思います。

当方かつて独学時代には,その様な事はつゆ考えず,ひたすら技術練習さえ積めば手は動くのだと思って,しかめっ面で練習していました。しかも技術練習ならばまだしも,実際の曲でそれをやっていたら,マトモに弾けるわけがなかったのでした。
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コメント 2

Cecilia

>クラシックギター独奏曲で初見がききにくい

最近ギターを触っていないし初見がききにくいような独奏曲を弾いた経験も少ないですが、そうだったのですね。

>基礎練習で得た技術をなるべく余裕もって使える様にするのが,このような逆算技術です。

最近ヴァイオリンの音階練習を指導された通り丁寧に取り組んでいる(つもり)のですが、おかげで今まで難しいと思っていた曲の演奏に少しゆとりができたような気がします。
by Cecilia (2021-03-05 17:59) 

Enrique

Ceciliaさん,やはり楽器は音階演習が基本なんだろうと思います。
むろんギターでもそうなのですが,なまじ和音が出るので楽しいアルペジオばかりやってしまうキライがあります。楽しく無い練習を真面目にやる方が楽しく演奏できると言う逆説ですね。
by Enrique (2021-03-06 06:41) 

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