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i指の強化と指パッチン [演奏技術]

i指の音が弱い事が気になっています。

i指は,和音を内声を担う事が多く,多声楽器であるギターの演奏をグレードアップさせるには結構重要です。

弦楽で言えばヴィオラパートなどに相当するでしょうか。内声がしっかり聞こえてつながれば,演奏の立体感がまるで違ってきます。私にとっての課題は,i指をしっかり弾くことです。

以前挙げたブロックダイアグラム[1]で言えば,「脳」の次の「手」の部分です。もちろん,きちんと音を聴けていないと,手の改善もありえません。特定の音も聴けている,その音を強化しなければいけないと十分認識している,しかし,なかなかままならない,とすると,後はフィジカルでしょうか。

Fig.1 演奏をごく単純化したブロックダイアグラム。d1~d4は各所に入る外乱。[1]の記事より再掲。
指の強化法としては,このようなウェイト・トレーナーもありましたが,これは鍵盤用ですので,これをi指に着けて鍛えてもダメでしょう。

IMGP0129.JPG
Fig.2 鍵盤用のフィンガーウェイト。ギターには向かないでしょう。[2]の記事より再掲。
筋肉の強化というよりも,むしろそのコントロールでしょう。力よりも技。はたと思い立ったのが,奏法を換えてから,右手の振り抜くタッチのコツは,「指パッチン」だと悟ったことでした。指パッチンで使う部分は,第3関節です。ギターを弾く場合も,指の駆動は指パッチン式でないといけません(もちろん指パッチン時は第1関節は伸びていて弦を弾く時とでは異なります。弦を弾く時は全関節がアーチ状にならないといけませんが,第3関節を使うのは共通)。

だとすると。。。

「むむむ,指パッチンはmでやっているではないか!」
と悟った訳です。

元々指パッチンは余り得意でありませんが,mでは比較的スムーズに出来ます。aもまあまあ出来ます。何と,iの指パッチンがまるで心許ないではないですか!

指パッチンの発音機構?を考察してみます。
まず,各指をp指と強く摩擦するのが明確なパッチン音を出すためには必要条件です。そして,摩擦力が抜けて速度を速めて脱力した指が親指の付け根から腹部(母指球)にかけてを叩く事によって空気の破裂音が発生します。拍手と同じような発音ですが,摩擦をせずに自律的にm指などで母指球を高速で叩く事は出来ませんので,指のエネルギーを溜めるために静止摩擦を用い,指の力が最大静止摩擦力に打ち勝って急激に抜けるスティック・スリップ現象を利用している訳です。
指パッチン.png
Fig.3 指パッチンの力学的状況模式図。指に込める力(外力)は当初指同士の静止摩擦力と釣り合って静止していますが,最大静止摩擦力を越えて急激に動き,母指球を打って静止。

ですから,指パッチンを安定に鳴らす為には,
①十分な最大静止摩擦力が得られる事(指の摩擦条件が異なると上手くいかない可能性があります)
②十分なスティックが得られたのちのスリップが高速に進行すること(これも摩擦条件によります)
③スリップして十分な速度を持った指が,狭い領域を打ち,その部分の空気を破裂的に発射すること

①,②に関しては摩擦条件ですが,手のコツとしては,打つ指がスティック・スリップののち瞬間的に脱力して不随意に受け部分を打つ事だと思います。それから,受け部分の形成も案外重要です。拍手と異なり指一本で打つわけですから,受け部分をしっかりクローズしてやらないと,空気は勢いよく出て行きません。a指を添えておく事も案外重要でしょう。

これ以上言っても人による指の差もあろうかと思いますので,止めておきます。ここでは,指パッチンを鳴らすのが目的ではなく,それを手段としてi指の運動能力を強化することです。

私のi指は指パッチンが鳴り難いです。もちろん,i指パッチンは,受け側がクローズされにくいという事情もあるのでしょう。a指を添えても,m指の空き分で打撃部がクローズされません。

やはり指パッチンを鳴らす事が目的ではありませんので,それはそれとして,i指パッチンが心許ない原因は,
力を込める ⇒ 最大静止摩擦力を越える ⇒ 動き出して瞬時に脱力
がスムーズに言っていない事に気が付きました。特に最後の瞬間的脱力がです。

「オーマイ・グッネス!」これに気が付いたら,後は訓練のみ!

ひたすら,iの指で下手くそな指パッチンをしているオジサンを街で見かけても,決して通報しないでくださいネ。まあこの訓練を外では余りしない方が身の為ではありますが。

それから,言わずもがなな事なのですが,指パッチンにおける摩擦力は,弾弦時の弦の弾力に相当し,それに打ち勝つ運動能力をi指に持たせたいという欲望に外ならないのであります。

参照記事

[1]「認識のあいまいさ」2018-02-10
[2]「大リーグボール養成ギブス?」2011-08-01
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アヨアン・イゴカー

iパッチンは難しいですね。音量がずっと小さくなります。
ピアニストの清塚信也が、薬指の練習方法を披露していましたが、
楽器によって訓練の仕方が違っていて興味深いです。
by アヨアン・イゴカー (2019-03-08 11:12) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

私も指パッチンはiの指はmのようにはうまくできませんが。
(^^;
ですが、私の場合はiが弱いというよりも、mやaがiに比べて強いと思っています。iの強さにそろえてm、aを弱くするのは結構難しいです。弾いているうちに忘れてしまいます。(^^;
私は昔、テニスやゴルフをしていたので握力や指の力は有ると思っています。ギターにおいて、右手はデリケートな音から大きな力強い音まで出さないといけないので、ピアノなどでもそうだと思いますが、指先だけでなく、手の平とさらに肘と指先との連携で適切な弾弦をする必要があると思います。しかし、私の様なレベルではこれらのことを極めるのは大変難しいと思っています。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-08 11:28) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
指それぞれに特徴があります。
押し込んではじく行為はそれぞれムラがあります。
iはコントロールは容易ですが力というか瞬発力が足りないという事に今更ながら気づきました。mは比較的コントロールも力もある。aはそれらの中間でしょうか。和音を弾く場合,それらを団体で動かしつつ,各指がコントロールできるのが目標です。
by Enrique (2019-03-08 16:43) 

Enrique

たこやきおやじさん,
筋力は無いよりもあった方が有利だと思います。ただやはりそのコントロールでしょうか。
現代奏法では,第三関節を使うのが基本ですので,そこでの各指の均等さとはじいた後の確実な脱力を目指しています。弦を如何に正確確実均等に押し込むか,あるいは各指の強さをコントロールするかがまず基本だと思います。これだけで演奏がかなり正確になると考えています。手のひらや肘を使う奏法は,異なった音色を求める際のバリエーションだと思います。
by Enrique (2019-03-08 16:57) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

すみません、確かに手の平やひじの話は余分でした。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-08 18:09) 

Enrique

たこやきおやじさん,
いえいえ,高度な演奏ではそちらも使うと思いますが,先ずは基本と思った次第です。
by Enrique (2019-03-10 07:57) 

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