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旋法について考える [雑感]

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ギリシャ旋法と今日教会旋法と言われているものは,名前が同じでも対象とするものが異なるので,ここでは教会旋法について触れてみたいと思います。

教会旋法については以前,Noteflightを用いて実演をした事があります。
これはグレゴリア聖歌の分類に用いられたもので,当初ドリア,フリギア,リディア,ミクソリディアの四つの旋法しか無かったようで,それぞれに変格という,転回形の様なものがありました。つごう八種類ですが,主要音が異なるなどの違いはあるのでしょうが,音階としてはダブりが出ます。それに,16世紀に付け加えられたエオリアとイオニア,更にシから始まるロクリアが追加されます。

ここでは,以前と同様に,全て正格の「井戸振り見えろ」の語呂で覚える(オニア,リア,リジア,ディア,クソリディア,オリア,クリアの7つの教会旋法について考えてみます。

ピタゴラスの時代には,教会旋法で言うところのリディア旋法が普通の音階だったらしいです。彼は一弦琴(モノコード)で音を調べましたから,下がるという発想は無く,今で言うピタゴラス音律の音階の作り方で,ドからスタートすると完全5度上のソ,さらにその完全5度上のレ,といった具合にラ,ミ,シと出て,次はファ#になります。

ファでなくファ#を使うというのは,現代の感覚からすれば古風な感覚になりますが,音階の作り方からしたら,自然であったことが想像されます。何しろ12回もの五度回転を経て,大幅にくるったファしか出て来ないですから。もっとも弦の実験から得られる結果は限られますから,その実験結果に基づき数学を使った事は想像に難くありませんが。

しかし,何も1オクターブに音が12個でなければいけない強い理由も無いので,ピタゴラス式の音階音の作り方で最初に出て来るド,ソ,レ,ラ,ミだけの5音音階,ペンタトニックが世界各国の民謡などに使われていることはご承知の通りです。

もし使える音階がこれだけだけですと,随分と音楽に広がりが乏しかったものだろうと思います。旋法若しくは調に相当するのはそれぞれの音を出発音にする5種類だけです。

では,残るファとシがどう出て来たのでしょうか?ピタゴラス式では,シの方が先で,その次がファではなくファ#でした。この7つの音ド,ソ,レ,ラ,ミ,シ,ファ#を順に並べた,ドレミファ#ソラシドは,教会旋法で言うところのリディア旋法になるわけです。

なお,上で例に挙げたリディア旋法は,通常の説明では,ファソラシドレミファで表しますが,これをFリディアンとすれば,ドレミファ#ソラシドはCリディアンです。長調(イオニアン)と短調(エオリアン)でそれぞれ12調あるのと同様,全音と半音の配置を変えないで,主音を12種類変える事が出来ます。従って,12音を主音とする長調と短調で,2×12=24調あることになっていますが,7つの旋法を使えば,7×12=84調使える事になります。

さらに近現代では,教会旋法のみならず様々な旋法を自在に使っているのが特徴でしょう。クラシック音楽の世界のみならず,ジャズやその他ポップス,現在ならゲーム音楽も,その独特な雰囲気を出すために様々な旋法が使われています。
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REIKO

アメリカのピアノ教育作品を弾いていると、印象派風や現代風(ジャズ等の影響も含む)の曲で、普通の長短調とは違う音階が使われている(と思われる)ものが多数あります。
何旋法か認識できてなくても弾けますが、やはり分かっていた方が良い&面白いですよね。
今の自分では耳はもちろんのこと、アタマでもすぐに判別できないので、勉強しなきゃな…と思っていたところでした。

手元に、グリーンスリーブス(米国では「What child is this?」の歌詞でクリスマスソングになっている)を、ドビュッシー風(!)に編曲した楽譜があります。
旋律を階名読みすると「レ ファ~ソ ラ~シラ ソ~ミド~レミ ファ~レレ~ドレ ミ~ドラ~」なので、旋法っぽい?のですが、だから編曲者はドビュッシーと合わせたのかなと思っています。
(クリスマスソングを色々な作曲家の様式で編曲した曲集です)
by REIKO (2015-05-23 16:48) 

Enrique

REIKOさん,ありがとうございます。
旋法っぽい曲を何旋法と同定するのは結構難しいですね。私もそう多数やってないせいか,迷うことも多いです。それと部分的に使い分けていることや,独自の旋法を使っていることもあるようです。長調と短調ならば,冒頭の調号でほぼ分かりますが,旋法の場合は音の動きを良く調べないといけません。
作曲者は明確に使っていたとしても,読み取るほうは判じ物のようで大変です。ということで,ご呈示のメロディは?複雑な旋法ではないと思いますが,エオリア(自然短音階)?でしょうかね。
ドビュッシーは全音音階,ドレミファ#ソ#ラ#ドが有名ですね。
by Enrique (2015-05-24 00:59) 

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