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減速機構について [楽器音響]

当方の専攻は電気でメカは専門外なのですが,昔は電気専攻でも機械工学概論で材料力学の基礎とか機構学とかの座学に加え,旋盤ヤスリ掛け鋳造鍛造溶接などの実習もやりました。案外,日常生活にはこちらが役立っているかも知れません。

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減速機構と言うとクルマのギヤの事を思い浮かべます。無論そちら方面なのですが,こちらでは弦楽器の糸巻きに関して考えてみます。

ギターやコントラバスでは,ウォームギヤを使っています。
これはなかなか優れた機構だと思います。多くは弦ローラーに接続された14枚歯のギヤをペグ側のウォームで巻きとる事により,ウォームの1条ネジで巻きとれば,14分の1の減速になります。

一方ヴァイオリンやチェロ,リュートはもちろん,ギターでもバロックタイプや19世紀タイプの一部,フラメンコの一部では単に穴に刺さっていて摩擦で張力を保持する単純ペグのものがあります。

単純ペグ式は慣れないと大変ですが,シンプルで軽いことなどのメリットも大きいので現在も使われているのでしょう。

ギターのウォームギヤ式はボールベアリングを入れるなどの細部の改善はあるにしても19世紀辺りから使われており,そう大きな変化は無さそうですが,単純ペグ式にはちょっとした技術革新があります。

遊星歯車機構です。ウォーム・ギヤは回転軸が直交しますが,こちらは同軸上で減速出来るのが特徴です。むろん機構自体はかなり昔からありますが,ペグの軸のサイズの中に組み込む精密加工がネックだったのではないかと想像されます。現在ウイットナーなど(もう一社ある様です)から製品が出ているようです。








なかなか画期的な製品だと思います。楽器そのものには何の加工も必要無くて,ペグの交換だけで減速機構が組み込まれてチューニングの微調整が楽になる。ギヤ式なので不意の弦戻りもない。いい事づくめの様です。当方使った事がないのですが,教科書的な遊星歯車機構だと回転方向が逆になりますが,こちらは回転方向は合っている様です。ウォームギヤ程には大きな減速比が得られない事が挙げられますが,現製品は4分の1ですが,このくらいの減速比の方が使いやすいのかもしれません。

同軸上でウォーム・ギヤ並みの減速比は得られないのでしょうか?
あります。ハーモニックドライブシステムズと言う会社が手がける波動歯車装置と言うものがあります。広くは遊星歯車の一瞬らしいですが,大きな減速比が売りです。実用化されている減速比は30から320だそうでむしろペグ機構には大き過ぎる様ではあります。

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コメント 4

たこやきおやじ

Enriqueさん

「もし??」私がチェロを再開したら、このペグを買って使ってみたいですね。(^^;

by たこやきおやじ (2021-08-14 10:57) 

アヨアン・イゴカー

ペグは簡単な機構で、分かり易いですが、遊星歯車機構は複雑でどうも頭にすんなり入ってきません^^;
最初に考えた人は、偉いですね^。^
by アヨアン・イゴカー (2021-08-15 16:28) 

Enrique

たこやきおやじさん,
チェロは休止中でしたか。
私もヴァイオリンに使ってみたいところです。
by Enrique (2021-08-16 19:53) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
当方は歯車の仕組みは小学低学年の頃に(ほぼ)理解したのですが,遊星歯車は2段階の噛み合いなのでやや分かりにくいところはあります。
通常の遊星歯車は回転方向が逆になるはずですが,こちらは同方向なのでどういう構成なのか興味あります。
by Enrique (2021-08-16 20:00) 

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