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ヘルツフリーと電子レンジ [科学と技術一般]

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ヘルツフリーなる言葉は正確では無いと思いますが,交流電源の周波数が50Hzでも60Hzでも大丈夫と言う意味で使っているようです。

日本の国の電力の周波数が50Hzと60Hzに分かれてしまっている事はご承知の通りです。
その辺の経緯を書いた事があります。

息子が一人暮らしを始めるとのことで,電子レンジを買ってやりましたが,なぜか高い機種は50Hz/60Hz両用いわばヘルツフリーですが,安いものは決まって50Hzと60Hzそれぞれの専用になっています。

電源周波数がなぜ,電子レンジに影響があるのか,にわかには理解できませんでした。なぜなら,電子レンジで発生させる電磁波の発振周波数はマグネトロンと呼ばれる素子で決まっており(およそ2.45GHz),これに加えるのは直流電圧だからです。

ちょっと調べてみたところ,この差はマグネトロンに掛ける直流高圧の作り方にあったようです。安価なものは交流100Vを直接トランスで昇圧したのち整流して直流電圧を作っています。この昇圧トランスの最適巻き線数が周波数により異なるのです。50Hz用の方が巻き線が多いのです。

電源トランスに限って言えば,50Hz用を60Hz地域で使っても若干効率が下がるだけで危険性は少ないしょうが,巻き数の少ない60Hz用を50Hz地域で使うと,効率のダウンだけでなく一次側の励磁電流が流れ過ぎる危険があります。1次側と2次側のセットで巻き数を変えなければいけないので,共用のトランスは作れないのです。コストをぎりぎりまでカットした製品では高価な部品は使えません。昔のブラウン管のテレビも内部で高圧を作っていましたので,各周波数専用だったはずです。

一方,有名メーカー製の高いもの(ヘルツフリーのもの)は,電源の交流を一旦直流にしてからインバータで高周波を作って小型トランスで昇圧したのち直流化するので,元の交流周波数は関係ないのです。

ちなみに息子用に購入したものは50Hz専用でした。
どっちでも大差ないという無責任な意見もありますが,上であげた専用トランスの事情のほか,扇風機や洗濯機などの交流モーターを使うものは原理的に回転数が周波数に比例して変化します。50Hzで毎分3000回転のモーターは60Hzでは毎分3600回転と2割も回転数が上がりますので,注意が必要です。当然効率も異なります。動力でなくても,電子レンジの様な大きな電力を使うものは,よほどの知識が無い限りは専用のものを使わないと危険なケースがあります。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

さすがにお詳しいですね。電源の周波数の違いは、関東から関西へ引っ越した時やその逆の時が主に問題になりますね。ただ関東の電気屋で60Hz専用の製品は特に注文しない限り売っていないと思いますが。一般の人が、大きな電力の製品を使う時はまずコンセントの容量に注意しておけばよいと思います。交流やその周波数の意味を曲がりなりにも理解している人は、日本人のおそらく3割くらいしかいないのではと思っています。(^^;
by たこやきおやじ (2019-03-20 21:03) 

Enrique

たこやきおやじさん,
日本国民の科学技術への関心は先進国中でもかなり低い様です。
むしろ技術が進歩していなかった昔の方が,しろうとでもラジオを直したり,オーディオをいじったりしていました。現在はしろうとはあまりいじれなくなっています。昔のオーディオが面白かったのはしろうとが思い思いにいじることができたことでしょうか。
現在は多くがヘルツフリーになっていますし,専用の場合もその地域対応のものしか普通は入手できないですね。今回は仕入れでも間違ったのか異なる周波数の製品を安く買うことができました。
電力容量が問題になるのは,よほど特殊なことをしなければ,エアコンくらいで,コンセントの形が異なっていますから,大丈夫でしょう。
一般家庭には来ていないですが,三相交流を理解されている方は更に少ないかも知れません。三本どうやってつなぐのだと聞かれたことがあります。
by Enrique (2019-03-20 23:25) 

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