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タンスマンのポーランド風組曲から弾いてみる [演奏]

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来週の発表の準備として録音してみました。

外部で音のよく響くスペースを見つけたので,今朝録音してみました。
録音機材はいろいろ持って行けないので,久々にSONYのPCM-D1を引っ張り出して,これ一発で行きます。壊れてはいない様でしたが,何分この機種は元々電池の消耗が異常に早い(組曲の1曲弾いただけで,表示が一つ減りました)ので,電池が持つ間の勝負になります。
ちょっと残響過剰ですが,弾きやすいです。

曲目は,Alexandre Tansmanの,Suite "In Modo Polonico",「ポーランド風」の組曲から5曲です。
この曲は,セゴビア編の楽譜によれば,

I. Entrée(アントレー,文字通り前奏曲の様なものなのでしょう)
II. Gaillarde(ガイヤルド,サブタイトルに「16世紀」とあります)
III. Kujawiak(クゥヤビアック,サブタイトルに"Mazurka Lente"とあります)
IV. Tempo de Polonaise(テンポ・ド・ポロネーズ)
V. Kolysanka No.1(コウィサンカ第1番,サブタイトルに東洋の子守唄とあります。ポーランド語ではLに/が付いて,kołysankaと綴る様です)
VI. Rêverie(レヴリ)
VII. Alla Polacca(アラ・ポラッカ,ポロネーズ風に)
VIII. Kolysanka No.2(コウィサンカ第2番)
IX. Oberek(オベレク,サブタイトルに"Mazurka Vive"とあります)

の9曲です。
さすがに人前で全曲弾くのはキビシいので,ここから,I, II, III, IV, IXの5曲を選んでいます。

タンスマンの言語はポーランド語に加えフランス語を常用していた様で,曲名もポーランド語とフランス語がミックスしています。ポーランド土着の舞曲に関してはポーランド語で,一般名詞的な曲名はフランス語の様です。

まず,第1曲のアントレー。
(フランス)コース料理の「前菜」の意味ですが,良く組曲の冒頭に用いる名称なのかどうかは寡聞にして知りません。新しさを競った時代でしょうから,ちょっと洒落た名前を用いたのか,あるいは「プレリュード」というと同郷ショパンの「24のプレリュード」の存在が余りにも大きく,しかも組曲の前奏曲としてのはたらきはもう無くなっていたわけですから,タンスマンがポーランド風組曲の冒頭を「プレリュード」で飾るというのは余りにも時代錯誤的所業だったのでしょう。ネーミングの都合に関わらず,この曲は「プレリュード」ではなく「アントレー」なのです。何か嘗ての素朴な歌やダンスを想い起こすかの様な雰囲気だと思います。
技術的にはあまり難しくはありませんが,ゆっくり奏でる上声のメロディを繋ぎたいと思うのですが,フルコードを引きおろす時のタイミングで上声が遅れやすいのですが,遅れないようにしようとすると低音側をテンポ先取り気味に弾かなければならず,タイミングが難しいところです。


第2曲のガイヤルド。ガイヤルドというと,J.ダウランドを想起しますのでイギリス,ないしは綴りがフランス語なのでフランスあたりでしょうか。発祥は良くわからないですが16世紀にヨーロッパで流行った舞曲のようですから,ポーランドも例外ではなかったのでしょう。
32小節の曲ですが,ほぼ2回づつ繰り返しですから,実質16小節の小曲です。簡単そうですが,これが結構難物で,ポリフォニックに動く内声がごちゃごちゃになって非常に出にくいのです。私の取り上げた5曲の中で一番厄介かもしれません。


第3曲クゥヤビアック。ポーランド語なので発音良くわかりません。カタカナで書くとこの程度ということです。舞曲の名称の様です。副題のマズルカ・レントというのが一番わかりやすいかもしれません。「ゆっくりなマズルカ」。マズルカの3拍子はワルツと違って2拍目にアクセントが来ます。なんでもポーランド人にはマズルカのリズムが染み付いているようで,ショパンはワルツを書いてもマズルカになってしまったとのことです。朴訥とゆっくり2拍目をはねあげながら弾きますが,私の演奏は少し力が入りすぎて重すぎる感じがします。その分中間部の付点は軽く行きたいところではあります。


第4曲テンポ・ド・ポロネーズ。滑らかなポロネーズと行きたいところですが,冒頭の付点の跳ねた後の和音を良く空振りします。プラントしてスタカート気味に弾けば安全ですが,そうするとペザントな感じになってしまい,あまりポロネーズ風でない様な気がします。スケールから次の和音への繋ぎも難しいところです。特に2回ある6度の重音スケールは余りきれいに弾けていないです。


途中4曲パスして,終曲オベレクです。これもポーランド舞曲の名称のようですが,副題の「快活なマズルカ」というのがわかりやすいところです。単純な繰り返しの多い曲ではありますが,技術的に外しやすいところが何箇所かあります。曲に機能和声は全く使われておらず,完全に旋法音楽です。低音のDとAがドローンで打ち鳴らされます。このドローンを鳴らしながら,快活に踊り回る音楽です。出だしは第4音に相当する下降音型のGに#が付きますので,D-リディアン,上行音型には付かないのでイオニアン風です。中間部からは主音とおぼしきD音にも#が付いてモードチェンジしている様です(モードを探るのもめんどくさくなって来ました)。その後反行音型風(対話風?)にセットになったディアトニック和音が打ち鳴らされ,最初に戻ります(譜面はリピートではなくベタで書いてありますが)。和音のセットが再現されて元気よく終了です。録音では,頑張りすぎて録音レベルを超えてしまいました。冒頭の発想標語には「ヴィヴァーチェ・ジョコーソ」とありますので,快活かつ「おどけた感」が必要なのでしょうが,当方の不得意とする領域ですので,ちょっとスタカート気味にするとか何かでそんな雰囲気出れば良いのでしょうが。

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プー太の父

「プー太が天国へ」に温かいコメントを
いただきましてありがとうございました。
3カ月ほど前から、立ち上がるのも辛そうだったので
少しは覚悟していましたが、16年以上一緒に過ごした
愛犬がいなくなると想像したとおり寂しいものです。
でも最近ようやく気持ちも落ち着いてきました。
by プー太の父 (2018-11-04 16:32) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

録音聞かせて頂きました。
さすがに、大変お上手ですね。発表会での演奏の成功をお祈りいたします。(^^;
by たこやきおやじ (2018-11-04 22:13) 

REIKO

楽しく聴かせていただきました。
ポーランドの少し曇った空(スカッと晴れてるイメージがあまり無い国?)が見えたような気がしました。
曲により要求される技術やセンスも色々なんですね。

それで手元の、ショパンと同時代作曲家のピアノ作品を集めた曲集に、ポーランドの専門家による舞曲の解説が載っていました。
クヤヴィアク:テンポに幅のある、ゆっくりと歌うような旋律を持つ踊り
オベレク:円を描いて踊る、とても速い踊りで、短いモチーフが反復される
(これらの中間的な「マズール」というのもあります)
マズルカはこれら民族舞曲の要素を取り入れ、様式化したものだそうで、一般的なマズルカの中に「ここはクヤヴィアク的」「ここはオベレクっぽい」等の部分が含まれる、あるいは垣間見えると考えれば良いようです。

発表会、ご健闘をお祈りします♪
by REIKO (2018-11-04 23:49) 

Enrique

プー太の父さん,少しお元気になられた様でなによりです。
今後共よろしくお願いいたします。
by Enrique (2018-11-05 07:03) 

Enrique

たこやきおやじさん,
お聞きいただきありがとうございます。
録音でも少し緊張しますが,やはり本番ではこれが課題です。
by Enrique (2018-11-05 07:05) 

Enrique

REIKOさん,ショパンは国際派ですから,マズルカになっているのですね。ポーランドの民族舞曲に関するものは案外情報は少ないのですね。
貴重な情報をありがとうございます。お人形の様な民族衣装を着て踊るあれだろうという想像はしていますが,私の15枚組の世界の民族音楽のLDにも無いのです。マズルカの原型で遅いのと速いの。普通のマズルカを弾くにも大変参考になりますね。
by Enrique (2018-11-05 07:16) 

アヨアン・イゴカー

一曲目、出だしからリュート曲、といった印象。古風で、美しいです。
二曲目、ちょっとつかみどころのない曲に感じました。
三曲目、特に中間部などはショパン風ですね。
四曲目、如何にもポロネーズらしい曲で楽しめました。
五曲目、低音がバグパイプのようで楽しいです。
by アヨアン・イゴカー (2018-11-05 10:41) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,お聴き頂き有難うございます。
古風さを身に纏いながらも20世紀の作品ですから新しいところもあるのだろうと思います。第一曲はリュート曲の様な佇まいでやはり古風さ,それを追憶している感がある様な気がします。第二曲は16世紀に流行していたであろうガイヤルドを模したものだうろうと思いますが,演奏が難しいです。やはり古風な舞曲がさらっと流れるのだろうと思いますが,至難です。
第三曲は,如何にもゆっくりなマズルカですので扱い易い局だと思います。
第四曲,ポロネーズらしく弾くのは難しいです。
五曲目はおっしゃる通り,バグパイプの模倣だと思います。二本鳴らしながら,メロディを弾かないといけません。終曲の雰囲気が出せると良いのですが。
by Enrique (2018-11-05 16:08) 

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