SSブログ

弦高の測り方 [楽器音響]

ギターの弦高は,演奏性に大事な要素ですが,その正確な情報は案外少ないのではないでしょうか。

HeightMeasureThum.jpgむろん楽器に関わる人であれば,常識事項なので敢えて取り上げる必要もない事ですが,素人が中古楽器などを扱う際には,「どこをどう測るのか分からない。」とか,思い込みでトンデモない測り方をしている例も見ます。自分で楽器を調整する時はもちろん,中古楽器の取引きでトラブルを起こさないためにも,正しい弦高の測り方が必要と思います。

まず一般人には,1mmという長さがすごく小さいものというイメージがある様ですので,まずこの意識を取り去らないといけません。「1ミリも違わない」とかという表現を良く聞きますが,そう言っている人はかなり感覚が鈍いと思います。弦高調整では0.1mm以下(少なくとも0.05mm単位)の調整が必要です。

0.1mm以下の寸法感覚を持っても,測る場所や方法を間違うとダメです。
場所は12Fです。フレットの頂上から弦の下端の隙間が弦高です。指板の上から測ると言う人がいて驚きます。これだとフレットの高さの約1mm分が付加されてトンデモない高弦高の楽器と誤認されてしまいます(フレットバー自体にも種類があって高さも微妙に違います)。間違いの原因は,弦がフレットでは無く指板に押し付けられると思っている人がいるからの様です。実際に弦を指板に押し付けるためには,フレットとフレットの真ん中へんで弦を物凄い力で押し付けないと指板には触れません(もしそうすると音程もかなり上がるはずです)。また,ふつうは①弦側が低く⑥弦側が高くなります。楽器をやる人ならば常識ですが,フレットが上がるにつれて弦高はどんどん増えますので,フレット位置が不明では意味がありません。セラーが楽器を知らない人だったりすると,フレット位置不明の画像がついていたりします。

HeightMeasure.jpeg
この測定値から弦の直径分を引きます。
12F上でスケールを入れて撮影されたものでも,撮影角度によるパララックスがあります。さらにスマホの撮影ですと通常焦点距離が短いため遠近感が強調されますので,読み取りが不正確になります。専用の弦高ゲージはありますが,当方は使いません。理由は不正確だからです。フレット上に置いて読み取るタイプだと,やはり視差がある上に,読み取りも0.5mm程度の粗っぽいものになります。隙間に差し込むタイプだと,弦を押し上げてしまいますので,力加減によってくるいます。いわゆる系統誤差が発生して必ず高い方にバイアスが掛かってしまいます。熟練してそーっと押し込めば大体安定して測れる様にはなるとは思いますが。

当方はというと,ノギスで測定しています。ノギスのデプスゲージを使ってフレット上から弦の頂上を測定して,弦の直径を引くと言う方法です。もちろん,この方法だと弦を押し下げてしまいますので,マイナスの系統誤差を発生します。それを防ぐため,0.05mm刻みで変化させながら,デプスバーの先端でフレット上を軽くトントンとやって弦の当たりを確認します。この方法ならば弦高の低いナット側でも測定できます。
nice!(28)  コメント(6) 
共通テーマ:音楽

nice! 28

コメント 6

たこやきおやじ

Enriqueさん

ノギスのデプスゲージはEnriqueさんらしいですね。私の古い河野の7号はまだ少し調整の余地があるので、ノギスの購入も考えてみます。(^^;

by たこやきおやじ (2021-04-11 13:40) 

Enrique

たこやきおやじさん、
私はこの方法がお手軽で精度の良い方法だと思います。
12Fで、0.1mmや0.2mmの誤差は大丈夫ですが、ナット側の弦高やナットの溝掘りには必需品です。本当はハイトゲージが欲しいのですが、こういう測定器もアナログのものが入手しづらくなっています。
by Enrique (2021-04-11 16:38) 

Cecilia

弦高、Enriqueさんにとって最適な値があるのでしょうか?それは一般的なものなのか、人によって違うのか気になります。
by Cecilia (2021-04-17 00:58) 

Enrique

Ceciliaさん,弦高は非常に大事だと思いますが,経験者でも無頓着な人がいます。押弦が強くフレットをすり減らす様な方は多少弦高が高くても弾きこなすでしょうが,当方の様に余り力の無い人間はなるべく低い弦高が良いと思います。高い弦高では脱力した重力奏法が困難だと思います。
現在,12フレットの位置で①弦側3.0mm,⑥弦側4.0mmが標準と言われています。これなら十分弾きやすいと思います。これよりそれぞれ1mm高いとすごく張りが強く感じ弾きづらくなります。昔の楽器などでは異常に高いものがあります。
福田進一さんは,①弦側2.8mm,⑥弦側3.8mmを勧めています。私もそのくらいが良いと思っています。ただ楽器によっては特に低音側がビビることがありますので,そう言う場合は⑥弦側4.0mm,①弦側はむしろ2.6mmくらいまで下げることもあります。
あとナット側の弦高はあまり話題に上りませんが,弾きやすさにはむしろこちらの方が効くと思います。こちらの調整は難しいので,ヘタなことは言えません。
by Enrique (2021-04-17 06:10) 

Cecilia

福田進一さんの生演奏を何度か聴いていますが、(主にメロディーラインの)なめらかさに驚いたことがあります。他のプロの演奏でも良く聞こえる”クイッ!”という音が聞こえないと思いました。(後に聴いたときはまったくないわけでもないか、と思いましたが。)それは弦高も関係あるのでしょうか?
by Cecilia (2021-04-17 08:03) 

Enrique

Ceciliaさん,
その点は直接的ではありませんが,少なくとも間接的にはあると思います。軽く力を入れずに弾けるというのはやはり大きいです。脱力して重力を使えば左手は楽になります。キュッと言う音は移動時に力が抜けないまま無理に移動するからで,移動時に押弦力がOFFになっていれば,出ない理屈です。そして移動がスムーズであれば音もレガートになります。
by Enrique (2021-04-17 11:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。