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トルナボスの効果 [楽器音響]

村治佳織さんが最近使用されるロマニリョスにはトルナボスがついている。
これはサウンドホール内についた筒状の整音器(?)である。tornavozはturned voiceの意らしいので,転音器か。これはトーレスが使い出したものらしいが,広く普及しているわけではないので,その効果のほどは気になるところである。ちなみに,ロマニリョスは現代の銘工であるとともにトーレスの研究家でもあることでも知られる。

理屈の上では,ダクト(トルナボス)が響胴内の空気バネに対するロードとして働くので共振周波数が下がる。ビール瓶のように首の長いビンのほうが,共鳴周波数が下がる理屈である。ばね-おもり系に例えれば,おもりが重くなることに相当する。すなわち,ウルフトーンが低音側にずれるはず。また,共鳴特性がはっきりすることにより,共鳴する周波数(低音)の音量および余韻の増加が期待される。正しく設計できれば響胴を小さくできるはずだ。オーディオをご存知の方なら,バスレフ・スピーカといえば話が早い。またラミレス3世が発明した,響胴内に仕切りを入れる「カマラ」も空洞内の空気にロードを与えるので,トルナボスと同じような効果があると思われるが,製作が煩雑なためか,その後普及はしていない。

「てですこ」さんは,三連式のものを含め効果の程を比較検討されておられ,興味深い。音は低音を中心に変わるはずだ。特有の共鳴音を個性的な美しさとするか「くせ」とするかは楽器とその人の好み次第だろう。トルナボスを内側にラッパ状にしたり,小さな穴を開けたりするのは,共鳴の鋭さを緩和する工夫だろう。

Tornavoz.jpg当方も,マーガリンの空き箱で筒を作り,試してみた。円筒状で穴の無いプレーンタイプのボール紙トルナボス。もちろんこれは人前では使えない。個人使用に限るものである(家内の嘲笑の的にもなっている)が,低音にかなりの効果がある。6弦がどーんと響く。やはりウルフトーンが下がっているようだ。6弦を含むオクターブが迫力を増す。6弦レの調弦だと更に迫力満点。ただし,どこかで大きく鳴っているような,マイクがきいたような音響になる。この状態で少し試してみることにする。



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koten

 可成り昔に某Gショップでのギターレッスンに通っていた頃、トルナボスの付いたトーレスギターが店にあり、レッスン中に試奏させてもらったことがありましたね。
 そのとき先生は確か「これは色々な音、響きを出せる凄い楽器」というような感想を述べられたのですが、不肖の弟子だった私は、そのギター(&トルナボス)の良さが良く分からなかったという思い出があります。・・・で、名器の音色や響きの良さが分からない私は、今こうしてひたすら音律の方に走ってしまっているのかなあ、という落ちです(汗)。

 それにしても紙のトルナボスは初めて見ました(笑)。ただ、ギター製作家のHPでも「まずは紙で試してみよ!」と仰っている記事がありますね(驚)。
http://blog.so-net.ne.jp/camino-antonio-de-torres/2008-02-22
by koten (2010-09-22 12:53) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
開始まもない記事で,文カタイですね。kotenさんのヤワラカサを学ばなければ(笑)。確かに音の感じは変わりました。しかしその差は録音では殆ど分からなかいものでした。音色は全く主観的なものなので,音律の方が客観的・音楽的な課題ではありますね。
by Enrique (2010-09-22 14:31) 

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