SSブログ

世界の電気の電圧,プラグ,周波数 [科学と技術一般]

日本では家庭用の電気の電圧は100Vですが,周波数は関東関西で50Hzと60Hzに分かれているのはご承知の通りだと思います。今春これに関しての記事を書きました。同一国内で電力の周波数が異なるのは日本だけですが,では世界中の国々ではどうなっているのでしょうか?

トンボの脳に関する研究やワクチンの接種デバイスに関する記事を紹介したところですが,同じくIEEE Spectrum 7月号に世界中の電源電圧や周波数,電気プラグに関する記事が載っていました。むろんカヴァー・ストーリーになるようなメイン記事ではなく,"Crosstalk"というコーナーの記事です。直訳すれば「漏話」という専門用語ですが,意味的には「こぼれ話」くらいの見開きの記事です。

Winston Struye/StoryTK
ここで示されている世界地図では,日本は100V/50Hz系の水色一色にしか見えませんが,実際には関西は濃いブルーになるはずです。出典のInternational Electrotechnical Commissionのものがそうなっているのでしょう。これに関する日本の特殊性には記事内でも触れられており,明治時代に発送配電設備を導入した際に東京電燈がドイツのAEGから50Hzの設備を,一方大阪電燈がアメリカのGEから60Hzの設備を入れたことが禍して現在も東西で分かれてしまったことが触れられています。電力に関して言えば,日本は分断国家です。もう少し調べてみると,日本初の東京電燈は当初直流200Vで商用送配電を開始したものの,直ぐに大電力の送配電に向いた交流の発変送配電に切り替えますが,既に大阪電燈で導入されていたアメリカ製の60Hz設備ではなく,ドイツ製の50Hz設備を導入したことが,今日まで続く電力分断国家の元凶になっています*。

今日では,パワー・エレクトロニクスで何とか凌いでいますが,本当は大変困ったところです。電圧の上げ下げは簡単に出来ますが,周波数が異なると電力の性質は全く変わってしまうので繋げられません。1Hz違ってもダメですし,もっと言えば周波数が同一であっても電力連系**するにはぴったり同期させないといけないので,かなり大変です。発電所が数百kmも離れていると「ねじれ」と称する位相ずれを発生するので同一系統には出来ません。合奏でソーシャル・ディスタンスをとると合わせにくくなるのと似たようなものです。ましてや周波数が異なるというのは電力連系においては致命的です。ヨーロッパでは国境を越えて電力融通できますが,日本国内では東西でそれが不自由なのです。

電圧に関しては100-127Vのグループと220-240Vのグループで2種類です。上で述べたように電圧は自由に上げ下げできますから,大した問題ではありません。問題の周波数は50Hzと60Hzの2種類です。ユーラシア大陸系が50Hzで,北米系が60Hzです。ワールド・ワイドには,電圧と周波数の組み合わせで4通りほどの規格があるということです。

電圧と周波数の違いに加え,プラグ形状は15種類あります。

Winston Struye/StoryTK
コロナ禍で海外旅行もままならないところではありますが,日本国内で使っていた電気機器を海外に持ち込むにはプラグの変換が必要です。

ちなみにモルジブという小さな国では,プラグ形状が6種類使われているのだそうです。きっとあちこちの国から導入されたからなのでしょう。

*さらに言えば,大阪電燈では125Hzの発送電を行ったこともあり,東西でそれぞれで交流50Hzと60Hzに落ち着くにもさらに細かな経緯はあったようです。
**電力用語では連携ではなく連系です。
nice!(34)  コメント(4) 
共通テーマ:音楽

nice! 34

コメント 4

よーちゃん

ほほう。
はるか昔に、アメリカ製とドイツ製による違いで、
そんな事になったのですね!
プラグ形状も今は国様々なのが、この図でよくわかります。
日本のプラグでも、プラグ周りがアダプターで
でっかくなってるのがありますよねー。
電源タップに刺す時、左右が干渉して、
せっかくの口数が使えないのが腹立たしいです(^_^;)
by よーちゃん (2021-09-02 08:08) 

Enrique

よーちゃんさん,
あちこちに規格争いがあってこう言う事になっています(他所のものは使いたくないという)。日本は世界的に最も電圧が低い(安全性は高いですがやや効率悪い)上に東西で周波数が異なると,電力環境はあまり良くありません。現在日本は電力プラントを製造輸出する側ですので,どちらも国内で試せるのは唯一メリットでしょうか。

アダプターが干渉というのはたぶんスマホの充電器などの事だろうと思います。たいがい直流5VのUSBのコネクタが割と一般的だろうと思いますが,USBのコネクタ形状も何通りかありますね。
by Enrique (2021-09-02 09:27) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

私の約35年前に買った現用のトーレンスは、店頭展示品だったので何故か付属品の60Hz用のプーリーが入っていませんでした。実際にはもうあり得ませんが、もし関西方面に引っ越す事になれば、中古の60Hz用プーリーを探し求めるか、インバーターを使うしかありません。我が家で唯一の50Hz/60Hz供用が直ぐにできない電気製品です。(^^;


by たこやきおやじ (2021-09-02 12:07) 

Enrique

たこやきおやじさん,
交流モーターの回転数が変わってしまうのは一番切実な問題ですね。インバータで周波数変換行わない限り避けて通れない事です。
そちらの製品の時代はインバータは一般的では無かったでしょうから機械的に対応するのが良さそうです。古い感覚ではオーディオ製品にパワー・スイッチング機器を使うのは,嫌な感じはします。
by Enrique (2021-09-03 02:53) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。