演奏のメンタルとフィジカルと~補足~ [演奏技術]
前回このテーマについて書いてみて,少し補足したくなりました。
緊張する。上る。というのは,「実力以上のものを求めるせいだ」というのは,少し,乱暴な断定の様な気もして来ました。
「実力」なるものが数量で測れない以上,あまり定量的な議論になりませんので,もう少し限定して,練習とどの程度同じに弾けるか?という尺度であれば,もう少し定量的に議論出来そうです。
「練習 < 本番」
これはムリな相談で,これを目指してこける?のではないかと推測しました。
とすると,原理的に,
「練習 ≧ 本番」
なはずです。
そして如何に,
「練習 ≒ 本番」
に持っていけるか?が命題なわけです。
上るのは悪い事なのでしょうか?
緊張の余り,弾けなくなると言うのでは,間違いなく悪い事です。
一方,緊張は,より良い演奏をしようという前向きな意志の表れでもあるわけです。
しかしながら,
より良い演奏をしたい ⇒ 緊張 ⇒ 良くならない ⏎<br>
こういうループが出来てしまうわけです。そこで,
・良い演奏をするにはリラックスが必要だ。
・練習の4割程度弾ければいいだろう。
などと思う事でそのループを断ち切る事にします。
本番では,練習で間違った事が無いところを間違う事があります。焦ります。益々緊張が高まる場面でしょう。
その結果ついつい,
「あっりゃ~,こんなところで間違ってやがるバカヤロウ」と自分を責めてしまいます。「チェッ」としかめっ面になります。これがさらに筋肉の収縮につながり,上がりループに寄与してしまう様です。
そこはどっこい,「本番もエクスペリメント*」ですから,
何食わぬ顔で修正・修正。一期一会です。
自分で思うほど聴衆はネガティブに感じていないものです。
だって,自分は何十回も弾いていますが,多くの聴衆はただの一回ですから。
神の様な演奏をする一流プロでも上がりまくる人がいるようです。これなども,求めるレベルが高いから当然とも言えるでしょう。
それに,仮に完璧に弾けたとして,それを多数の人に聴いてもらって,皆が感動するとも限りません。ミスの無い演奏でも白ける演奏もあれば,ミスだらけでも説得力ある演奏もあります。音楽経験や好き嫌いの違いもあります。プロだったら,聴衆やら会場の違いにより弾き方を変えるのかもしれませんが,アマはそんな芸当は出来ません。むしろ,割り切りというか,無我・無欲・諦念の様なものが必要なのかもしれません。せいぜい,色んな場所での演奏経験を少しでも積む。特に弾き難い最悪な場所でもそれなりに弾ける様にしておくのも良い経験なのかもしれません。いわゆるストレス・テストですね。
*ピアノの巨匠,アルトゥール・ルービンシュタインの言葉だそうです。
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