吉野杉が弦楽器の響板に好適? [楽器音響]
別件で文献検索をしていましたら,たまたまそんな論文が見つかりました。
書誌事項は,以下の通りです。
Katuhiro Maki, Maiko Ariyama, "Analysis of vibration characteristics of Japanese cedar from Nara Prefecture for string instruments", Acoustical Science and Technology, 41, No.2, pp.481-488 (2020).
日本音響学会が出している英文誌のようです。
研究過程では和文のものもあったのかもしれませんが,何分当方そちらの学会員でもないですし,楽器音響は趣味の範疇ですので,ウォッチはしていませんでした。
普通の日本の杉材は楽器にはあまり向いていなさそうです。しかし,吉野杉は良さそうなんだそうです。日本各地の普通の杉は木目が無茶苦茶粗すぎです。そこへ行くと吉野杉は密集して植えるため,細く真っ直ぐ育って木目がつまっているから良いようです。
人工林で再生産しているわけですから,SGD'sにも敵います。
それはそうと肝心の音響特性ですが,性能指標の一つは密度あたりの弾性率です。当然重い材は弾性率も上がりますし,軽い材の弾性率は下がります。密度あたりの弾性率の数字ですと,軽くてよく振動するという指標になります。この値が高いほど,また損失係数tanδは小さいほど鳴りやすいと言えます。
下図は,同論文に現れる,密度あたりの弾性率E/ρを横軸,損失係数tanδを縦軸にして,各種木材の特性をプロットしたものです。
興味深いのは,吉野杉はスプルースとセダー(米杉)の間くらいの特性だという事です。
たしかイタリアのAndrea Tacchi氏はトップ材にスプルースとセダーの組み合わせた楽器を作っていました。スリーピースで,中央部はスプルースで,両端部がセダーの楽器です。
誰の楽器だったか忘れましたが,ダブルトップの表面と裏面をやはりスプルースとセダーで組み合わせている楽器がありました。
吉野杉の表面板への活用は,特にギターと言う想定ではなく,弦楽器一般向けの様で,既に同一の第一著者により,ヴァイオリンの表面板としてタップテストしてみたという以下の論文も出ています。
Katuhiro Maki, Eriko Aiba, Satoshi Obata, "Characterizing violin top plate using sounds generated by local taps", Acoustical Science and Technology, Vol.43, No.2, p.87(2022)
書誌事項は,以下の通りです。
Katuhiro Maki, Maiko Ariyama, "Analysis of vibration characteristics of Japanese cedar from Nara Prefecture for string instruments", Acoustical Science and Technology, 41, No.2, pp.481-488 (2020).
日本音響学会が出している英文誌のようです。
研究過程では和文のものもあったのかもしれませんが,何分当方そちらの学会員でもないですし,楽器音響は趣味の範疇ですので,ウォッチはしていませんでした。
普通の日本の杉材は楽器にはあまり向いていなさそうです。しかし,吉野杉は良さそうなんだそうです。日本各地の普通の杉は木目が無茶苦茶粗すぎです。そこへ行くと吉野杉は密集して植えるため,細く真っ直ぐ育って木目がつまっているから良いようです。
人工林で再生産しているわけですから,SGD'sにも敵います。
それはそうと肝心の音響特性ですが,性能指標の一つは密度あたりの弾性率です。当然重い材は弾性率も上がりますし,軽い材の弾性率は下がります。密度あたりの弾性率の数字ですと,軽くてよく振動するという指標になります。この値が高いほど,また損失係数tanδは小さいほど鳴りやすいと言えます。
下図は,同論文に現れる,密度あたりの弾性率E/ρを横軸,損失係数tanδを縦軸にして,各種木材の特性をプロットしたものです。
興味深いのは,吉野杉はスプルースとセダー(米杉)の間くらいの特性だという事です。
たしかイタリアのAndrea Tacchi氏はトップ材にスプルースとセダーの組み合わせた楽器を作っていました。スリーピースで,中央部はスプルースで,両端部がセダーの楽器です。
誰の楽器だったか忘れましたが,ダブルトップの表面と裏面をやはりスプルースとセダーで組み合わせている楽器がありました。
吉野杉の表面板への活用は,特にギターと言う想定ではなく,弦楽器一般向けの様で,既に同一の第一著者により,ヴァイオリンの表面板としてタップテストしてみたという以下の論文も出ています。
Katuhiro Maki, Eriko Aiba, Satoshi Obata, "Characterizing violin top plate using sounds generated by local taps", Acoustical Science and Technology, Vol.43, No.2, p.87(2022)
2022-07-12 00:00
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コメント(4)
はじめまして。時々ブログを読ませていただいておりますギターファンです。
奈良の丸山利仁さんが吉野杉のギターを製作なさってるようです。丸山氏のブログを訪ねてみてください。
http://craftm.blog.fc2.com/blog-entry-1432.html
by TOYO (2022-07-12 01:14)
TOYOさん,
有益な情報をありがとうございます。
拝見して来ました。
あの目の詰まりならば十分表面板としていけそうです。紹介されている材そのものはグリーン材ですので,楽器にするためには数年以上のシーズニングは必要でしょうが,氏は既に材を使って製作されていますので,別途乾燥材をお持ちだったのでしょう。
あと鋸製材した板材も良く目は通っていますが,材質の特性を最大限に生かすためには割裂材も欲しいものです。
by Enrique (2022-07-12 07:06)
興味深いです。
by よしあき・ギャラリー (2022-07-13 05:38)
よしあき・ギャラリーさん,
従来は西洋の材を使うのが普通だったのですが。
by Enrique (2022-07-14 09:06)