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大容量タービン発電機の冷却について [科学と技術一般]

大容量の汽力発電では,大型化する発電機の冷却には特別の注意が払われます。

昔から,発電機内部は水素冷却という手法がとられていました(図1は水素ガスの系統図を示す)。これは空気よりも比熱の大きい水素ガスを密閉した発電機の外箱内に充てんすることで,冷却効率を上げ,しかも水素ガスは空気よりも密度・粘性が低いため空気抵抗による風損が減る事などメリットが大きいためです。大型化する発電機を少しでも小型化するメリットもあります。

冷却を要する発熱自体は,電力に変換できない無効エネルギーですが冷却をしないと効率が下がり更に発熱量が増えるという悪循環に陥ることや,装置の耐久性から冷却は必須であり,効率の良い冷却方法が検討される事になります。

水素冷却の問題点は,水素の空気との混合による爆発の危険性です。発電機外箱内の水素が漏れ出る事,空気が流入することを極力防ぐシールが特に軸受け部などで重要です。また常に温度・圧力・濃度などのモニターを行い,漏れに対する対策として例えば水素濃度が90%を下回ると警報を鳴らしたり,発電機の外箱を万一の爆発の内圧にも耐えられる様設計するなどの対策が取られます。

また,固定子(通常は電機子巻線)には水冷が用いられますが,そのメリットとしては,空気や水素のガス状の媒体による冷却よりも,液体であり比熱・熱容量が大きく媒体の冷却効率が格段に高いことが挙げられます。空気の熱伝達能力を1としたとき,圧力2~3気圧の水素で3~4,変圧器油で21,水で50程度です。また冷却効率を上げるために,導体を直接冷却するなどの方法も取られます。

水素冷却発電機.png
図1 水素冷却発電機の水素ガス系統図(電気学会編「発変電工学(改訂版)」より引用)

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