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不良資産 [雑感]

一時期お宝であっても,現在ではお荷物になってしまったものがあります。

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土地神話の時代なら,持っていればどんなものでも価値だった不動産は,いまや「負動産」になりつつあります。使わない・使えないのに固定資産税だけ取られる。だからタダでも要らない。タダでも売れないという物件もあるようです。バブルの高値で買った人もいるかも知れません。まあ,それでも現在住んでいる場所ならば,それはそれで意味があります。土地神話がまだ現役だった頃,「借りていても自分のものにならないから」と,不動産の購入を盛んに勧められました。かなり後年になって購入し,それほど高値つかみしないで良かったとは思いますが,もっと後でも良かったし,今となっては賃貸でも良かったかなと思っています。



さて,やはりクラシックギターのブログですから,ギターの話で当方が「不良資産」だと思うのは,古い技術で覚えて過去に弾いた曲の事です。過去に弾いてレパートリーにした曲というのは,普通なら貯金だと思われるわけですが,当方にしたらかなり不良資産のものがあります。「禁じられた遊び」でさえそうです。必ず力みが入るところがあります。現在の技術なら何でもないところに力を入れて弾けなくして頑張っているところがあります。いわばアクセルとブレーキを両方踏んでいるのです。ブレーキだけ外そうと思っても,若いころの無理な演奏が戻ってくるだけです。一から楽譜を見て弾きなおして見ても,必ずどこかにそれはあります。



これを解消するには,アニーリングをやってリセットするしかありませんが,完全なアニーリング手法を知りません。過去の悪い技術に戻らないようにする最も確実な方法は,「そういう曲は弾かない」という事です。「折角の資産だからもったいない」と思ったらダメです。不良資産だからです。過去の悪い技術で覚えた曲は決して弾かないというのは,カネンガイザーがアルハンブラを弾かない理由が「10代の頃のヘタクソな自分に戻るから」と。超一流プロでさえそうですので,演奏技術を矯正してきたアマチュアにも当然当てはまるでしょう。せっかく良い技術に矯正して演奏がスムーズになったのに,弾けない頃のいわばアクセルとブレーキを両方踏んでいる様な状態に戻してしまうのは,現在の演奏に悪影響だとしか言えないでしょう。



なにしろ独学の若い頃は,弾きたい一心で徹底して(悪い技術で)弾いていましたので,それらのレパートリーは完全な不良資産です(無論誰もそうしたくてやっているわけでは無くそうなっちゃったわけです)。後年習いだしてからも,顔を歪めながら(力んで)弾いていた時期が長いので,残念ながらこれらもなるべく取り出さない事にします。そうすると最近弾いた曲ばかりになってしましますので,どうしても取り出さなければならない時には余程注意が必要です。なるべく冷静客観的に,全く新しく弾くつもりで弾かないといけません。夢中になって記憶に頼って感覚的に弾いていると,改善したはずの悪い癖で弾いてしまいます。
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Cecilia

”不良資産”、私もたくさんあるような気がします。特に一番一生懸命取り組んできた声楽。
ピアノとヴァイオリンは必死に取り組んでいた期間が短いのでそれほどないと思います。
声楽レッスン、体の筋肉が目に見えないので先生方もいろいろな説明をしてくださるのですが(なかなか面白いですが)、私は昔受けたレッスンの記憶をもとに間違った筋肉の使い方をしているようです。それなりの曲を歌うなら良い指導者のもと一から始めるつもりで矯正する必要があると思っています。
by Cecilia (2021-04-09 04:55) 

Enrique

Ceciliaさん,
時間かけて一生懸命やればやった曲ほど,それが適切でなかった場合の矯正が困難になっています。最悪その曲を破棄してしまった方がプラスの事もあります。何度矯正しても,ふと初期の悪い癖が出たりします。
なにぶん不良資産(負動産)ですから,引っ張り出すと現在の技術も劣化させてしまいますので,当方の場合,封印してしまうほうが賢明なのかなとも思います。引っ張り出すたびに技術を劣化させるだけですので。
仰るように,それをやるなら良い指導者のもと,全く異なったアプローチで新曲のようにとりくむ必要がありますね。まっさらな新曲をやるより時間が掛かるような気もします。
当方の場合,昔弾いた曲へのこだわり・未練は余りないので,昔弾いた曲を引っ張り出して技術を劣化させるよりは,まっさらな新曲をムリの無い技術でマスターしたいと思っています。
by Enrique (2021-04-09 16:21) 

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