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音楽の基礎 [雑感]

芥川也寸志の同名の著書には,冒頭,音楽の基礎は静寂であるとあります。

確かに,音楽は静寂に始まり静寂に終わります。

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静寂が無色のキャンバスだとすれば,次に言及されるのが絵具たる音です。倍音構造など,音響的な話です。そこで倍音に関しても独特な例えをします。

倍音は,昼は見えない星の様なもの。基音たる太陽の光が強いので微弱な光を放つ星々は見えないと。
確かに,その例えでいけば,ハーモニクス奏法は夜空を表すことになるはずです。

こんな事を書いていると,あくびをしだす人がいそうですので,もう少し音楽らしいことろに進みます。


「ポーン」と,1つの音だけでは音楽になりません。

「ポン,ポン」と2つの音で脈動・リズムが出てきますが,またそれを繰り返すのか,あるいは3拍子もしくは4拍子になるのか確定しません。

それらの拍子を2回行って拍子が確定するため,2小節が最小単位です。これを動機(モティーフ)と言います。


やはり,睡眠しだす人がいそうです。「そんな事ギターの演奏に何の関係があるのだ?」と。大ありです。

演奏の音質や弾き方は最初の1音で分かりますが,音楽の成り立ちの基本である「拍子」は,2小節行ったころで分かるわけです。

素人のバッハ演奏などで時々あるのが,まったく拍子を感じさせない延々と続く1拍子の演奏。むろん,演奏技術的には難しいので,弾けるだけでも大したものだとは思います。かなりの練習を積みそれなりの努力をした演奏のはずですし,その曲がお好きで,よほど練習熱心でなければできないことです。しかしながらそれは,音楽の最も原初的な基礎である「リズム」「拍節」を踏まえていない演奏という事になり,いくら高度な技術であっても,音楽とは言いにくく,少なくとも作曲家が意図した音楽ではありません。


普通にいうところの「音楽の基礎」は,「リズム,メロディ,ハーモニー」です。まあそれは古典派以降の音楽の基礎であり,バッハの音楽などのバロック期の音楽はメロディとハーモニーというよりもいくつかの声部(メロディ)自体が絡み合うポリフォニーになっています。それはそれとして,リズムの方はもっと原初的なものです。

人類がこの世に出現したころから,リズムに関しては,身の回りのものを叩いたり,手を打ったり,歩いたり,心臓脈拍の鼓動に息づかいがあります。

いくら美しい複雑な音響を出していても,このリズムが自然でないと聞きづらいものになります。リズムは五線譜で最も表しにくいものと言われますが,それは細かなニュアンスの事であって,素人の演奏などにおいては,まず五線譜で表された拍子をきちんと表現できるかどうかは基本でしょう。


その上での,リズムパターンです。
フラメンコの場合はコンパスと称する時計の文字盤の様な12拍を基本にするのだそうです。スペイン音楽独特な混合拍子は,そこから発生しているのだと思いますが,当方は分からないので,一般の音楽の基本で考えます。


基本は,2拍子系と,3拍子系でしょう。2小節で動機を形成して,音楽の心地良い脈動が始まります。
ポップスではなぜか4拍子系が非常に多いですが,2拍子系(2拍子+2拍子)と考えていいでしょう。5拍子は2拍子と3拍子の複合です。いずれにせよポップスではリズムパターンはドラムスで刻むことが多いので,強制的(矯正的?)に合わせられます。いずれにしてもポップスではリズムの「のり」が非常に重要なのではないでしょうか。


クラシック音楽ではどうかと言えば,オケの様に規模の大きい合奏なら指揮者がいます。
独奏はどうかといえば,自らが指揮者であり演奏者でなければならないのです。クラシックギターでは,ギター一本の独奏でメロディに伴奏にリズムまでを表現します。技術が難しいので,ついつい拍節感のない演奏(指揮者のいない演奏)になりがちです。むろん,独奏は自分自身でやるため,ある程度自由度はありますが,でたらめな指揮で良いわけがありません。楽譜を音にするだけの拍節感の無い演奏では,いくら音符を上手に音にしていても,生きた音楽とはなりません。rit. フェルマータ,テンポルバートと言った,速度の変化によっても拍節が変わるものではありません。例えば3拍子の曲をrit.して4拍子になるわけはないのですが,拍節を無視した速度変化だとそういう現象が起きてしまいます。音楽の基礎の重要さが普段の何気ない演奏にも顔を出してきます。


故・坂本龍一が,2010年4月から放映されたNHKの番組「音楽の学校」を担当した時,子供たちにリズムを体感させるために,歩かせるなどをしていた記憶があります。一見つまらない実習でしたが,拍節の重要さを体感させる重要な実習だったと記憶します。
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よしあき・ギャラリー

何を今更ですが、絵に通ずるところがやはりあるのですね。
by よしあき・ギャラリー (2023-06-27 16:51) 

Enrique

よしあき・ギャラリーさん,
たしかに共通点は有りかと思います。また,比較する事で種々気がつくこともあるかと思います。
by Enrique (2023-07-01 08:17) 

はなこ

まさに私の最大の弱点を指摘されてしまいました
本当に悲しいほどのリズム音痴です
さらに基礎を学んでいないので、そのリズム感をカバンできないという〜
学ぼうという努力も希薄で、そうしたことが、上達を思いっきり妨げているとわかっているんですけどね〜

ちなみに私、リズム音痴のくせにフラメンコ経験者です
12拍目から始まる独特のリズムにはとても苦労しました
1番よく出てくるのは
12.1.2
3.4.5
6.7
8.9.10.11
というリズムでしょうか
少なくとも私はそのリズムから最初の振り付けを教わりました

12拍目から始まっていたはずなのに、気がついたら1拍目始まる盆踊りの頭打ちになっていた、という劣等生です
by はなこ (2023-07-17 02:01) 

Enrique

はなこさん,
ご自分で気がついているという事は改善の余地が大ありですし,むしろそんなひどいこともないと思います。
夢中でやっていると盆踊り風のリズムになってしまうのは,各国人が特有のリズムになる様に,体に染み付いているからでしょう。フラメンコは興味はありますが難しそうで私には全くわかりません。
のりは別としてクラシック音楽は一拍目のアクセントが基本ですからそう違和感はないと思いますので,しっかり意識さえしていれば大丈夫だと思います。難しいギター独奏の練習に比べたらむしろ楽なことだと思います。
by Enrique (2023-07-17 05:48) 

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