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トーンダイヤルの音程から [電気音響]

ハム音の記事でポーという電話の発振音について書きました。

音につながる話題として,プッシュ音がありますが,やはり,最近直接聞くことはあまりありません。

電話回線には,パルス式とトーン式があるとか言われました。黒電話(ダイヤル式)でつかっていた方式がパルス式で,直流電圧を断続してその回数で番号を判別していました。そのため,0とか9とかパルスの多い番号が続くと,イライラして来ました。回すのに0.5秒,戻りに1.5秒くらいかかりますから,0をひとつ送るだけで2秒くらいかかることになります。数字を回す平均が1秒としても,10桁の番号をダイヤルすると,10秒は掛かることになります。気の短い人は,戻りが満ちきれなくて,無理矢理戻していました。そこで現れた?のが,音で番号を送る方式,それがトーン式です。

表1.電話のトーン信号のマトリックス
  高群 (Hz)
1209 1336 1477 1633
低群
(Hz)
697 1 2 3 A
770 4 5 6 B
852 7 8 9 C
941 * 0 # D
表1に示すように,縦に4種類,横に3種類の音の高さの異なる音をマトリクスにして,いわばその重音の組み合わせ方で12種類のコードを送るという方式です(横4列目のA,B,C,Dは通常使いません)。これですと,音さえ感知できれば,番号を送ることができます。これなら10桁をピポパピポと押しまくれば,2,3秒で送れそうです(今からすれば大した改善ではないですが)。耳の良い人は音を聴いて番号が分かったそうです。まあ12通りですから,そう特殊技能でもなさそうです。

3の音.PNG
譜例1."3"のプッシュトーン
しかし,この音を五線譜に書き出してみようと思いましたが,ダメです。縦(低群)も横(高群)も音階にピッタリはまる音ではありません。絶対音高はハマらなくても,相対音高で重音になるかというと,それも微妙にズレています。どうもわざと音痴にした様です。その中でも一番音楽的?なのが3のキーで,ほぼFとFisの組み合わせです。オクターブは離れていますが,ロドリーゴが得意とするような,短2度のぶつかりです。(譜例1)。むろん他の数字の組み合わせも,故意にか音階音にハマらないわけですが,当然違いは感知できるでしょう。

昔話をすると,キリがなさそうですが,ケータイもスマホも無い時代,「クイック・ダイヤラー」なる先進的なグッズがありました。見た目,全くの電卓でしたが,裏にスピーカーがついており,これに電話番号をメモリさせておいて,電話を掛けるときに,こいつを受話器に押し当てて,登録先ボタンをポンと押せば,いちいちキーを押さなくても,ピポパピポと自動的にトーン番号を発出してくれました。決まった所にかける際は結構便利だった記憶があります。

もっと昔は,トーンどころかパルス式のダイヤルも無かった電話機を覚えています。実家が商家だった為,私が生まれる前から電話があったようで,電話番号は2ケタでした。ダイヤルなどついてなくて,横に鉛筆削りのようなハンドルが付いていました。これは手動で発電機を回して,内部のキャパシターに電力を蓄えておく為でした。子供のころ悪戯で,受話器を取ってみたところ,受話器の向こうから,もの凄く鮮明な音声で女性の声が聴こえてきて怖くなって戻した記憶があります。後で思ったのは,キャパシターに溜まっている電力だけで通話は十分だったのです。大人がハンドルをクルクル回していたので,そうしないと電話はかからないものだと思っていた子供にとっては衝撃でした。当時の掛け方は,「誰それさんをお願いします」とか「何番の誰それさん」とか言って電話局の交換手に依頼して,手動交換機で(ジャックを差し替えて)繋いでもらっていたのでした。まさしく,"Connect to ~ "です。文字通り,「誰それさん(の電話機)に接続してください」ということでした。昔話もこのくらいになると,ヤバくなって来ますので,この辺で止めます。
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コメント 2

Cecilia

「クイック・ダイヤラー」知りませんでした。何年頃にあったのでしょうか?

>トーンどころかパルス式のダイヤルも無かった電話機

記憶では「233」(3ケタ)と言ってかけていたように思います。
Enriqueさんが書いておられるのはまた別なものなのでしょうか?

確か小2の頃にうちの近所一帯でダイヤル式電話が導入されたと記憶しています。用もないのに同級生の家に電話をかけて叱られました。
ダイヤル式電話の前のものは使った記憶がありません。

by Cecilia (2021-03-20 08:21) 

Enrique

Ceciliaさん,
クイック・ダイヤラーはケータイの前の1980年代だったと記憶します。
最後のはたぶんお生まれになる前の話です。
通常電話を掛けるのは街中だけだったので,2ケタで足りていたのでしょう。2ケタでも数字が若い方でした。当地ではそのくらいの普及台数だったのでしょう。市内で加入順に番号がついていたので,むろん3ケタのお家もあったと思います。遠距離の場合は,別途交換士にそう言って繋いでもらっていたはずです。東京だとカステラの文明堂の電話番号が2番だったのは宣伝文句でもありましたね。
あっという間に,現在の市内・市外局番付きの別の番号になりました。
by Enrique (2021-03-20 09:38) 

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