ギターの弦の張替え [演奏技術]
私が余り好まない作業がギター弦の張替えです。
クラシックギターの弦張替えは,なぜこんなに面倒くさいのだろう?と思います。
他の弦楽器ではそれほど面倒な作業でも無いですし,弦寿命はギターよりずっと長いです。切れるまで使うと。
現在のクラシックギターの弦はナイロンもしくはフロロカーボン製ですから,まず切れません。切れるほど滅茶苦茶に張ると,楽器の方が壊れるかもしれません。ですから,寿命は,切れたらでは無くて,音が死んだらと言うことになります。この音が死ぬというのも徐々に来ますから存外分かりにくいのです。
もともと響きの鈍い楽器を使っていて,新品弦で良く鳴る状態に慣れていますと,直ぐ分かります。学生時代手工国産楽器を入手して弾いていたころは,3,4日で張り替えていたこともありましたが,現在ではとても考えられません。鳴りの良い楽器だと,許容できる弦の寿命も延びると思います。
イヤな理由その1:弦を結びつけるのに時間が掛かる。
ボールエンドだとブリッジ(側)がワンタッチで止まるわけですが,クラシックギターでは結んでフリクションで留めないといけません。ペグ側も捻って着けないと緩んでくることがあります。おまけに,ウォームギヤのペグは巻くのに時間が掛かります。
イヤな理由その2:なかなか音程が安定しない。
少なくとも2,3日はかなりの上げ調整を続けないといけません。張ったばかりだと,一曲弾いている間に下がってくる。一説には,伸びが止まったら寿命とか。そうしたら,安定して弾ける期間が無いことになります*。
イヤな理由その3:新弦はキュッキュッという擦過音がハゲシク出て,カリカリとして落ち着きがない。
多少ボケても安定していた弦を交換するのは,大変調子の良いクルマを車検に出して不調になるような感覚です。こなれて調子の良い状態を永く使いたいと思います**。
対策その1:ダブルホールの楽器を使えば,ブリッジ側の結びつけのメンドウさは多少緩和する。当方が所持する楽器中ではOtto Vowinkelがそうなっていますが,何の因果か普通の結び方をしています。今度試してみます。ウォームギヤのペグの回しを当方は電動ドライバを使っています。強力なインパクトドライバなどを使えば効率は良いですが,ペグを痛めることがあるので,小型の低速のものを使っています。
対策その2:この対策は,あまりありません。特にブリッジ部分の結びなどが緩んでいそうな部分を良く引っ張って,クリープ的に緩んでくる現象を抑えます。しかしどう緩みを無くしても,弦自体の伸びによる緩和現象は起こります。張り替えたばかりの楽器は余り弾かず,放っておいて落ち着くのを待った方が時間を無駄にせず良いのかもしれません。そのためにも楽器は2台以上必要です。
対策その3:擦過音に関しては,かつては弦の問題だと思っていましたが,現在は弾き方の問題だと思っています。擦過音は弦を強く押さえたまま移動させると出ます。擦過音の出る弾き方は,少なくとも現在のクラシカルギターの弾き方としては好ましくありません。従って擦過音が出ない奏法にチャレンジする上では新品弦の出やすさはむしろ有益でしょう。
*当方の独自研究(笑)によれば,ナイロン弦は永久に伸び続けます。そこに,「伸びが止まったら寿命説」を適用すれば,寿命は永久という事になります。「寿命はある」が真ならば,「伸びが止まったら寿命説」は却下されます。
**特に巻弦の寿命(音のボケ)に関しては「汚れ説」が有力です。この説に従って,ボケてきた弦の表面をゴシゴシと固く絞った布巾などで拭うのが有効です。弦を張ったままだと楽器を痛めますので,緩めてやります。皮脂が減ってくると,汚れの付きも少なくなりますので,この作業自体も減ってきます。
(当方の流儀の)弦の結び方。 低音弦は捻りを入れずに結ぶ方が多いと思います。 この後,飛び出した分はカットします。 |
他の弦楽器ではそれほど面倒な作業でも無いですし,弦寿命はギターよりずっと長いです。切れるまで使うと。
現在のクラシックギターの弦はナイロンもしくはフロロカーボン製ですから,まず切れません。切れるほど滅茶苦茶に張ると,楽器の方が壊れるかもしれません。ですから,寿命は,切れたらでは無くて,音が死んだらと言うことになります。この音が死ぬというのも徐々に来ますから存外分かりにくいのです。
もともと響きの鈍い楽器を使っていて,新品弦で良く鳴る状態に慣れていますと,直ぐ分かります。学生時代手工国産楽器を入手して弾いていたころは,3,4日で張り替えていたこともありましたが,現在ではとても考えられません。鳴りの良い楽器だと,許容できる弦の寿命も延びると思います。
ヘッド側。結構巻き込んでいます。 カットして巻き込み量を減らせば, 作業効率はもっと上がるでしょう。 |
ボールエンドだとブリッジ(側)がワンタッチで止まるわけですが,クラシックギターでは結んでフリクションで留めないといけません。ペグ側も捻って着けないと緩んでくることがあります。おまけに,ウォームギヤのペグは巻くのに時間が掛かります。
イヤな理由その2:なかなか音程が安定しない。
少なくとも2,3日はかなりの上げ調整を続けないといけません。張ったばかりだと,一曲弾いている間に下がってくる。一説には,伸びが止まったら寿命とか。そうしたら,安定して弾ける期間が無いことになります*。
イヤな理由その3:新弦はキュッキュッという擦過音がハゲシク出て,カリカリとして落ち着きがない。
多少ボケても安定していた弦を交換するのは,大変調子の良いクルマを車検に出して不調になるような感覚です。こなれて調子の良い状態を永く使いたいと思います**。
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対策その1:ダブルホールの楽器を使えば,ブリッジ側の結びつけのメンドウさは多少緩和する。当方が所持する楽器中ではOtto Vowinkelがそうなっていますが,何の因果か普通の結び方をしています。今度試してみます。ウォームギヤのペグの回しを当方は電動ドライバを使っています。強力なインパクトドライバなどを使えば効率は良いですが,ペグを痛めることがあるので,小型の低速のものを使っています。
対策その2:この対策は,あまりありません。特にブリッジ部分の結びなどが緩んでいそうな部分を良く引っ張って,クリープ的に緩んでくる現象を抑えます。しかしどう緩みを無くしても,弦自体の伸びによる緩和現象は起こります。張り替えたばかりの楽器は余り弾かず,放っておいて落ち着くのを待った方が時間を無駄にせず良いのかもしれません。そのためにも楽器は2台以上必要です。
対策その3:擦過音に関しては,かつては弦の問題だと思っていましたが,現在は弾き方の問題だと思っています。擦過音は弦を強く押さえたまま移動させると出ます。擦過音の出る弾き方は,少なくとも現在のクラシカルギターの弾き方としては好ましくありません。従って擦過音が出ない奏法にチャレンジする上では新品弦の出やすさはむしろ有益でしょう。
*当方の独自研究(笑)によれば,ナイロン弦は永久に伸び続けます。そこに,「伸びが止まったら寿命説」を適用すれば,寿命は永久という事になります。「寿命はある」が真ならば,「伸びが止まったら寿命説」は却下されます。
**特に巻弦の寿命(音のボケ)に関しては「汚れ説」が有力です。この説に従って,ボケてきた弦の表面をゴシゴシと固く絞った布巾などで拭うのが有効です。弦を張ったままだと楽器を痛めますので,緩めてやります。皮脂が減ってくると,汚れの付きも少なくなりますので,この作業自体も減ってきます。
2021-02-19 06:51
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コメント(4)
横から失礼します。
参考画像ですと、ヘッド側の巻きつけ分がかなり多いので
弦を張る時にもっと引っ張って巻き付けると
最小の巻き付けにする事ができます。
そうすれば音程の下がりも多少は緩和します。画像だと巻き付け分が伸びて音程はかなり下がってくると思いますし、糸巻きの軸にも負担を掛けるでしょう。私はヘッドの巻き付け分は軸に低音弦で一巻き、高音弦で2巻きまでに収めています。音程の安定はまあまあ早いです。
by 通りすがり (2021-02-19 14:39)
通りすがりさん,
おっしゃる様にはギター界一般には言われます。
わざわざ沢山巻いて,手間もかかるわけですが,当方はずらして使ったりもするので,このようにしています。他の弦楽器ではすべて巻き込むのが普通です。
定量的に検討したこともありますが,巻きつけた分が伸びるにしても,全長の1割程度ですので,すごく速く安定するという事はなく,ナイロン弦自体が永久に伸び続けることが原因です。
巻きつけた部分のみが時間遅れでゆるむという事であれば,おっしゃる通りですが,音程の下がりの主要原因は,弦全体の時間遅れの伸びですので,最短に切っても大差ありません。
その辺は流儀だと思います。
by Enrique (2021-02-19 15:08)
私のギター、何年も張り替えていません。(苦笑)
数年前にリュートの講習をギターで受けた時に久しぶりに触りましたが特に問題なく使えました。
ヴァイオリンの弦の張り替えも嫌いですがギターも嫌いだった記憶が・・・。
by Cecilia (2021-02-20 21:22)
Ceciliaさん,
クラシックギターの弦張り替えは,ヴァイオリンよりも3倍はメンドウな感触です。1本あたり2倍は手間が掛かり,本数が1.5倍ですので,そのような計算です(笑)。
むろん切れなければ使えるのですが,古くなって汚れたり錆びたりすると音がボケています。
by Enrique (2021-02-20 22:01)