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ポンセのソナティナ〜その1〜 [曲目]

従前「南のソナチネ」とされて来た曲です。

現在,ポンセの原典版「ソナティナ」に取り組んでいます。

従前は,セゴビア版による「南のソナチネ(Sonatina Meridional)」が標準版の様に使われていました。現在であってもこれが標準版かもしれません。

3つの楽章からなるソナチネです。「ソナチネ」とは小規模のソナタの呼称ですが,単なる「ソナタ」とか「ソナチネ」ではツマラナイという意見も少なくありません。ソルの練習曲でも単に作品番号ではなく「月光」とか「夢」とかの愛称のほうが通りが良かったりします。

これは,クラシック音楽の共通の現象の様です。ショパンのプレリュード集にしても特定の個別人気曲には愛称がついていますし,ベートーベンの特に人気曲には愛称がついています。


稀代のエンターテナーであったセゴビアが,その辺を見逃すわけがありません。単なる楽式名では無味乾燥と捉えるファンも多いので,作曲者のポンセと相談したのかどうか分かりませんが,「南のソナチネ」として演奏したこの曲も,ポンセのギター曲の中では人気曲になりました。

ポンセに限らず,カステルヌオーヴォ=テデスコにしろ,タンスマンにしろ,セゴビアの演奏で作品が大いに売れたら,文句を言う筋合いもありません。大家の注文に応じて作曲しますし,多少の改作に関して演奏効果の面で優れていれば,それはそれで良しとも思う反面,クリエータとしての気持ちからしたら必要以上に変えられるのは決して良い気分ではなかったとも思えます。作曲意図とは異なる解釈で変えられて,それで人気が出るというのも内心忸怩たるものがあったのではないでしょうか。


当方もかつてセゴビア版で演奏しました。大家の演奏や改作は歴史的価値として尊重するとしても,作曲家の真意も見てみたいというのも率直なところです。料理人の料理の腕に従ってみるのも一興なら,素材の良さを活かしてみようという試みも当然あっていいでしょう。セゴビア版のみの曲は致し方ありませんが,この曲は原典版が出ています。ポンセの手書譜も残っており,きちんと対応していることを確認しました。

Guitar Works: Urtext Edition

Guitar Works: Urtext Edition

  • 出版社/メーカー: Schott & Co Ltd
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: ペーパーバック
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ポンセの手書譜(M. Alcasarの"Obra completa para guitarra de Manuel M. Ponce, De acuerdo a los manuscritos originales"より。)

まずタイトルが,「南のソナチネ」ではなく,単に"Sonatina"です。
それから,各楽章にも名前がついています。が,オリジナルでは単にI,II,IIIです。

この曲は明らかにスペイン風なソナチネですが,名称を付けることで分かりやすくイメージが湧きやすく人気を得やすい効用はあるでしょう。しかし,わざわざタイトルを付けなくても,「曲を聴けば分かるだろう。」とも言えます。作曲者の意図通り,単に楽式名のソナティナとしておくと言うのも一つの見識でしょう。

「南のソナチネ」の第1楽章には"Campo(平原)",第2楽章には"Copla(唄)",第3楽章には"Fiesta(祭)"の副題がついています。「確かにそんな感じ」とイメージが湧きやすい反面,作曲家がそう描いたかどうか分からないそのイメージに曲が固定されてしまう弊害があるとも言えます。

曲の中身については,引き続き続報で見て行きます。
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