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カヴァティーナ組曲について~その4・Sarabande~ [曲目]

A.タンスマンのカヴァティーナ組曲について,Segovia版とZigante版を比較検討しています。今回は2曲目のSarabandeです。

サラバンドはゆっくりとした3拍子の曲です。スペインのフォリアみたいなやつと言えば手っ取り早いでしょうか。ヘンデルのサラバンドは有名です。

このサラバンドは冒頭3連符を含むテーマが特徴的です。むろん近現代の曲ですので,バロックのサラバンドの形式は持ちつつも音の使い方は新しいです。この曲,ゆっくりで技術的には難しくは無いのですが,最初の譜読みがイヤになります。臨時記号の多さにです。前回取り組んだ時書きましたが,この曲シャープ5個で書けば,臨時記号はすっきり解消です。

  
  譜例1. Sarabante冒頭 (Segovia版をそのままノーテーションしたもの)


  
  譜例2. Sarabante冒頭(上掲の譜面を#5つで書き直したもの)

調性的に言えば,ロ長調。旋法とすればB-イオニアンでしょうか。
しかしながら,タンスマンがこのカヴァティーナ組曲の4ムーブメントすべてを調号なしで臨時記号で書いたところに,「これは旋法音楽です」というメッセージが込められています。

Preludioは普通に見ればホ短調でしょうから,シャープ1個のはずですが敢えてつけていません。もっともホ短調ともホ長調ともつかぬEの旋法を使っています。そしてこのSarabandeはBの旋法です。つづく,Scherzinoの調は分かりにくい(普通の調性では無い)ですがホ長調で終わります。最後のBarcaroleはやはりホ短調っぽい調です。

Sarabande以外の曲に脱線しそうになりました。ここではSarabandeの版による違いを見ておきます。

譜例3に示す Zigante版のSarabande17小節目から20小節目までは小節ごとに見るとABBAになっています。小節ごとのモチーフの並びが鏡像の様になっています。これは,Danza Pomposaにもみられる手法です。Danza Pomposaはのちにセゴビアの要請で補作曲されていますから,このような手法はタンスマンのギター曲ではこのSarabandeのほうが元祖なのでしょう。いずれにしても,この17小節目があるのがタンスマンの手法からしても順当そうなのですが,セゴビア版ではこの17小節目が無くて,BBA(あるいは順番からしてAAB)の並びになっています。ここはセゴビア得意のカットなのでしょうか*。

   ZigSara1.jpg
  譜例3. Zigante版Sarabandeの17小節目から


   SegoSara1.jpg
  譜例4. Segovia版Sarabandeの17小節目から


あとの違いはあまりなさそうです。譜割りですが,1ページに収まっているSegovia版に比べ,見開き2ページになったZigante版はやや間延びした感は否めません。


*たこやきおやじさんの指摘ではSegoviaのレコードでは弾いているとの事。単純ミスなのか,この版で意図的にカットしたのかは判然としません。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

下に、私のセゴビアのレコードと同じ録音と思われるものが出ています。ご参考まで。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLxO5vnkcu1DdxTkbxhVE15Ec8C2edHIl2

by たこやきおやじ (2020-03-14 11:48) 

Enrique

たこやきおやじさん,
有り難うございます。確認しました。演奏はあまり聞きませんが,確かにくだんの小節は弾いている様ですね。
by Enrique (2020-03-14 12:51) 

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