ファリャのギター曲「讃歌 ドビュッシーの墓」 [曲目]
近代スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャには,ギター曲が一曲のみあります。
彼の先輩格にあたる作曲家にアルベニスやグラナドスがいますが,彼らはギターのオリジナル曲を一曲も残しませんでした*。
ファリャの唯一のギター曲は,「讃歌 ドビュッシーの墓」です(譜例1)。
この曲に初めて触れたのは,独学でギターを開始して間もない1975年ごろだったと思います。全音のピースを買って弾いてみたのですが,何とか弾けそうな感じもするのですが,つかみどころがなく,最後までまともに弾けるに至らず,苦手意識のみが残りました。さすがに半世紀近く経ってその意識も薄れたか弾いてみる事にしました。
古い全音の楽譜の裏には小船幸次郎の解説があり,それによれば,この曲は,パリの音楽誌ムージカル・レビュー(La Revue musicaleの事だと思われる)が1922年に1918年亡くなったドビュッシーの特集号を出した際,彼と関係があったストラヴィンスキー,ラヴェル,シュミット,ファリャの4人にドビュッシーを記念する作品を依頼されて作った曲との事です。
さらに「特定のリズムを指定していないが,タンゴの様なリズム」とありますが,これは紛れもなくハバネラのリズムでしょう。この曲の終わりでファリャはドビュッシーのピアノ組曲「版画」の第2曲「グラナダの夕べ」の中の印象的なモチーフを引用しています(譜例2)が,この曲は冒頭でMouvement de Habaneraと明記しています(譜例3)。いわばこの曲のオマージュなわけですから,ファリャの曲もハバネラと断定して問題ないでしょう。
ドビュッシーはギターを評して「表情のあるクラブサン」と言ったらしいですから,少なからずギターには興味を持っていた様です。残念ながらギターの曲は残しませんでしたが,親交があったファリャがドビュッシー風なギター曲を書いたわけですから,ニアミス曲と言えるでしょう。
小船は「ファリャとしてはそれほど打ち込んだ作品ではなかったかも知れないが,ギターとしては唯一のオリジナル曲であり貴重である。」と,微妙な書き方をしていますが,むしろファリャはこれをけっこう一生懸命書いて,かつ結構気に入っていたのではないか?とも思われます。ギターで書いた音そのままにピアノ版に編曲していますし,管弦楽版まであるそうです。
ファリャのドビュッシーへのオマージュ作品追悼曲を作曲するにあたって,ドビュッシーのピアノ曲から感じ取れるギター的なものを感じ取って,ギター曲にしてくれたようです。直接引用した部分こそ譜例2の4小節のみですが,あちこちの三連符や五連符のアルペジオなどもドビュッシーのピアノ曲を参考にしていると思われます。ドビュッシーのピアノ曲そのものの中にも,例えば同音連打などはフラメンコギターのカンパネラ的なアルペジオを模したのではないかとも思われるものもあります(例えば「版画」の中の「雨の庭」譜例4)。
*ギターで良く弾かれる彼らの曲はすべてピアノ曲からの編曲です。
彼の先輩格にあたる作曲家にアルベニスやグラナドスがいますが,彼らはギターのオリジナル曲を一曲も残しませんでした*。
ファリャの唯一のギター曲は,「讃歌 ドビュッシーの墓」です(譜例1)。
この曲に初めて触れたのは,独学でギターを開始して間もない1975年ごろだったと思います。全音のピースを買って弾いてみたのですが,何とか弾けそうな感じもするのですが,つかみどころがなく,最後までまともに弾けるに至らず,苦手意識のみが残りました。さすがに半世紀近く経ってその意識も薄れたか弾いてみる事にしました。
譜例1.ファリャのギター曲「讃歌 ドビュッシーの墓」冒頭。 (ピアノ版を参考にギター譜に還元したもの。) |
古い全音の楽譜の裏には小船幸次郎の解説があり,それによれば,この曲は,パリの音楽誌ムージカル・レビュー(La Revue musicaleの事だと思われる)が1922年に1918年亡くなったドビュッシーの特集号を出した際,彼と関係があったストラヴィンスキー,ラヴェル,シュミット,ファリャの4人にドビュッシーを記念する作品を依頼されて作った曲との事です。
さらに「特定のリズムを指定していないが,タンゴの様なリズム」とありますが,これは紛れもなくハバネラのリズムでしょう。この曲の終わりでファリャはドビュッシーのピアノ組曲「版画」の第2曲「グラナダの夕べ」の中の印象的なモチーフを引用しています(譜例2)が,この曲は冒頭でMouvement de Habaneraと明記しています(譜例3)。いわばこの曲のオマージュなわけですから,ファリャの曲もハバネラと断定して問題ないでしょう。
譜例2.ファリャのギター曲「讃歌 ドビュッシーの墓」の「グラナダの夕べ」の引用部分(63小節目から66小節目まで)。 |
譜例3.ドビュッシーのピアノ組曲「版画」から「グラナダの夕べ」冒頭。 |
ドビュッシーはギターを評して「表情のあるクラブサン」と言ったらしいですから,少なからずギターには興味を持っていた様です。残念ながらギターの曲は残しませんでしたが,親交があったファリャがドビュッシー風なギター曲を書いたわけですから,ニアミス曲と言えるでしょう。
小船は「ファリャとしてはそれほど打ち込んだ作品ではなかったかも知れないが,ギターとしては唯一のオリジナル曲であり貴重である。」と,微妙な書き方をしていますが,むしろファリャはこれをけっこう一生懸命書いて,かつ結構気に入っていたのではないか?とも思われます。ギターで書いた音そのままにピアノ版に編曲していますし,管弦楽版まであるそうです。
ファリャのドビュッシーへのオマージュ作品追悼曲を作曲するにあたって,ドビュッシーのピアノ曲から感じ取れるギター的なものを感じ取って,ギター曲にしてくれたようです。直接引用した部分こそ譜例2の4小節のみですが,あちこちの三連符や五連符のアルペジオなどもドビュッシーのピアノ曲を参考にしていると思われます。ドビュッシーのピアノ曲そのものの中にも,例えば同音連打などはフラメンコギターのカンパネラ的なアルペジオを模したのではないかとも思われるものもあります(例えば「版画」の中の「雨の庭」譜例4)。
譜例4.ドビュッシーのピアノ組曲「版画」から「雨の庭」の一部。 |
*ギターで良く弾かれる彼らの曲はすべてピアノ曲からの編曲です。
ドビュッシーは大好きな作曲家です。
「ドビュッシーの墓」「グラナダの夕べ」じっくり聴き比べてみたいです。
by Cecilia (2021-02-16 19:42)
Ceciliaさん,
「ドビュッシーの墓」は,技術は難しくは無いのですが,表現がむずかしいですね。あと両曲に共通するハバネラのリズムを感じとるのが重要かと思います。
by Enrique (2021-02-16 20:35)