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楽器価値の変遷 [雑感]

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リサイクル・ショップやネットオークション,フリマなどを覗いていると,結構良い楽器が捨て値で転がっていたり,どう見ても廃棄物の様な楽器が結構なお値段で売っていたりする事があります。

古いものは,「中古品」というとイメージが悪いからか「ヴィンテージ品」とかなっています。
私は骨董は分かりませんが,クラシックギターに関しては長年やっている分,少しは鑑識眼があるかなと思っています。

私の鑑識眼で明らかにお買い得なものは買ってしまいますし,もちろん逆のものには目もくれないわけですが,古いものになってくると,なかなか評価が難しくなってきます。

ギターに限らずですが,ブランドの力が大きい様ですし,時代による人気・不人気のムラもあるようです。
さすがに,ハウザーやアグアドのクラスになると別格ですが,かつて日本で非常に人気の高かったラミレスはこの頃あまりその神通力がない様な気がします。

他の有名外国製楽器も思いの外安価で入手することが可能ですし,さらに国産製作家のものは,人気の高い河野・桜井を除いては結構安値です。

普及品では,松岡良治,ヤマハ,アベ・ガットあたりがよく出回っています。
かつては鈴木バイオリンもギターを製作していて,これが悪く無いです。かくいう私もリサイクルショップで入手したものを持っています。

さすがに高級品でそう言うことはないのですが,普及品クラスでは,スチール弦を張られてネックが反っていたり,ブリッジがめくれ上がっているものを見かけることがあります。形は保っていても,残念ながら楽器としての寿命は終わったと見るべきでしょう。「トラスロッド未確認」などと言う記述を見かける事もありますが,クラギにはトラスロッドなどありませんから,確認のしようもありません(笑)。

もちろん,それなりの手工品の楽器ならば修理して使うわけですが,低価格品では修理のコストが楽器のお値段を上回ってしまいます。ヤマハの古いダイナミック・ギターなるものはスチール弦を張っても大丈夫らしく,思いのほか高値で販売されていたりして驚きます。

現在,クラギの国産楽器で最高級品は新品で100万円程度ですが,かつては最高額が20万円とか30万円と言う時代もありました。70年代前半では河野やヤマハのGCの最高級モデルが30万円だった記憶があります。

現在,河野・桜井の最高級モデルが,100万円ほどです。
だいたい貨幣価値の推移を反映しているのでしょう。それをみる指標として,厚生労働省の大卒初任給の年次推移が使えそうです。

1974年の大卒初任給が78,700円です。当時,河野やヤマハの最高級のものが,大卒初任給3.8ヶ月分で買えたことがわかります。2012年の大卒初任給が201,800円ですので,その比率で行くと,76.9万円ということになります。

もちろん,70年代初頭のインフレ期とか80年代終りからのバブル期では急激に物価・給与とも上昇しており,材料費や工賃には多少のタイムラグがあるでしょうが,目安にはなります。

ヤフオクなどを見ていると,国産楽器ではごく古いものを除いては新品定価よりも安く取引されるのが通例のようですが,河野に限っては新品価格を上回る価格が付く事も少なくありません。70年代前半の楽器でしたら,かりに定価2万円や3万円の楽器でも,貨幣価値からすれば現在の10万円程度の価値ですから,定価で買えれば御の字ではないかと思っています。

「自宅に眠っているピアノをお売りください」という新聞広告をよく見かけます。
家庭に死蔵されているピアノの回収・再生がビジネスとして成り立つのでしょう。幸か不幸かギターはピアノよりも転売は楽ですが,それでも死蔵されているクラシックギターも多い事でしょう。もちろん,クラギの何十倍ものアコギ,エレキが世の中には眠っていることでしょう。新しい楽器の製造販売よりも,レストアや修理のほうがビジネスになる時代のようです。

楽器のお値段も需要と供給の関係で決まるでしょうから,当然人気で希少性のあるものは高くなります。しかしながら楽器を使う立場からすれば,その希少性というのは余り意味が無いようにも思います。それ程強力なブランドでない生産数の多いものは,随分とこなれたお値段になっているように感じます。その結果,私の所蔵楽器数もうなぎ登りになってしまっています。
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