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ラジカセ復権? [電気音響]

最近ラジカセを買ったという話をぽつぽつ聞きます。

当方の場合は,メルカリで売ってしまったのですが,そもそもメルカリで中古家電品がそこそこのお値段で売れるという事じたい静かなブームなのでしょう。

「ラジカセ」とは何かというと,「ラジオ・カセット」,略してラジカセです。
Wiki日本版には色々書かれていますが,いまいちピンと来ません。当方の感覚では1970年前後に出て来て三洋電機が出したもので人気に火がつき,これで同社の業績がいっぺんに良くなったくらいのメガヒット商品だったのでした。各社こぞって出しましたので,元祖もよく分からなくなっていますが,1966年発売のフィリップス社のものが先駆けだったそうです。

この辺の歴史は,Wikiの英語版に記述されています(英語で「ラジカセ」は"Boombox"という様です)。

元祖フィリップス社のラジオレコーダ
実に素晴らしいアイデアだったと思います。それまでは,ラジオとカセットレコーダーは別ものでした。ラジオを聴くのと,カセットに録音したり聴いたりするのを同時にやるわけはないですから,1台で良いわけです。しかもアンプやスピーカー部分は共用できて放送からのエアチェックもワンタッチですから合理的です。2つのものを一緒にして便利にするというのが,全てのモノにおいて「ラジカセ的発想」ともいわれたものです。

当時高校生から大学生くらいの少年少女(小中学生も?)には必需品でした。スマホはおろかケータイのケの字もない時代でした。これで深夜放送を聞いたり音楽カセットを聞くだけで無く,英語の勉強もできます(!?)から,親としても買い与えない理由はありません。当初は相当に高価でしたが,普及するにつれご多分にもれず,気軽に入手できるようになりました。

オーディオマニアに言わせれば,「音楽をラジカセで聴く」などとは音楽を冒涜する行為?だったのかも知れませんが,中立的に(独断で)言えば,最高のオーディオ製品だったのではないかと思います。少なくとも,ユーザーオリエンテッドでユーザーフレンドリーです。何と言っても1台で完結する便利さです。

その後の一つの流れでウォークマンが出てきて,ヘッドホンで聴く音楽スタイルが定着した事でしょうか。その後新しいメディアの出現を,ウォークマンが取り込んでいきます。当初カセットの再生のみだったのが,録音も出来るタイプに,CDが出るとCDウォークマン,MDが出るとMDウォークマン。それに録音も出来るものなど,それに高級フォーマットのDATもありましたっけ。

画期的だったのがiPodです。これで一世を風靡したウォークマンを一気に時代遅れにしてしまいました。カセットやCD,MDと言った面倒な媒体がいらないというのは画期的でした。しかし,この辺から技術が見えにくくなり,圧縮技術の規格争いがあった事などはもう忘却の彼方でしょうか。元祖ウォークマンのソニーもむろん手をこまぬいていたわけでは無く,デジタル・ウォークマンで反撃に出ましたが,その足かせになったのが圧縮規格です。CD規格のデータをそのまま保存できない(したら曲数が少なく実用的ではない)ですから,データ圧縮が必要ですが,詳述は避けますが結果論として,ドイツのフランホーファ社開発のmp3に対して,ソニーがMDの圧縮技術として開発していたATRACが負けたと言えるでしょう。

音楽を外に持ち出すウォークマン,それからCDに始まった音楽のデジタル化を引き継いだの現在のデジタル音楽時代でしょう。現在では,スマホがあればラジカセの機能は完全に含まれますが,スマホが現在の様に成熟するまでは,「ラジカセ・ロス」で随分不便な思いをしました。簡単に生録音ができないという点です。それは現在も続いていますが。

1980年代頃?までのラジカセには,マイクが付いていて,生録音ができました。しかし,どうもラジカセ内蔵のマイクを使う人は少数派だったらしく(ほとんどがラジオやCDからカセットやMDへの録音だったのでしょう),内蔵マイクが省略されてしまいました(マイク省略でマイクアンプも省略できますからコストダウンには大いに寄与した事でしょう)。これで,生録派は完全にネグられてしまいました。

21世紀に入った頃には,生録音するためには,MDなどの録音機能付きのものに外付けマイクを使うか,パソコンにマイクを繋ぐ(マイク端子がなければさらにUSB接続などのサウンドデバイスを使わないといけません)という,ややマニアックな方法しか無くなりました。しかも,再生はヘッドホンで聴くのみです。この不便さを緩和してくれたのがICレコーダーでしょうが,やはり再生はヘッドホンで聴くのみです。スピーカーで聴けるものもあったかも知れませんが,何分小さなものですから,ヘッドホンの方が実用的でしょう。

録音に際してマイクやアンプ,パソコンへの配線の引き回しなどをしていたら,演奏どころではありません。やはり気が向いた時,さっと録音できるマイク内蔵のICレコーダが便利です。ただこれも,再生はヘッドホンで聴くのみ,まあ無線で飛ばすなりしてスマートスピーカーにSiriなり,Alexaなりに言えば録音した音源も再生してくれるのでしょう。

しかし,隔靴掻痒感は否めません。デジタルは一見便利そうで回りくどいです。
以前にも書きましたが,例えばちょっとしたローパスフィルタを構成するのに,アナログなら抵抗とコンデンサが1本づつあれば済むところを,同じことをデジタルでやるには,ADコンバータ-デジタルフィルタ-DAコンバータという膨大なデバイスを通さないといけません。ぱっと録音できて,ぱっと再生。それも人の感覚どおりにとなると,内蔵マイク(せめてマイク端子)の付いたラジカセが優れています。一台で何でもできるスマホが普及した現代において,ラジカセが静かなブームというのも皮肉なものです。現在,新品も購入できる様です。

パナソニック ステレオラジオカセットレコーダー RX-FS27-K

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  • 出版社/メーカー: パナソニック(Panasonic)
  • 発売日: 2017/07/21
  • メディア: エレクトロニクス

パナソニック ラジオカセットレコーダー RX-M45-H

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