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楽器用木材の特性(3) [楽器音響]

楽器用木材の特性(1)で紹介したJournal of Guitar Acousticsの1981年3月号(No.2)に掲載された"On Musical Instrument Wood"と題したDaniel Haines氏のペーパーの雑感を交えた解説の続編「楽器用木材の特性(2)」のさらに続編である。

何分木材は不均質,超異方性材料である。ここで測定された材はいずれも楽器用材として流通しているもののようだから,均質なところを切り出したものだろう。ここで注意しておかないといけないのは,各種数値の大きなバラツキである。だから,最終的な指数Lの上では同じ材でも一桁も値が異なるものがあることはすでに述べた。おそらく値段も大きく違うだろう。基本は木どりである。柾目が最も良く,ナタで割った材が最も良いことはすでに述べた。材の良さは柾目で発揮されるから,たとえいくらハカランダでも板目材ではローズの柾目に劣るだろう。Japanese Spruceのエゾマツも材のサンプルが一種類のみで,データはぱっとしなかったが,材を吟味すればヨーロッパ産に遜色無いものがあるのではなかろうか?

ベラスケスの記事で,最終工程としてボディ内に電球を入れて,ダークエリアをこそぎとる話があった。最終的に均質化するために,前近代的な方法に見えて実は合理的な方法なのだろう。当然のことながら,同一の材でも木目の方向と垂直方向でヤング率などは大きな差があり,一桁以上異なる。密度ですら(?!)向きにより異なるようだ。これらの比率も出しているが,指数Lの定義は平行方向と垂直方向双方の掛け算としているので,異方性の強さ(弱さ)は入らず,いずれも大きい(小さい)方が指数が高くなる。ムラの強さを調べる方法に関しては,現在ならば以前バイオリン研究で紹介した最新の医療用機器の使用や,音響顕微鏡などの使用も考えられる。

物理的測定があったのかどうかは知らないが,レッド・シダーはラミレス3世が表面板に採用して一躍人気を博し,現在もスプルースと人気を二分する材であることは周知の通りである。鳴りやすい特性は万人の認めるところである。表面板の材質はスプルース,シダーと進化してきて,近年はダブルトップと進化している。これはおそらく自然の材のみでは,このL値を大幅に向上させるのがほぼ限界と見たアプローチだろう。もちろん,実際の楽器ではブレースして使われるので,ブレーシング込みで鳴りやすくしたのが,ラティスブレーシングのアプローチである。シダーの表面板を極限まで薄くし,ブレーシングにはカーボンファイバーを使っている。ちなみに,カーボンファイバーを樹脂成型したものは釣竿などでの使用実績がある。軽くて(10m前後ある鮎竿はもうこれなくして考えられない),魚信に敏感(軽く,ヤング率高くロスが小さいからだろう)で,ハイパワー(ヤング率が高いからでフライ・ロッドはこれなくしては語れない)。ちなみに初期はグラスファイバーが用いられたが,現在では殆どこれになった。もちろん,つりも分野によって話が全く変わるが,釣竿の革命だったが,つり味が変わるとか,大物が簡単に釣れすぎて面白くないなど,様ざまな意見が出たものだった。(つづく)
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