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変換ミス [雑感]

駄文であれ,長年したためていますと,漢字かなづかいで気になる事が出て来ます。

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発音が同じで意味が変わるものが多くあります。手書きだと間違わない様な変換ミスと思われるものを時々見ます。

以前も挙げました。驚異と脅威とか,聞くと聴くとか,開放と解放とか,展開と転回とか。
基板と基盤はどう違うのだ?と不思議な質問をしている人がいます。

基板は具体的なモノであり,基盤に具体的なモノの意味は無く抽象名詞です。具体名詞と抽象名詞を取り違えるというのは,いわば「医師」と「意志」を間違う様なもので,あり得ないと思うのです。敢えて好意的に見ると,配電盤とか旋盤とかの「盤」との混同なのかも知れません。しかし,盤はかなりゴツいモノを指しており,薄い回路基板が「盤」になるとは思えません。もともと基板という言葉があるのに,全く違う意味の別の抽象名詞を誤用するのがナゾですが,まあ単純に変換間違いに気付いていない人が多いだけなのでしょう。


たまに見るのが,「優しい」と「易しい」の取り違え。「優しい曲」であっても「易しい曲」とは限りませんが,恐らくは後者の意味で誤変換して前者を使ってしまうのでしょう。

「意外」と「以外」とは全く意味が異なる単純ミスです。かな漢字変換システムが真っ当なら起こり得なさそうではあります。
「速い」と「早い」。当然時間あたりの進みの速さと時期的な早さとでは意味が違います。
「暑い・熱い・厚い・篤い」最初の2つは似ていますが,当然意味が違います。厚みが厚い薄い,濃度が濃い薄い,太い細い。厚いと薄いは,英語でthickとthinですが,英語では太い細いにも使います。

「硬い・堅い・固い・難い」硬いは石や金属などのカチンコチンというイメージです。物理的に硬質なものです。「決意」などの物理的でないもののかたさには使いません。こちらは固いか堅いでしょう。堅いは堅牢だということです。丈夫という意味もありそうです。硬いのは必ずしも丈夫ではありません。硬くて脆いこともあります。堅固という語もありますから,堅と固は意味は少し異なるのでしょう。堅は丈夫なイメージがあります。固は固めたイメージです。

  「柔らかい・軟らかい」柔軟とも言いますが,柔はしなやかなイメージ,軟は軟弱なイメージです。「柔よく剛を制す」,「硬軟とりまぜ」とか言います。同・類義語や対義語を考えてみるのも間違いを防ぐ一つの手立てでしょう。

「時期」と「次期」,これは当然別物。
「季」と「期」は季節と時期の違いです。どちらも意味的には大差ないですが,正式にどちらを採用しているのかでしょう。学校などの「夏季休暇」は正で「夏期休暇」は誤です。


間違いではなく,正しいとされているものでも,キライなものもあります。
当用漢字では許されていても,当方は嫌いなので使わないものとしては,

「高根の花」は,本来の「高嶺の花」であって欲しいです。「嶺」が当用漢字に無いので当てたものでしょうが,「高根」では違和感あります。

殿様が沈むのはおかしいので,「沈殿」ではなく「沈澱」ですが,教科書には沈殿となっています。なぜか「澱粉」は,「殿粉」とは書きません。統一すれば良いと思うのですが。

日食ではなく日蝕。障害ではなく障碍。漢字は音だけではなく意味を持つのが重要で強力なところです。あまりに煩雑になるのは避けないといけませんが,本来の意味を伝えた方が良いと思います。当て字を使うくらいならば,ひらがなの方がマシではないでしょうか。

やはり以前も挙げましたが,
「〜にも関わらず」という表記が多くてうんざりします。これは「〜にも拘らず」のはずです。これは逆接表現ですから,関わるとか関わらないという意味ではありません。「関わる」とは,「関連する」とか「関係する」という意味ですから,「関わらず」というのは,とある条件には「関係なく」という意味で,本来の逆接表現とは異なります。

「関わる・関わらない」という関係の有無と,「〜にもかかわらず」という逆接のみの表現,違う意味に同じ漢字を使うのはおかしいので,私は使いません。これも変換ミスの一種だと思います。
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ロートレー

勉強になります!
以前、Enriqueさんの理論解説記事で、○○器と○○機の違いについて説明されているのを読んで、なるほどと永年の疑問が氷解したのをおもい出しました。
ところで、「長年」でしたっけ?^^
by ロートレー (2022-08-21 06:55) 

Enrique

ロートレーさん,
そうですね。「長い」と「永い」の違いもありますね。
元の意味は結構違いそうですが,年月になると,意味が重なって来るのだと思います。

「長年」,「永年」どちらもありです。「長い年月」と「永い年月」どちらもありです。「長い時間」といいますが,「永い時間」は怪しくなって来ます。長時間とは言いますが,永時間とは言いません。

私の解釈ですが,「長い」は物理的寸法にも時間の長さにも使いますが,「永い」は年月のみです。具体的イメージのつく長さは「長い」,ぼやっとした長期間は「永い」だと思います。

何十年とかイメージがつく長さなら長年,はっきりしない無限の様な長さなら永年だと思います。
by Enrique (2022-08-21 07:38) 

アヨアン・イゴカー

熟語の場合は、漢字を使うので同音異義があるのはやむをえませんが、逆に一つの大和言葉に対してその使われる意味によって漢字を使い分けたということが分かるのも大変興味深いです。
「やさしい」、という言葉も古語では「優(やさ)し」「易(やす)し」と別の言葉だったものが、現代語では「やさしい」一つに、同様に「易し」「安し」となっていたものは「やすい」などにまとまったように見えます。
根幹となる基礎語(日本であれば大和言葉)は、発展して多くの意味を持つようになっていますが、英語でも同じようなことが見られるのは、興味深いです。

by アヨアン・イゴカー (2022-08-21 14:48) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
思いつきの記事でした。
おっしゃる様に漢語と和語は分けて考えないといけませんね。元は意味も発音も異なるのに,たまたま同じ発音になって誤用してしまう。言葉の成り立ちにも留意していれば,変な間違いもしなくて済むと思います。
by Enrique (2022-08-22 05:20) 

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