SSブログ

AIの影響について [雑感]

新しい技術が出てくると,大いに騒がれます。

否,さして新しい技術ではなくても,一般に広く普及することの方が社会にはインパクトが大きい様です。

EnriqueAutographSmall.png
5年前にこんな記事「具体と抽象の曖昧化」を書いていました。

ITの普及でもそうでした。それからWindows95の発売騒ぎ。「パソコン操作がGUI(絵のアイコンで操作)になると。Macでは84年からそれだったのに11年も後発のものに何故大騒ぎするのか不思議で仕方がなかったのですが,それが人間社会というものです。大衆の嗜好(思考?)を読むのがうまい人がビジネスに成功します。きっとビル・ゲイツがパソコンやWindowsを発明したと思い込んでいる人も少なく無いのでしょう。


ChatGPTなるAIアプリを開発したOpenAI社をMSが買収したという話を聞いて,すぐに思い出したのが同社(ビル・ゲイツ)がWindowsの元となるMS-DOSを開発した際の経緯です。"MS"-DOSというものの,SCP社(シアトル・コンピュータ・プロダクツ)のティム・パターソンが開発した86-DOSでした(MS社は同社のティム・パターソンを引き抜いてMS-DOSに仕上げさせました)。1980年ごろ8bit機の世界ではデジタルリサーチ社のCP/Mというものが主流でした。MS-DOSのコマンド操作などはCP/Mにそっくりなところがあります。これが真似で無かったとしたら嘘でしょう。

DOS/Vマシン創案のIBM社が,載せるOSにMS-DOSを採用したのが,ビル・ゲイツの「わらしべ長者」の始まりでした。
MS社は,MS-DOSといういわば真似の真似でしたが,巨人IBMのDOS/Vマシン用に採用されたのですから,誰も文句は言えません。後にSCP社は,MS社がIBMとの契約を伏せて86-DOSを5万ドルという安値で買い取ったのは不当だとして,それでぼろ儲けをしたMS社を訴えましたが,すっかり大企業に成長していたMS社にとっては痛くも痒くもなく,100万ドルで和解したとの事でした。


もの真似をするのは,心ある技術者の最も嫌うところですが,ビジネス面では大いに好まれます。むしろ「独自で無い」方が操作もソフトの移植も容易で普及に都合が良いわけです。我が国のNECのPC98もMS-DOSを採用しました。むろん同社も,PC用の(もっと良い)OSを自社開発できる技術力は十二分にあったわけですが,あえてMS-DOSを選んだのは,とある苦い経験があったからだという事でした。

8ビットの時代,たしか同社がi8080のCPUの内部バグを修正した互換CPUを出したところ,その上で動くソフトの互換性が無くなってしまい逆に品質問題になってしまったと。おかしかろうが何だろうが,デファクト・スタンダードになった方が勝ちだというのは,その辺から始まったのでしょう。

その教訓を生かした為か,MS-DOSを採用したPC98は一時期国民機と言われるほど国内で普及しました。同業他社の口の悪い人が,「(98)パソコンが田町のビルになった」と言っていたのを思い出します。

新技術ではない互換路線のほうがビジネスとしては成功します。しかし,長い目で見た技術の進歩になっているかどうかには疑問もあります。市場を独占してしまって,他社のもっと優れたものを締め出してしまう恐れがあるからです。


歴史は繰り返します。卑近な一例をあげれば,MS-Wordではどれだけ時間の無駄をさせられた事でしょう?当方はMacを使っていた為,ワープロソフトには,Solo WriterやWord Perfectを使っていましたが,周りがMS-Wordにばかりになってくると使わざるを得なくなります。後発の使いにくいバグだらけのソフトは退化としか言いようがありません。

AIに関しては,現在第3次ブームだと言われています。1980年ころの第2次ブーム時の記憶では,人間の経験知がエキスパートシステムにとって代わられて,熟練技術者が無用になってしまうのではないか?と危惧されたものです。

現在は80年代とは技術基盤が全く異なります。パソコンが著しく進化して一般人に普及し,インターネットの時代になり,ネットの活用にパソコンすら必要なくなりかけています。現在の第3次ブームのディープラーニングという技術が重要です。ChatGPTなるもの,AI技術が,研究者だけのものではなく,一般人にも使いこなせるレベルまでユーザー・インターフェースが改善されているというのがヒットの理由のようで,特に技術的新規性は無いとのことですが,上で述べた様に,新技術の普及とはそんなものでしょう。一般に普及することの方が重要です。それにより良くも悪くも社会は変わります。


当方はまだ使っていませんが,むしろうまく使いこなせば良いと思います。
Google検索などが出て来た当初は,覚えることはなくなったと言われ,何も物知りでなくても検索すれば出てくるので,無用な知識を多く持つ必要性は減りました。しかし,日常化したネット検索だって,それで何でも知り得てしまうというものでもありません。調べ物をして,自分のブログが出てくると言ったことも少なくありません。

ネット検索を使うにしてもコツや知識が必要で,必要な知識にたどり着けるかどうかは個人のスキルが必要です。むろんAIを使えば,検索のコツや知識の必要性が大幅に下がりそうです。現代のAI技術を会話的に使うことができるというのは,社会には大いにインパクトのあることでしょうから,その負の側面を危惧する声をあります。新しい技術やサービスには悪用という問題がつきものです。私はその悪用と善用の区別も曖昧になるのでは無いかと思います。

現在入学試験等でスマホを使えば不正でアウトです。しかし,検索程度で不都合が出る試験問題の方が悪いのではないかと思います(むろん誰かに聞いたりしたら不正です)。数学や物理の計算が検索でできるわけがありません。しかし,AIを活用すれば,簡単な計算やプログラミングもできるようです。


入学試験や学校で行われる試験が,ネット検索で解けてしまうというのも困ったものですが,計算やプログラミングもAIでできてしまうというのも問題です。しかしそれは,AIの問題ではなく,試験問題の方の問題でしょう。AIでできてしまう事を生身の人間に課してその出来具合を問うてどんな意味があるというのでしょう?当面は悪用の取締りも必要でしょうが,AIの普及にも対応できる様,物事の根本への理解を深めるとか,むしろ,使いこなせるスキルの方が重要になるのではないでしょうか。当方は,悪用よりも誤用を危惧します。


当然万能ではありません。あくまでツールです。
NHKのニュースだったかで「AIを使ってアナウンスしています。」というのがありました。ニュースを間違わず正確に伝えるなら,むしろ人間がやらない方が良いでしょう。

一方,AIの方が強いからと言って人間の指す将棋は無くなりません。
人間がやる対戦だからです。むろんAIソフトを使って研究はなされているのでしょう。

体を鍛えて,重機と相撲をとろうという人はいません。相撲は人間の土俵でやるものです。人間がやる作業は重機を操作したり(AIでの自動運転技術は入ってくるでしょうが),重機でできないところをやるわけです。

絵画はかなりのものが描けるととのことです。電子画面ならコンピュータ上のAIは得意でしょう。ロボットで物理的なペインティングをさせることもできるでしょう。AIの土俵で勝負すれば人間は叶うわけがありません。


AIというツールをうまく使いこなすことが必須になれば,ツールは使いやすさが重要です。ビジネス戦略のために,例のソフトを買収した同社が従来やって来た様に,使いにくくされない様監視が必要です。

事務仕事などの多くがなくなるのでは無いか?とか危惧されます。
むしろ無駄な仕事は省いた方が良いと思います。しかし誰が無駄と判断するのでしょう?一般人には新技術の中身は殆ど分からなくなっています。ガリバー企業を無批判に信用して,訳分からずその企業が扱うAIソフトに任せるという事こそ大いに危険な事です。
nice!(36)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 36

コメント 2

上山完

最近の家電はちょっと前なら「マイコン(制御)」といった程度のことでも「AI」と謳っていたりします。
ただのはやり言葉だと思っています。以前は「ファジー」とか「1/f」なんていうのもありました。
確かに技術は進んでいるのでしょうが、仕組みがわからない人にとっては、ただのキャッチーな言葉としての意味しかないです。
どんどんブラックボックスが大きくなって、崇拝する人が増えてくるのが心配です。作っている側の思惑というものが必ずあるのですが。

by 上山完 (2023-04-07 10:34) 

Enrique

上山完さん,
おっしゃる様に家電などの搭載技術としては流行り言葉のようです。
「ジンクピリチオン語」の一種として使われている嫌いはあります。
ブラックボックスでも入力と出力との関連がきちんとわかっているうちは良いのですが,訳わからず信じ込むのが心配です。崇拝者には何を言っても無駄なところがあります。それをビジネス・ネタにする企業。むしろそこを監視すべきなのですが,本来監視する側が飲み込まれてしまって片棒かつがないかその辺が心配なところです。
by Enrique (2023-04-08 06:41) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。