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手工楽器について~チューニングマシンについて~ [楽器音響]

現代のギターはヴァイオリンやチェロとは異なり,コントラバスの様にギアペグが用いられます。

糸巻き(マシンヘッド)については昨年書きましたので,今回は少し異なった視点からの雑談的なお話です。
ウォームギアが用いられて,多少のバリエーションはあるようですが,大抵のものはペグを14回転させると巻き取り部が1回転するように作られています。これにより,チューニングの微調整が容易になっているのは異論の無いところでしょう。

19世紀ギターではマシンヘッドのものと,ヴァイオリンの様な木ペグのものがあります。現代の楽器でもフラメンコ・ギターでは木ペグのものがあります。
木ペグでは微調整が大変かなと思いますが,そうでもないという話もあります。仕掛けがシンプルで,弦交換や巻き取りが速いというメリットもあります。もしバロックリュートの14コース27本の弦をギアヘッドで巻いていたら逆にやってられないとは思います。

ヴァイオリンなどで用いられる木ペグにも技術革新の波は及んでいる様で,遊星歯車が仕込まれて,減速できるものが出ています。例えばウィットナーのFinetune-Pegなどです。これは調弦がラクなほか,ペグ穴をこすらないので,高級楽器を痛めないといった優れた点もあるようです。

現代の楽器は,マシンヘッドがついてラクになっている面は否定できないと思います。
性能はピンキリです。工業製品ですから,現在では安いものでもそう酷いものはありません。現在1セット1000円位のものでも使えることは使えます。

ロジャースなどは,かるく10万円以上します。ちょっとした楽器が買えてしまいます。
ドイツのライシェルに,スペインのフステロ。そして日本のゴトーなどが有名ですが,お国柄を反映してか,ハウザー御用達のライシェルの剛直さに対してフステロはやや精度的に甘い感じはありますが,ラミレス,フレタ,アルカンヘル・フェルナンデスなど,いずれもスペイン製の最高級楽器御用達です。

以前も書きましたが,ベアリングを入れたものも出回っています。機械的精度は高い方が良いとは思いますが,それだけでもない様な雰囲気です。基本的に穴の距離さえ合えば,どんなマシンヘッドでもつけることはできますが,やはりバランスというものがあり,高価な楽器には高価なマシンヘッドが標準で付けられます。楽器のグレードがよくわからない場合,付いているマシンヘッドも参考にはなります。ただ有名楽器には付いているマシンヘッドの銘柄も決まっていますから,ちがう銘柄のものが付いていますと後付けだとすぐわかります。古くなって新品に取り替える場合でも同じ銘柄のものをつけるのが普通です。

さて良い糸巻きは,チューニングのしやすさはもちろんですが,音が変わるという意見も散見されます。当方は,マシンヘッドを替えて,音色が変わると言う経験は余りしていないのですが,きっちり固定される事により音の伸びやクリアさなどは改善するだろうなとは思います。弦は理想的には両端固定ですが,ブリッジ側は近似的には固定だが少し動くという状態です。完全固定だと音になりません。弦の振動を受けて少し動いてその振動エネルギーを効率よく空気の振動エネルギーに変換するのが楽器の役割なわけで,これに様々な工夫がなされるわけですが,もう一端のヘッド側に関しては,ただ留めているだけです。こちらは理想的には完全固定でしょう。なるべくブラさないのが良い楽器でしょうし,マシンヘッドもその役目を担うわけです。

良くなると言うよりも,なるべくブラさないで楽器本来の性能を生かすという事なのだろうと思います。その意味で変わるは変わるのだろうなと思います。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

私は、ナットから糸巻までの弦の巻取り角度が、フレット側の弦との角度が大きいと音質?、音色?が微妙に変わる感じがします。私の気のせいかもしれませんが、Enriqueさんはこのようなご経験はありますでしょうか。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-02 23:02) 

Enrique

たこやきおやじさん,
なかなか同条件で比較するというのが難しいのですが,気のせいということもないのでしょう。楽器によってもネックの角度が少し異なります。
リュートのヘッドは殆ど直角について弦長を確定しているわけですが,ギターのヘッドはやや斜めで,糸巻き側に張られた弦の鳴りもわずかには音色に影響を与えるのでしょう。
何れにしても,弦の境界条件としてはほぼ固定境界ですが,完全固定されないわずかな非線形性部分を対象にしているので,難しい話ではあります。
ただ楽器の微妙な音色なるもの,近似的には無視されるような2次的,3次的なところが効いている可能性はありますね。
by Enrique (2019-03-03 07:48) 

通りすがり

以前の糸巻き記事でコメントしたものです。糸巻きの巻取り部がかなり割れていたものを25年ぶりに新品に換装(GOTO510)で明確に音が変わりびっくりした経験あります。伸び鳴りともに改善しました。いたんだ糸巻きだとその効果が明確にでるという事かもしれませんが、音への影響はありと思っています。
痛んだものは部品交換だけでも良いので疎かにしないことかと思います。
by 通りすがり (2019-03-03 13:58) 

Enrique

通りすがりさん,お久しぶりです。

糸巻きは,スムーズに移動ときちんと固定という相反する機能を持っています。良い糸巻きはそれを両立できるのでしょう。

忘れていましたが,ライシェルをつけた楽器で特定の音がおかしくなったことがあります。このケースではペグ部分がびびっていました。
ナット部は固定境界のはずですが,実際には振動します(触ってみるとわかりますね)ので,ここの影響は確かにあると思います。無いとは決して言えません。
弦に関するところは音の入り口部分ですから案外おそろかにできないという事でしょう。不完全性は取り除いておかないといけませんね。

むしろ,楽器全体で音に効かないと言い切れるところはそうないのでしょう。ヘッドの形状が音に効くという方もいます。これは不完全性ではなくて,音質の変化でしょう。エラが張ってない方が良いとか。無いとは言い切れません。音に一番効きそうな表面板の割れとか案外さほどでもなかったりします。
by Enrique (2019-03-04 06:45) 

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