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大人の演奏 [雑感]

いい意味で大人の演奏というものがあると思います。

しかしながら,経験豊富で様々な知識がありプロ並みだけれども弾けていない演奏,というのがシロートには結構あります。むろん当方も自戒しています。

たとえば,一拍子のバッハ演奏。どの曲もギターで弾くには難しいわけですが,必死に楽譜を追いかけるだけでまるで拍節感がなく,一拍子に聞こえる演奏がアマチュアの大人の演奏でありがちです。曲がりなりにもバッハを弾くわけですから,それなりに技術もあり経験豊富なわけですが。

鍵盤だったら,バッハの本格的な曲に入る前にプレ・インヴェンションや本物のバッハのインヴェンションがあり,シンフォニア,平均律(ネーミング批判の多いところですが)と進みます。しかしながら,ギターではその辺のステップがありませんので,カルカッシやソルを弾いた後いきなり入ることも多いのでは無いでしょうか。時代背景もあり対位法的な曲は少ないので,そういう曲をかなり補足する必要があると思います。いきなりバッハをやらず,サンスとかド・ヴィゼーとかポリフォニーの古い曲を沢山やるのも良さそうですが,これらは技巧的には比較的易しく出来ているため,その後バッハに進むとしても,技巧面で不足するので,古典曲や近現代曲などの難しい曲を沢山やった後にやることになる。そうすると,今度は技巧は安定し,一拍子では無くなるのですが,ロマン的だったりスペイン的だったりのバッハが現れることになります。何分バッハのリュート曲は本家のバロック・リュートでも大変弾きにくく,プロでも取り組まれる方は少ないのです。むしろギターの方が弾きやすいくらいです。バッハを弾くための練習曲の様なものがあれば良いのですが。

また,バッハ演奏に限らずですが,定番曲を情感豊かに演奏され,フレーズの作り方や歌い方など,部分的には素晴らしいのですが,演奏に全く息が無く合奏しても全然合わないといった問題がある場合もあります。ミス,音の出損ないが多く音楽として聞いてられないこともあります。技術の楽なカルリあたりをどんどん弾いて,ミスなく流れの良い演奏をめざしたらどうかな?と思うのですが,案外そういう方は,かなり難しい曲を弾いています。やはり曲の難易度を下げて,ミスらず拍子がとれて取り立てて美しい音でなくても良いので汚くない音で弾けたら良いと思うのですが。

プロ並みの演奏をしますが,楽譜が読めないと言う方もたまにいます。やはり,アマですから別に良いのですが。ものすごくゆっくり弾く方もいます。当方も指定速度が難しい場合はゆっくり目で弾きます。むろん速く雑な演奏よりは良いと思いますが,指定テンポの2倍くらい(ゆっくり)の速度ともなると,練習ならいざ知らず,その曲を弾いたということにはならないのでは無いか?と思います。何もただ難しい曲を弾く事がエライわけでは無いのですが,「この曲を弾いた」という達成感・満足感がそのモチベーションなのだろうと思いますので,やはりそのようなアマチュアの演奏を批判するわけにもいきません。程度問題はあるにしても。

何もプロを目指す若者ではないですから,年寄りは好きにやればいいわけで,自戒を込めた感想です。欲を言えば,余裕と風格のある,よい意味での大人の演奏を出来る様にできたらと思う今日この頃です。

余裕しゃくしゃくで曲は生き生き。パスカル・ボネさんはフランスの方。かっこいいです。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

アマチュアが、バッハの曲をギターで演奏するためには、少なくともギター以外のバッハの演奏を多く聴いて、バッハの曲の理解を深めておく必要があると思います。バッハの曲のギターの良い演奏は、あまりにも少ないと思うからです。普通の日本人はこの時代の音楽を自分の感性だけで弾くのは難しいと思います。
Enriqueさんが上に書かれた多くの事が、私自身の事として身につまされます。(^^;

by たこやきおやじ (2020-11-02 09:38) 

Enrique

たこやきおやじさん,
たしかに演奏を聴くのも必要ですが,色んなバッハ演奏がありますので,譜面を読み多少なりとも弾いてみることで自分で音を組み立てる練習が必要かと思います。
山下和仁さんは,バッハ全集を全部「読んで」みたと言っていましたね。むろん,アマチュアがそこまでやる必要は無くても,時代背景の理解と2声3声を弾き分けられるくらいの素養は必要かと思います。バッハを弾くためのメソードとしてその辺は不足していると思います。もっともその辺はギターに限らず,鍵盤除くすべての楽器について言える事だとは思いますし,アマチュアがどう取り組もうが自由ですので,お堅いことは言いません。「シャコンヌが弾きたい!」という希望も多いようですが,あれはスケールやアルペジオを練習すれば何とかなると思いますし,かなり特殊な曲ですから,あれで「バッハをやった!」という事にはならないと思います。鍵盤の平均律のプレリュードとフーガあたりをみっちりやれれば良いのでしょうが。やるとすれば二重奏ですかね。
by Enrique (2020-11-02 10:32) 

REIKO

私見ですが、アマチュアの場合「演奏している楽曲が主役」と「演奏している自分が主役」という2タイプの演奏があったら、「大人の演奏」なのは断然前者だと思いますね。
プロの場合は、後者的な要素も重要になりますが、アマでそういうタイプは聴いていて痛いです。
「頑張って練習したので聴いてください」系の未熟な演奏も、名曲が腕自慢のネタにされているようなドヤ顔演奏も、私はあまり好きではないですね。

楽器が「上手になりたい」ではなく「上手と言われたい」人が最近は多い…というツイートが流れてきたことがありまして、真偽の程は分かりませんが、それぞれ「楽曲が主役」「自分が主役」と良く対応していると思います。
by REIKO (2020-11-02 16:57) 

Enrique

REIKOさんらしい,するどい指摘ですね。
私の目指すのも,まず素直に曲を弾けるかどうかですね。
アマの場合まずそれで良し。弾けてないのに表現云々言うのは百害あって一利なしと思います。アマの場合素直に弾けた上に少し気持ちが入れば御の字。変なところだけプロの真似をした演奏は痛いです。
私はプロの演奏はなるべく聴かない事にしています。まず楽譜通り弾くのが基本。それで何が悪いかと思っています。録音の無い曲を弾くのが良いと思っています。
by Enrique (2020-11-02 22:05) 

河内の木樵

聞いてくれた人がいい曲ですね、自分でも弾いてみたいなというコメントを返してくれた時が演奏してよかったなと感じる時です。好きな曲を練習して舞台で人前で弾くのはその曲の良いところが少しでも聴く人に伝えたいという想いが私の場合は大きいのかな。こういう気持ちで弾くとアマチュアの演奏で傷が少々あっても伝わるものはあるように思います。
by 河内の木樵 (2020-12-12 22:26) 

Enrique

河内の木樵様,
コメントありがとうございます。
実感に基づくご意見,もっともだなと思います。
人前で弾くからには,聴き手の感じたものが大事でしょうから,「何か」が伝わったかどうかなのでしょうが,特に「自分でも弾いてみたい」ということは,弾ける人の感想ですから重いですね。
by Enrique (2020-12-14 06:46) 

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