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独創の演奏家 Paul Galbraith [演奏家]

たこやきおやじさんのブログで,変わったタイプのエレキギターが紹介されていました。

そのギターは,弦が7本で,フレットが歪んでいます。

この人は全然知りませんでしたが,すぐにクラシックギターのPaul Galbraithを想起しました。
ガルブレイスの使う楽器は,8弦でフレットはやはりファン状になっています。
6弦の楽器では平行フレットは当たり前ですが,多弦になるとこうでもしないと弾きにくくなるのでしょう(6弦でも多少ファン状になっている方が弾きやすいかなとは思いますが。)

多少楽器の作りにくさはあるでしょうが,音の高い方に向けて弦長も短くするのはピアノやハープを見ても自然だとは思います。あとは見た目と音のバランスでしょうか。6弦までではその効果はすくないのかもしれません。

この人のことは,本ブログでも初期の頃書いた積もりでいたのですが,検索してもなかなか出てきません。
やっとありました[1]

同記事では,変わった構えの一例として上げていましたが,もう随分前に現代ギターの記事などで見かけた方でしたが,現在ではYouTubeに動画が上がっていますので,その独特な演奏姿勢も,極めて端正な演奏内容もつぶさに見る事ができます。



当方の記事としては,初期の頃ちょろっと触れていました[2], [3]
2009-09-30の記事では,やはりその演奏姿勢について,2009-08-05の記事では,その音量増大に関して触れていました。
彼は1989年から,現在のシステムを使っている様です(もちろん細かな改良はなされているでしょうが)。

ちょっとキワモノ扱いなのか,このギタリストのお名前は,日本ではそれほど売れていないかもしれません。ガルブレイスというちょっと舌を噛みそうなお名前(「ギャルブレイス」と呼んだ方が良いのかな)も災いしているのかもしれません(「不確実性の時代」を書いた経済学者も同じ姓だったようですが)。なかなか正確な名前を思い出せませんので。

[1] 「譜面の位置」 2013-07-25
[2]「ギタリストがうらやましがられること」 2009-09-30
[3]「マイクロフォンの使用について」2009-08-05
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たこやきおやじ

Enriqueさん

映像を見て納得がいきました。ギターを立てて弾くのなら、この様な形状も考えられますね。「打首獄門」のエレキギターは立てて弾いていないので、他に理由があるのかなと思ってしまいます。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-23 20:31) 

Enrique

たこやきおやじさん,
貴ブログを元に私の意見を書いてしまいました。

私は,弦の多さに注目しています。獄門〜さんの楽器も7弦ですね。
クラシック・ギターであのような楽器を使うのはポール・ガルブレイスくらいですので,その構えの方に注目が行きますが,彼のギターを作ったルビオは元技術者であり,演奏性のリクエストもあったのでしょうが,楽器音響的にも意味のある製作をしていると思います。

むしろ,弦楽器は低音側と高音側がありますから本質的に非対称なものです。対称に作られるのは見た目の美しさからだと思います。実際対称に見える楽器でも,内部構造は非対称なことが多いですし,すべての楽器で,弦高を低音は高く高音は低くします。指板を捻っている楽器もあります。サウスポーの楽器は特注になりますね。

ピアノやハープでは高音側が短くなります。全て開放弦で音域が広いのでそうせざるを得ません。フレットで音程を作るギターやリュートとはそこは違うわけですが,弦が1本なら別ですが,複数本を近似的に弦長を揃えているだけで,低音弦はもっと長く,高音側の弦はもっと短くすべきなのですが,弦数が多くなると,「等弦長近似」が無理になってくるということでしょう。平行フレットの楽器は見慣れていますが,むしろ弦長非対称の楽器の方が,音響的には自然なのです。

獄門〜さんの楽器もそういう事だろうと思いますし,非平行フレットのエレキギターやエレキベースでは結構出ています。いずれも規定の弦数よりも多いものです。5弦ベースとか,7,8弦ギターとか。6弦では音響的にも弾きやすさ的にも効果は薄いのだろうと思います。

イエペスの10弦の番外弦は共鳴弦であって弾きませんし,8弦以下は却って高くなりますので,傾ける必要もないと思いますが,まともに低くした番外弦も弾こうとすると,弦の問題が出てきます。まっすぐのナットだと低音弦を非常に太くしないといけなくなります。

セルシェルの11弦は,実際に弾く弦ですので,まっすぐなナットとブリッジでは低音が苦しくなります。そこで,彼の楽器のナットは,傾けるどころか,低音に向けてフレット単位で長くなっていきます。しかし,それも製作者のボーリンの発明でもなくて,古楽器のテオルボ(キタローネ)では,低音側の弦長が極端に長くなっています。

以上まとめますと,
・ななめフレットは,低音側を長くする音響性配慮と矛盾しない。弦楽器ではむしろ自然。
・弾きやすさの改善。普通の構えでも弾きやすくなるはず。
・クラシックの楽器では(少なくとも見た目)対称形の楽器が好まれますが,エレキ楽器の場合はその効能もさることながら非対称のビジュアル性もあるのかも?
といった所です。

たこやきおやじさんのブログがきっかけで,私の楽器オタクにスイッチが入ってしまった様で,すみません。

by Enrique (2019-03-24 14:02) 

たこやきおやじ

Enriqueさん

私が知らなかった事ばかりで、大変参考になりました。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-24 14:15) 

Enrique

たこやきおやじさん,
オタク話に付き合っていただき,恐縮です。
by Enrique (2019-03-24 16:25) 

アヨアン・イゴカー

パルティータはギターの演奏も良いですね。
一曲目の曲は、高校生の時にフルート用になったものを練習していました。
二曲目のガボットは、ラジオから流れてきて、上手い演奏だなと思ったら、江藤俊哉でした。
by アヨアン・イゴカー (2019-03-25 00:00) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
それぞれ思い出深い曲の様ですね。
この人のギターは8弦でチェロの様に立てて弾くというのに目が行きますが,演奏自体は非常にきちんとしたものだと思います。
by Enrique (2019-03-25 06:45) 

EAST

ファンフレットというタイプのギターですね。
スティール弦のアコースティックギターでは米国の個人製作家のものではたまに見かけます。詳細ははEnriqueさんご指摘の通りのようです。以下販売されている現物のご参考まで。
https://www.dreamguitars.com/shop/2018-greenfield-g2-malaysian-blackwood-moonspruce-287.html

by EAST (2019-03-25 12:42) 

EAST

Enriqueさん

連続投稿で申し訳ありません。
多弦ギターで肝心なものを失念しておりました。
42弦ギターです。
https://www.manzer.com/guitars/index.php?option=com_content&view=article&id=25&Itemid=24
1000ポンドの張力がかかり、重さも6.7kg、製作に約2年間要したとのことですね。
by EAST (2019-03-25 13:04) 

Enrique

EASTさん,
6弦でもファンフレットの楽器はあるという事ですね。
ご紹介のページの楽器のスケール長は663.5mmとなっていますが,もしこれが⑥弦側としますと,①弦側は画像を測ってみたところでは642mmほどになりますか。低音側と高音側で弦長が変わるので,低音の豊さと,高音側はショートスケールで弾きやすくなると言うメリットを享受できますね。
by Enrique (2019-03-25 15:35) 

Enrique

EASTさん,
パット・メセニーの42弦ギター(ピカソ・ギター)ですね。
もうこれは変形ギターの極致ですね(命名は綴りは違えていますが,ピカソの絵のギターの様だという事の様ですね)。ハープギターの一種と見る事が出来ますか。これだけ弦が多いと,共鳴弦が鳴りまくりなので,ギターの音というよりは,ハープに近く,しかもスティール弦ですので別種の音響になっています。
6弦ギター部分は普通のアコギっぽいですが,他のハープ的弦は全て斜めにしてありますね。
by Enrique (2019-03-25 15:49) 

EAST

Enriqueさん、
さすが、42弦ギターはご存知でしたね。ご指摘の通り、弦が張ってありサウンドホールが外見はギターですが、音響は違いますね。
ファンフレットの低音側と高音側のスケール差についてもご指摘の通りと思います。また低音弦側のスケール長は6弦や5弦の調弦の音程を低く調弦する際に合わせやすいようです。アコースティックギターではスタンダードなチューニングより変則的なチューニングで演奏する人も結構いるようです。
言い方は悪いですが、可能であれば「何でもあり」かもしれません。
by EAST (2019-03-26 13:25) 

Enrique

EASTさん,
42弦ギターに関しては,その様なものがあるぞという認識のみで,そう詳しいわけではありません。一般に普及するとはとても思えませんが,面白い試みだと思いますし,ミュージアム・アイテムですね。これを弾きこなすパットは天才です。
by Enrique (2019-03-26 15:49) 

いっぷく

コメントありがとうございます。
鶴岡雅義さんが似合いそうな弾き方ですね。

>支援学校と普通の学校との行き来が制度的に可能なのかどうか
>by Enrique (2019-03-25 13:12)

障害のある子もない子も、障害の重い子も軽い子も
ともに学ぶインクルーシブ教育が理想かもしれませんが
実現はなかなか難しいでしょうね。

by いっぷく (2019-03-26 23:49) 

Enrique

いっぷくさん,ご訪問ありがとうございます。
なるほど,鶴岡雅義さんですか。あの方小型のレキントギターを使われたので,構えに共通点があるかもしれません。
障害者の教育に関しては理想の実現は難しいでしょうが,少なくとも偏見や無責任な意見で苦しめることはあってはならないと思います。
by Enrique (2019-03-27 08:11) 

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