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電圧[V]と電流[A]を掛けるとなぜ電力[W]となるか? [科学と技術一般]

まず電力[W]とは,仕事率の事で1秒[s]間に何[J]の仕事をする事ができるか?という能力です。
現在では,自動車の出力などでも,かつての「馬力」から,[kW]で表される様になっています。

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電気の単位である電圧[V]と電流[A]を掛け算するとなぜ力学的な仕事率[W]になるのでしょう?
人によっては[W]は電気の単位だと思っているかもしれません(私の妻とかはそうです)が,別にそれはそれで構わないでしょう。


これを考えるためには,電圧[V]と電流[A]の成り立ちから考えないといけません。
SI単位系の基本単位は,[m], [kg], [s], [A]です。電圧のボルト[V]はありませんので,組み立て単位である事が分かります。そもそも,電圧のボルト(電池を発明したボルタに因んだネーミング)とは,電気的な落差(ポテンシャル)のことです。「落差」とは言っても目に見えず,物差しで計れませんので,エネルギーを使って決めます。

力学的な落差は,物差しで計れるため[m]ですが,目に見えない電気的な落差[V]はどう決めたら良いでしょうか?もし力学的な落差が物差しで計れないとすると,どう決めるか?高いものほど位置エネルギーが増えるはずですから,エネルギーを使うのが一番便利そうです。「1kgの質量が9.8Jの位置エネルギー*を得る落差を1mとする」と決めても良いはずです。

もともと物差しのない電気の落差「電圧[V]」の決め方はこれです。
「1Cの電荷が1Jの電気的エネルギーを得る電気的高さを1Vとする」
というものです。すなわち,1Vとは1J/Cということになります。


一方,電流アンペア[A]はSI単位系では基本単位として使われていますが,元来は組み立て単位で,電流を研究したアンペールにちなんでつけられました。現在の電流[A]は力で定義されていますが,電荷クーロン[C]を使えば電流[A]の定義は[C/s]です。1s間にどれだけの電気量[C]が流れるかという量です。


電圧[V]と電流[A]のなりたちが分かれば,両者の積は,単位だけを考えれば,

[V]×[A] → [J/C]×[C/s] → [J/s] → [W] 

となって即納得できるはずです。


しかしながら,電気は目に見えないためか理解されにくようですので,目に見えるものに例えます。例えば水流です。落差*は[m]で表されますし,水流(流量)は[kg/s]で表されます。質量m[kg]にかかる重力はf=mg[N]ですから,水流が単位時間あたりに発生する力は[N/s]となります。

電圧と電流の場合と同じ様に単位だけ考えて,水流の持つ単位時間あたりの力[N/s]を落差[m]と掛け算すると,

[N・m/s] → [J/s] → [W] 

となります。


ちなみに,2つの量を掛け算するとエネルギー[J]関連になる量の組み合わせはいろいろあります。

例えば圧力[Pa]と体積[m3]を掛け算しますと,
[Pa] × [m3] → [N/m2] × [N m]→ [J] 

とエネルギー[J]になります。これはいわばぎゅっと圧縮された圧力[Pa]と体積[m3]を持つ気体の持つエネルギーです。コンプレッサーで圧縮した空気で色んな作業ができるわけです。

また,磁界[A/m]と磁束密度[T]を掛け算しますと,
[A/m] × [T] → [A/m] × [Wb/m2] → [A/m] × [V・s/m2] → [J/m3] 

これは磁性体の持つ単位体積あたりの磁気エネルギーということになります。永久磁石なら磁石の強さ(と消えにくさ)になりますし,電磁石のコアならば電力損失になります***。


*辻褄を合わせるため地球上の重力加速度9.8m/s2が入ります。
**実務計算では水の持つ速度や圧力を位置に換算した水頭[m]という量を使いますが,ここでは原理を述べるため単に落差[m]とします。
***単位はすべて[ ]内で表しますが,数値に付ける場合は[ ]を付ません。
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