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奏法と楽器の調整~自分の楽器を弾ける幸せ~ [雑感]

若い時の様には弾けないという話を良く聞きますが,自分では学生時代1日12時間弾いていた時よりも良くなっていると思っています。無茶苦茶弾いていたその頃は,ウソの様に自分でない様に弾ける事もありましたが,本番でそういう状態に出来るかどうかは分かりませんし,むしろ本番時は練習時とあまりにも環境が異なり過ぎてダメでした。ステージにはいつもいつもと違う自分がいました。

全く闇雲でした。ただただ好きな曲をカッコ良く弾きたい。それだけでした。
むろん,その気持ちは今もさほど変わってはいないのですが,目的実現のために色々ずる賢くなっているのが実態しょうか。

何分ギターの奏法も随分と変化しました。クラシックギターだから,タレガやセゴビアの弾き方を手本にすれば良いのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,やはり時代の考え方に基づく合理的な奏法があります。タレガはモダンギターの元祖トーレスを弾き,セゴビアはハウザーやラミレスIII世で新開発のナイロン弦を使いましました(むろん戦前長らくはガット弦でした)から,彼らから学ぶべきものは多いのは当然ですが,改善点もかなりあります。

構え,右手,左手と,全て私が始めた頃と異なります。
姿勢に関しては,背筋を伸ばして座り,楽器を三点支持で手を離しても落ちない事でしょうか。
ヴァイオリンの奏者は楽器を落とさないかと言うのが恐怖なんだそうですが,ギターも不安定な構えでは,楽器を支持するためだけにも気を使い,ただでさえ難しい楽器の操作に気が回りません。チェロはエンドピンの開発が演奏技術の拡大に大いに貢献しました(むろんバロックチェロの様な歴史的演奏は別)。

左手に余分な力を入れて拡張したり,右手をねじったりしない事。腕の重みを十分に使う事などでしょうか。
音を弾く前にワンアクション入る人がいますが,おそらくアポヤンド?の発音動作に気が行っているのでしょうから演奏が大いに制約されます。プランティングや押し込み,振りぬきでしっかりとした音が出れば,アポヤンドは必ずしも必要ありません。右手,左手,そして最も大事なのが左右のシンクロ動作でしょうか。

ソルやカルカッシの教本を見ていると,構えなどから見ると却って現代の奏法に近い(むしろ現代の奏法が先祖返りしている)様にも見えます。

それから,案外重要なのが楽器の調整でしょうか。弦高を下げたこと,弦幅の調整などでしょうか。弦高が6mmも7mmもある楽器で弾いていたのでは上手くなるわけがありません。製作家には演奏家から移行した人もいますが,ナットやブリッジの調整は最大公約数的に安全を見たセッティングをする(せざるえない)でしょうし,新品の時に妥当な弦高でも,表面板が盛り上がって来ると,異常な弦高になり,それでも新品時に専門家がセットしたのだからとそのまま弾いている人がいます(かつての私です)。楽器のちょっとしたキズなどよりも,弦高のほうが遥かに重要です。

御大・福田進一氏も「楽器に関しては無頓着な人が多いが定期的なメンテが必要」と述べていました。さらには,弦高は①弦側12フレットで2.8mm,⑥弦側12フレットで3.8mmが良いと具体的数字も上げています。以前本ブログでも静力学的にも検討しましたが,弦高は0.1mmの違いでもかなり効きます。特にナット側での0.1mmの違いは,びるかびらないかの違いになりますので,0.05mmレベルの調整が必要です*。

むしろ,鍵盤楽器などに比べ,ギターはステージで自分の弾きやすい楽器を演奏できる幸せがあるのではないでしょうか。
*びりついてしまい,ナットを上げる時,コピー用紙(0.088mm)の厚みでも十分な効果があります。

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EAST

EnriQueさん

概して新品のギターは安価で、初級者が使うようなものほど、弾きづらいです。あれでは余分な力が入るのもしょうがないでしょう。
売る方も安価で数売ってなんぼのものに手間もかけられないのでしょうが。
量販店でサイレントギターを試奏し、店員にナットの弦高が高いと言ったらムッとされたことがありました。
一方新品で海外の個人製作家の数百万円の楽器でも、ハイフレット側の弦高が結構高いものも見ました。サドルを削っても福田氏の言われる弦高まで下がりそうもなかったです。

テンションの低い弦を使うことで多少楽になることもありますが、楽器を調整た方が効果大だと思います。

現状では、なかなか楽器店に行って楽器を弾いたり確認をするもの気が引けますが、Enriqueさんのように器用で何でもできる方は別として、現物を確認してアフターケアのきちんとした楽器を購入するのが後々よさそうです。

自分の楽器でも、クラシックではないですがバズが出るようになり、先日購入した楽器店で見てもらいフレットのすり合わせとサドルのカーブの調整をしてもらいました。おかげでバズも出なくなり弾きやすくなりました。だからといって力んだり余計な力が入る癖がなおる訳ではないですが。

by EAST (2020-10-12 12:50) 

Enrique

EASTさん,

そうですね。ブリッジ側の弦高が低いのに,ナット側が高いのも弾きにくくて嫌ですね。私のサイレントギターも購入時そんなセッティングでした。

特にナット側の弦高に関しては,有名作家のセッティングでもあまり信用していません。弦高は高音弦の方が低く低音弦の方が高いのが原理面でも実際面でも妥当ですが,ほとんどの場合,ナット側の弦高は一定か逆パターンになっているか,異常に高いかのいずれかです。新たに入手した楽器はブリッジ側もナット側も自分で調整することにしています。

ブリッジ側に関しては,例えば12フレット位置で1mm下げるためには,2mm削らないといけません。むろんナット側で0.2mm下げたならブリッジ側は1.8mm下げで良いわけですが。

新品楽器でもあるとのご指摘ですが,ブリッジを削りまくっても弦高が下がり切らない楽器の場合これはネックが順ぞりしていれば直しますし,それでもダメな場合は,ブリッジ部を削るしかないですね。それでもダメならば,太くて高いフレットを使うか指板をかさ上げするなどでしょうか。高いフレットは案外押さえやすいものですね。弦高が低くても低いフレットは押さえにくいですね。
by Enrique (2020-10-12 14:19) 

EAST

Enriqueさん

私はサドルの底面をブリッジときちんと接するように真直ぐ削る自信もないので、ナットの溝削りはとても無理です。溝は深さと幅、方向をきちんとしないとだめでしょう。チューニング時にナットのところで弦がパキパキ鳴りチューニングの合わせずらいのも、自分で溝の調整ははばかられます。

フレットは高めの方が押さえやすいですね。弦をフレットに乗せ、あまり指板を押さえる必要がないからでしょうか。
また、フレットを打ち換えると音が変わると聞いたことがありますが、フレットの高さや幅が変わる影響はどうなのでしょうか。
by EAST (2020-10-14 13:02) 

Enrique

切れ味の良い,適切な番手のサンドペーパーを使うのが最も良いと思います。
ナットに関しては,それそのものを削ることは滅多にせず,ラインやすりを用いて溝調整します。シムを噛ます事もありますが,緊急避難的です。オリジナルは取っておいて全体作り直すのが良いと思います。
作りやすさと性能面で象牙が最高ですが取引の問題がありますね。ギターのナットやブリッジの量は極少だとは思いますが,現在では人口象牙を使うのが一般的でしょうか。牛骨は堅いので避けたいですが,既存品には結構使われています。プラスチックは勘弁してと言う感じです。
フレット打ちは,なるべく専門家に任せた方が良いと思います(やった事はありますし,フレットワイヤーの手持ちはありますが)。失敗すると楽器を痛めやすいですので。
フレットは断面はだいたい半円形ですので,幅と高さは比例しています。幅2mm,高さ1mmのものが標準でしょうか。昔もっと細くて低いものがありました(19世紀ギターはもちろんモダンでも)。弾きにくくてあまり好きになれませんでしたので,標準のものに打ち直したことがあります。
フレットのメタルは洋白系(NiCu合金)ですが,組成や熱処理により硬さの違いによっても音が変わるでしょうが,やはり高さ(太さ)の方が利くでしょう。フレットが低いと同じ弦高でも指頭の押弦力が逃げて,指板の方を押さえていることになります。
フレットが高い方が,弾きやすく音もくっきりはっきりしますが,フレットがエレキベースの様に太いと,なにやらギラギラして,クラシックぽくなくなるのが玉にキズなのでしょうか。
フレットを太く高くしたくないためか,指板を彫り込んだスキャロップト・フレットボードと言うものがありますね。
by Enrique (2020-10-15 13:12) 

EAST

ギターの調整は自分でできると良いなと思います。
店に調整を依頼する場合、店内にリペアマンがいて直接話が
できればよいですが、外に出すと意向が伝わらずに思った
結果が得られないこともあります。結構、部品代+工賃で
費用も掛かりますし。
ギターを購入する際は、値段だけでなくそのようなことも
考えながら店選びもしました。

調整して引きやすくなり、音についても改善すると少し
意欲も増します。
by EAST (2020-10-16 13:02) 

Enrique

EASTさん,
当方は基本的に職人さん的な人は信頼しているのですが,プロでないような仕事をされるとがっかりします。調整に関しては自分自身が一番わかるので,自分でやる事にしています。人間が使う道具な訳ですから,操作性は重要です。
自分でできない木部にかかる修理などは信頼できるプロにお任せする事にしています。多少コスト・納期掛かってもそれなりの仕上がりを望む以上止むを得ません。
by Enrique (2020-10-19 06:15) 

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