NHKの音楽教室に関する思い出(ギター編4) [雑感]
荘村さんにひきつづき,2年目に視聴したのが渡辺範彦さんのレッスンだった。1975年度である。
完全主義者で知られ,一部,師事した人たちなどから伝説的に語られるのみで,その人となりは,あまり知られていない。むしろ,TVでほぼ一年間,視聴できたのはラッキーだった。
山下さん,福田さんが未だパリコンに出る前だから,日本人で唯一のパリコン優勝者だった。1969年優勝。「成熟した音楽性はジョンウィリアムズ以上と評された。」とテキストの講師紹介にあった。
渡辺さんの左手は,ものすごい汗で白黒のTV越しでも指板がぬれているのが分かった。
左手の動きが大きい,人差し指など,反り返って指板上を動く。ちょっと常人と違う気がした。真似できるものではなかった。
「そ,そこは,と,唐突過ぎるのではないですか?」と言うのが口癖のようだった。
フレーズの入りのことをおっしゃっていたのだと思う。
言葉数が少なく,よく無音状態になった。番組のADさんは焦ったのではないだろうか。
しかし,一旦演奏を始めると,そこには王者の風格のようなものが漂っていて,説得力抜群だった感じがする。
何分,その頃楽器の知識があったわけではないが,氏の演奏はこっくりとした音質で,荘村さんのベルナベの音とは,かなり違う気がした。
氏のテキストにはバッハ(実はペッツォールト)のメヌエットやヴァイスのファンタジーなどが載っていた。
荘村さんのテキストで,ギターはソルなどの古典もしくはタルレガのスペインものが中心と思っていたのだが,本格的なバロック曲をギターで弾けるというのが,ギター独学2年目の少年には新鮮な驚きだった。
ギターで最も熱心に見ていたのが,74年からの,荘村,渡辺,芳志戸の三氏の時だった。
その後,小原聖子さん,アントニオ古賀さん,鈴木巌さん,松田晃演さんまで,ほぼテキストは購入していた。80年代は就職して,なかなか楽器どころではなくなった。2回目の荘村さんの時は,私はそのときギターの演奏をほぼ休止していてピアノを少しやっていただけだった。就職して最初のボーナスで買ったのが,ヤマハの電子ピアノpf15。妻と結婚するまでこれを使った。
小原聖子さんの時のテキスト。内容はバラエティに富んでいた。
バラールなどの,古いルネサンスの曲は特に新鮮だった。
タグ:ギターをひこう
懐かしいテキストが!
私はとってあります。
渡辺さんも芳志戸さんも亡くなって残念です。
by nyankome (2010-03-18 00:23)
nyankomeさん,nice!&コメントありがとうございます。
当時は輸入版などは入手しにくい時代だったので,NHKテキストはかなり貴重な楽譜でしたね。手元にはいつの間にか半減してしまいました。
by Enrique (2010-03-18 12:18)
私は19-20歳にかけて、2年弱ギターを弾いていた時期がありますが、その頃にNHKテレビのギター教室が始まり、最初の講師が阿部保夫さんでした。この教室のテーマ音楽はソルの「モーツアルトの魔笛の主題と変奏」から主題の部分が弾かれていました。
阿部保夫さんは、手が小さく指が太く、あまりギターリスト向けでない手をしていましたが、非常に良い音を出していたという印象があります。まもなくギターを止めてしましたが、Enriqueさんの書かれているところによると、阿部さんは最後にも講師をしていたとのことですので、2回担当されたのでしょう。
その後、渡辺範彦さんの講師のときに、2-3度テレビ教室を見たことがあります。範彦さんの左手の動きは以前に見た阿部保夫さんと良く似ているような感じがしました。指が太いから?テレビで渡辺範彦さんが言葉を探して沈黙している瞬間が不安でしたが、それも今では懐かしいです。
by やーさん (2010-03-24 07:01)
やーさん,コメントありがとうございます。
NHKの「ギター教室」視聴でも大先輩ですね。
私が見た73年度は何回か担当された最後だったようです。そのへんのことが,以下に載っています。
http://prelude.at.webry.info/200405/article_6.html
この時からタイトルが「ギターをひこう」になったようです。阿部さんは日本でセゴビアに師事した最初の方だったようです。
阿部さんの右手はセゴビアの影響か,親指を出して握るような感じだったと思いますが,左手は余り記憶にありません。手のごつさは渡辺さんのほうがすごかったように思います。手がごつい方が良い音が出ると言われます。
by Enrique (2010-03-24 11:24)