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タイタニック号の教訓 [雑感]

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1912年4月15日,当時最先端のタイタニック号が初航海で沈没してしまった事故は,当時世界に衝撃を与えました。

当方が子供の頃の雑誌とかにも載っていたのを思い出します。しかし,その当時は詳細明らかになっていなかったのか,あるいは日本の子供にまで詳細まで知らせる必要も無かったのか「世界七不思議」のような取り上げられ方だった様に思います。そのくらい起こり得ないことが起こったという扱いだった様に記憶します。

子供のころ知ったのが1960年代,映画になったのが1997年のことですから,事故からさらに時を経て85年も経った後のことです。映画を見ない人間である当方は確認していませんが,ハリウッド映画ですから,娯楽面に舵を切ったものだと思います。音楽のみ知るところです。

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滅多に見ないTVを20日の晩何気なく見ていましたら,そのタイタニック号が取り上げられていました。
そこには驚くべき事実(知ってる人は知っているのでしょう)がありました。

・出港前に右舷側の機関室?で火災を起こしていた*こと。それをおして出船したこと。
・氷山の危険性は十分認識されており,2人の見張りがいたが,前の係りの者が双眼鏡の保管庫に鍵を掛けたまま下船したため使えず,目視で見るしかなかったこと**
・当夜は凪で波が無く,目視で氷山を発見するのは困難だった(波があれば,白く見えやすい)。そのため氷山の発見が遅れたこと。
・急きょ舵を切った***が運悪く,火災を起こして弱っていた右舷側を幅広く損傷してしまったこと。
・当船の運行会社は外観などにこだわり,救命ボートの数を大幅に減らしていた事****
・「女性と子供優先」という船長の指示を緩やかに解釈した現場と厳格に解釈した現場とがあったこと。
救命ボートの定員に空きがあれば大人の男性を乗せたボートもあったが,空きがあっても10歳の男の子を母親から引きはがして乗せなかったボートもあった。

映画で描かれているのかどうかは知りませんが,極限状況ではそういう混乱もあり得る事でしょう。
船舶運航会社の激しい競争があったことや経済面や面子を重視したこと。事故後,生存者(の男性*****)やたまたま近くを運航していた船「カリフォルニアン号」に救助しなかったと責任の一部を転嫁したこと******,など,現在の我々への教訓も含んでいます。

当時無線電信技術が使えるようになっていて,モールス信号による通信ができました。むろんやりとりに時間は掛かります。番組で取り上げられていたかどうか忘れましたが,タイタニックの電信技士は,カリフォルニアン号などから再三の氷山情報を受け取りながら,別の通信に忙しかったらしく「邪魔するな」とか返して,全く無視していたということです。

歴史的な事故となった現在では,その解釈は細部の扱いの違いでどのようにでもなります。「氷山情報を知りながら,最高速度に近い速度で運行していた。経済・乗員の快適面優先で安全面がないがしろにされていた。」などと現在なら言えますが,当時最先端技術で建造された世界最高の巨大豪華客船が,まさか初航行で沈没するなど,誰も想像しなかった事でしょう。

こういう事故ではよく「科学技術への過信」とか言われます。そんなこと言ったって誰がどの様に過信したのか解明しないと無意味です。それは科学技術への過信などではなく,むしろ技術を知らない者の誤信です。技術者倫理が重要視されます。むろんそれは重要ですが,いくら技術者が命がけで訴えても無視されることが事故を生む教訓からすれば,技術者倫理と同様以上に,経済原則や面子を優先しがちな技術を利用する立場の責任者の「管理者倫理・経営者倫理」とでもいうものの方がむしろ重要です。

むろん必要以上に失敗を恐れては,進歩はありません。人類の命がけの貴重な失敗を繰り返さない事こそ重要です。実際この事故の教訓を得て,海事上の様々なルールの改正などがなされたようで,これほどの大規模で悲惨な船舶事故こそ繰り返されませんが,残念ながら別の分野では類似の失敗は繰り返されています。

近年では,航空機の事故,スペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故,そして原発事故などが挙げられます。いずれもバイアスのない原因究明が最も重要ですし,事前にあった貴重な警告を無視した体制こそ糾弾されなければならないのですが,スケープゴートを立てて責任を押し付けるような事が現在でも行われていないでしょうか?

女性と子供が優先という,一見ヒューマニスティックな「命の選択」を行わなければならなかった事が悲劇です。海難事故と言えば,エンリケ・グラナドスが,1916年ニューヨーク公演からの帰路,ドイツのUボートの攻撃を受けて遭難,一旦救助されながらも波間の奥さんを助けようとして飛び込み,そのまま二人とも最期を遂げたとの事です。個人的な話ながら,当方の曽祖父も海難事故で亡くなっており,とても他人事とは思えません。


*多少の設計ミスがあったこと,船体の製造が設計通り為されていなかったとの情報もある。
**暗い海上では仮に双眼鏡を使っていても発見は遅れたのではないかという見方もあるが,例えば7×50の双眼鏡ならば,明るさは肉眼と変わらず目視よりは数倍発見しやすいはず。
***TVの再現映像では,たしか「おも舵いっぱい」と「スクリュー逆回転」とか言っていたが,左に避けたのであれは「とり舵」のはず。何分バラエティ番組。実際には「とり舵」で辻褄は合う。
****乗客船員を救命ボートに乗せるのに手間取ったので,仮にボートの定員が足りていても全員の避難はできなかったのではないかという見方もある。
*****同船したタイタニック所有の海運企業の経営者で運航会社社長のイズメイは,生還して卑怯者とされた。
******カリフォルニアン号は,危険を察知した当夜は洋上に停船していてタイタニックに再三氷山情報を送り,20マイル以上の距離から翌朝駆けつけたにも拘らず,「救助しなかった」として,同船のロード船長は犯罪者扱いされた。

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コメント 4

Cecilia

「タイタニック」、割と最近になって見ました。船の中の様子、沈没までのいきさつなどがわかって面白かったです。
「タイタニック」と言えば「銀河鉄道の夜」と「主よみもとにちかづかん」の讃美歌を連想します。
by Cecilia (2021-01-26 18:59) 

Enrique

Ceciliaさん,
私は映画を見ない人間なのでよく知らないのです。知るのはテーマ音楽のみです。
ハリウッド映画ですから,どの程度史実に基づいているかは疑問が残りますが,映像の印象は強いのだろうと思います。
その讃美歌が映画内で使われたのでしょうか。
by Enrique (2021-01-26 19:40) 

Cecilia

こちらを参考になさってください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E3%82%88%E5%BE%A1%E8%A8%B1%E3%81%AB%E8%BF%91%E3%81%A5%E3%81%8B%E3%82%93

私は大好きな讃美歌なのですが、「お葬式の讃美歌」と認識している方が多いかもしれません。
「タイタニック」ではここで演奏されています。
https://www.youtube.com/watch?v=1_3ndgpggoM
by Cecilia (2021-01-26 19:57) 

Enrique

Ceciliaさん,ありがとうごうざいます。
私の様な信仰心の無い人間にもこれは堪えますね。
by Enrique (2021-01-26 20:19) 

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