昼散歩の風景 [日常]
「散歩でチョウを見て」なる記事を書いていましたが,必ずしもチョウでないので,タイトルを変えてみました。
今回アベリアの花にヒメアカタテハ。 | なかなか翅を開きません。 | ||
同じ花にオオスカシバが来ています。 | 長い口吻で蜜を吸います。 | ||
みごとなホバリング。 | 蜂鳥の様な空中姿勢。 | ||
「本家」のクマバチですが。 | 無器用に花にしがみついています。 | ||
ヒメアカタテハです。秋のありふれたチョウです。夏のぎらついた感じではなく,何か秋の風景を身にまとっている感じがします。すばしっこいチョウですが,アカタテハほどの力強さは無く,捕えるのも簡単なチョウです。仮に網を持っていても捕える気は起きません。それにしても,アベリアは定年後のバタフライガーデンのプランツとしては想定外でしたが,なかなかどうして,色んな種類が集まりますので,候補にしないといけません。バタフライ用プランツは,この植物に限らず人間が見てもさほど美しくないということが欠点と言えば欠点です。それとと伸び過ぎて剪定が大変ということもある様です。
アベリアの他の株を見ていますと,オオスカシバが来ていました。この種類,知らない人が見たら,ハチかハナアブだと思うでしょうが,蛾の一種です。名前の由来でもある通り翅が透明です。なんと羽化した直後は麟翅目特有の麟粉があるのですが,その後生まれ持った麟粉をわざわざ落として,ハチ系統に擬態するのです。ハチに見えたら彼らの化けかたが見事だということです。
それにしても見事な飛行です。蛾がハチに擬態して日中花の蜜を吸うと言う,変わり種です。わざわざ大変なエネルギーを使って空中にホバリングして蜜を吸わなくても,花に止まってゆっくり吸えば良さそうなものですが,ハチになりきった以上,その様にしないとダメなのでしょう。
かたや本家のハチがいました。クマバチです。この種は,知らない人が見たら一見怖そうですが,全くおとなしいハチで,この種類には攻撃された事がありません。もっとも人を攻撃するどころか,花の蜜を吸うのも無器用で,やっとこさという感じですが,平和主義で生き抜いているのですから立派なものです。
エミリオ・プジョールに「くまんばち(Abejorro)」という練習曲がありますが,少し無器用に花から花に移る熊蜂のユーモラスな感じが良く表現されていると思います。やはり同系統の練習曲にサグレラスの「はちすずめ(El Colibri)」がありますが,こちらは文字通りハチドリの様を描写した曲です。オオスカシバは蛾ですが,様子は全くハチドリと似ています。空力特性は共通でしょうからトリでもハチでもガでも同じ様な飛び方になるのでしょう。
>羽化した直後は麟翅目特有の麟粉があるのですが,その後生まれ持った麟粉をわざわざ落として,ハチ系統に擬態する
興味深い本能です。
ところで、クマバチとクマンバチ。
岩波国語辞典によれば、クマンバチはスズメバチ。
もっとも、wikipediaによれば、方言でクマバチをクマンバチとも呼ぶ、と言っています。
スペイン語のabejorroは英語ではbumblebeeとなっており、日本語訳はマルハナバチとなっています。クマバチとマルハナバチは異なるので、英語の題名を正とするならば、リムスキーコルサコフの有名な曲は「マルハナバチの飛行」にすべきだという指摘もあるようですね。
by アヨアン・イゴカー (2019-09-20 13:15)
アヨアン・イゴカーさん,実は私も混同していました。
私は写真の蜂をマルハナバチだと思っていたのですが,念のため調べたところクマバチでした。黒くて大きいので,もっともな和名だと思います。てっきりこれが「クマバチ」(ないしは俗称クマンバチ)のことだと思いました。
確かにスペイン語Abejorroの和訳はマルハナバチで,逆にクマバチはAbeja(単に蜂の意味もあるようです)ですので,明らかに取り違えており,曲名のAbejorroをくまんばちと訳すのは二重に間違っている可能性があります。
クマバチとマルハナバチの混同はどちらもおとなしいハチなのでさほど危険ではありませんが,スズメバチとの混同は大変危険です。スペイン語ではスズメバチはAvispónと,全く違う綴りになっています。
地方では単に大きな蜂の事をクマバチと呼ぶところもあるようで,大きな蜂=スズメバチなど=危険となっているようです。岩波国語辞典では民俗的な方のネーミングを取り入れたのでしょうか。
プジョールの練習曲は正確に「マルハナバチ」でも良い様に思いますが,リムスキー=コルサコフのは「マルハナバチの飛行」ではまるで迫力が違ってきます。クマバチないしはクマンバチはインパクトがありますので誤訳なのか意訳なのか微妙なところではあります。
by Enrique (2019-09-22 15:44)