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デュナーミクとアゴーギグと [音楽理論]

音楽用語に関する雑感を書いていて,これを書きたくなりました。
前に取り上げた,レガートとかノンレガート,スタッカートの類は,アーティキュレーション(何故かアーティキレーションという人も)と言います。

それに対して,デュナーミクとは文字通りダイナミクスで,強弱をどうつけるかです。
初心の頃は音を出すのが精一杯ですから,デュナーミクなど二の次,三の次です。まずしっかりとフォルテでマルカートで良い音質の音が出せるのが基本だと思います。

ある程度弾けるようになってくると,少し強弱をつけたくなります。
ギターではそうそうバカでかい音は出せないので,強弱というと如何に弱奏を美しく弾くかという事になると思います。ハーモニクスなどは,もともと蚊の泣く様な音なので,技術的に出せる目一杯の音で弾いている自分がいます。

強弱をしっかり出せるというのは,そこそこの技術が必要です。そこそこの技術でただ弱く弾いているのを聴くことがあります。ppは単に弱く弾くということではなく,曲の場面にもよりますが,緊張感を要すると思います。上手な人の弱奏はぞくっとするほどの美しさで迫ってきます。美しい通る音で弾かれる弱奏はこの上ないもので,特にギターという音の小さい楽器での大きな武器だと思います。汚い音で弾かれる強奏よりもずっと力を持っていると思います。しかし,ただ音の小さいだけの弱奏は,物理的な音響の小ささとの相乗効果で何の感興もありません。

さて,このデュナーミクですが,単にpと書いてあるところを弱くして,fと書いてあるところを強く弾くだけでは,余り音楽的演奏になるとは思えません。やはり音響は相対的で心理的なものですので,気持ちの変化が必要です。よく,子供のピアノ演奏などで,繰り返し2度目は弱くなどと習っているものだから,ただ弱くしている演奏がありますが,音を小さくするというのは同じことをしないという一側面だけですから,単に機械的に弱くしてもわざとらしいです(もちろん気持ちだけ入れ替えてもいても実際の音が変わっていないと仕方がありませんが)。

爆発的なフォルテもあるでしょうが,たいがいはフレーズの中での強弱でしょう。
強奏の前には弱奏部がないと目立ちませんし,クレッシェンドやデクレッションドは加速度的にやらないとその様には聞こえないものです。

アゴーギクとも関連するかもしれません。
デュナーミクが音の大きさのゆらぎだとすれば,アゴーギクは音の時間的なゆらぎです。
結構揺らいでいるものですし,舞曲などではアクセントとともにリズムにも特定の揺らぎを与えないとそれらしく聞こえないものです。

ロマン派以降の作品では,テンポルバートが重要な意味を持ちます。しかしまずはメトリークが基本ですから,そこからの節度ある美しいゆらぎが演奏を豊かにするのだろうと思います。

デュナーミク,アゴーギク,そして前回触れたアーティキュレーションは,リズム・メロディ・ハーモニーで構成される音楽の基礎を更に豊かにする,音楽の新皮質とでも言うべきものかなと思いつつも,いや原初的なものなので旧皮質の方なのかなと思ったりもしています。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

私は譜面に書いてあるこれらの記号等々は、一応どのように弾くのかは考えますが、最後は好きなプロの演奏の「真似」をするしかありません。素人ではキチンと解釈して音楽的に演奏することは、大変難しいことだと思います。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-06 00:41) 

Enrique

たこやきおやじさん,
譜面に書かれている通りが基本とは思いますが,表し切れるものでもありません。私はへそ曲がりなもので,あまり他の方の演奏は参考にしないのですが,音の出し方など基本的な点は学びたいと思っています。確かに,聞けば,「なるほどそういう風に演奏するのか」と思うことは多々ありますがありますが,逆に「シロートがこんな演奏できないわ」と思うこともあるので,参考演奏を聴かねばと思いつつも結局しないことも多いです。
セゴビアのように譜面を書き直している例もあります。セゴビアの意図を読みとって元に戻すという作業は結構大変です。
by Enrique (2019-03-06 04:40) 

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