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あがりの克服について(9) [メンタル]

いわば渡辺淳一氏の「鈍感力」なのだろうが,ゲインを下げるための具体策はなんだろうか?
私は読んでいないし,レビューで見るとどうもその方法は書かれていないらしい。
音楽をやるのに感性が鈍感でよいわけが無いし,かといって都合よく余分な感度をボリュームを絞るごとく簡単に下げられるものでもない。曲に集中して,余計な感度を無くすこともひとつの方法かもしれない。

あえて,自転車のアナロジーで考えてみる。自転車に乗れる人はすでに感度を下げて乗れるようになっている。調子よく弾けている時はうまく制御が利いている状態といえる。いわば普通に自転車に乗れているイメージである。気持ちよく,頭の中で歌いながら弾けている状態である。多少集中が途切れても勝手に体や手が動いてくれる。

敷地内では十分に上手になったが,車道に出たら,予期しない問題が起こるかもしれない。しかし,これは出てみないと分からない。実際に出てみたら,運転に自信が無い。筋肉硬直して,運転出来なくなる。曲が難しくなれば,例えとしての自転車が一輪車になったりサーフボードになったりもすることだろう。

私は高所恐怖症である。常々思うが,ステージ上は高所で体が硬直するのと似ている。
床に描いた線の上をはずさず歩くのはなんでもない。しかし,平均台の上だとだいぶ怪しくなる。下手に落ちると怪我をするかもしれない。そう思うと体がぎこちなくなる。ビルの工事現場の鉄骨の上などは絶対に歩けない。

ステージ上で失敗したって別に死ぬわけでも無い。理屈ではわかっていても,なかなかそう思えない。本番に向けて必死に練習すればするほど,うまく行かないときの落胆は大きく,死ぬイメージに近い。ならば,必要最小限の練習ですますというのもひとつの方法であろう。もちろん,これは一旦あがらないイメージと,必要最小限の練習量をつかんでからでないと無理だろう。また,自分の場合暗譜がうまくいくかという課題もある。それと,落胆も回数を重ねれば慣れてくるので,いわば鈍感力?に寄与するかも知れない。

身体的感覚を言葉で伝えるのは難しい。ならば,あがらない人と人前で二重奏などをやって,ステージ上で普通に弾いている感覚を身に着けるというのもひとつの方法かもしれない。

ふたたび自転車イメージに戻れば,自転車は「倒れるのが怖い」と思っていると倒れる。それは体が硬直して過剰反応してしまうからであったが,倒れてもいいくらいに体を預けると不思議と(制御理論など持ち出しておいてこういうのも変だが)倒れない。必要なら足をつけばよい。だから,「とちっても良い」と思えば案外とちらないし,多少のとちりは予定の範囲内なのであせらない。

途中まで良い演奏が出来ると,却ってあせってきて,終盤こけると言うことがある。これは,演奏中目標レベルがだんだん高くなってきて,あがりモードにまで自分を追い詰めた結果と見ることが出来よう。逆に前半よくとちると,後半うまくいく事がある。これはとちるのに飽きたのではなく,目標レベルを下げた結果,コントロールが回復したと見るべきであろう。

だから,調子悪いなと思ったら,目標レベルを下げないといけない。上の例のように自然にそうなる場合もあるのだが。調子悪いから「根性で何とか」と思うといけない。落ち込んでいる人に,「がんばって!」と言ってはいけないのと同じである。

上でも述べたが,あまり根を詰めて練習しないのも,必要以上に目標レベルを高くしないのに有効かもしれない。「止まっても良い」と思えば,案外止まらない。もちろん,それなりの練習量がなければそう思えないはずだが,自己を追い詰めない合理的な練習が必要であろう。

「勝つと思うな,思えば負けよ」
なんだ精神論かと言うことになろうが,どこかで現実に結びついての学問である。

人前での演奏機会の少ないアマチュアにとっては,普段の練習時から人前で弾いているというイメージトレーニングが重要であろう。その上で縷々述べてきた事が何か参考になるかな?と思う。
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