古典と現代 [雑感]
「古典」とか「現代」とかいうと,音楽や文学などの芸術分野の話のように思えますが,物理学や制御理論にも,古典と現代があります。
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制御理論でも,昔習ったラウス-フルヴィッツやナイキストの安定理論などは古典論です。こちらの領域は物理学よりも進化はやや速い様です。大雑把には入出力信号を周波数領域で扱うのが古典で,時間領域で扱うのが現代論のようです。ポストモダンも出て来ていますが,依然古典論も広く使われています。
一方,専門領域で,オリジナルなものを開拓する分野では古典をやっていても始まりません。理論等はどんどん拡張され一般化されて行き,やがて完成を迎えます。完成は終了です。そしてまったく新しい発想が出てきたとき,それまでに完成した分野は古典となるわけです。
適用範囲が拡張され,旧来の理論の適用範囲を包み込むのが普通の進化です。進化前の古典は古臭くて,適用価値は無いのか?と言うと,むしろ逆で,正しく適用範囲内であれば,きちんとした結果をもたらします。鶏を料理するのに牛刀を使う必要は無いわけです。むしろ古典論の範囲であれば,結果を整然と俯瞰的に見通せると言うメリットもあります。
理工学分野の古典/現代は分かりやすいですが,本家?の音楽分野で考えてみるとどういう事になるのでしょうか? 音楽分野で狭い時代で古典というと,バロック期とロマン期の間の,ハイドン,モーツァルト,ベートーベンの辺りの時代となります。メロディ+伴奏で和声を構成するモノフォニーが確立した時代と見られます。
しかし,今日クラシック音楽(Classical Music)と呼ばれる範囲は,遥かに広大です。特定の古典期の音楽を指すわけではなく(もちろんそれも重要な構成要素であることは確かですが),ルネサンスだろうがバロックだろうが,印象派だろうが近現代曲であってもクラシック音楽の範疇に入れられます。むしろ引き算で,すべての音楽から,歴史的な民族音楽とポピュラー分野を除いたものといっても良いかもしれません。しかしこれとて曖昧です。民族音楽のベースが無くては,いわゆるクラシック音楽も底の浅いものになるでしょうし,近代以降ポピュラー音楽的要素も入ってきています。例を挙げることはしませんが,その垣根は曖昧です。
文学など他の分野ではどうなのでしょうか。
古典と言うと知っていないといけない基礎になるかと思います。話は音楽や物理からは外れますが、家内から今日聞いた面白い話。
家内が入っているクラブにバレエを長く習っている小母さんがいる。彼女は基礎の一つ一つを疎かにしてしっかりとやっていない。それなのに高度なピルエットをやりたがる。腕で軽く円を作って、そのまま回転しなければならないのに、それをせずに拝むようなポーズのまま回るので、ちょっとシャーマンのようだった、と噴出しながら言ってました。
by アヨアン・イゴカー (2016-05-01 22:21)
アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
どの分野でもそういう方いらっしゃいます。しかし,それもその方の価値観だから尊重しないといけないと思いますし,基礎の大事さを身をもって教えてくれる人でもある訳ですね。
by Enrique (2016-05-01 23:25)
樋口一葉の現代語訳というのがありますが、
最近は夏目漱石でも現代語訳があるそうです。
そのままでは読みにくいということでしょうが、
このへんの時代だとすでに古典ということになるのでしょうか。
でも単純に読みにくいから古典か、というと
そうでもないですし。
明治時代より以前は古典とかいう区切り方もあるでしょうが、
ある程度評価の定まっている作品という区分けもあります。
どのへんが区切りになるかはむずかしいと思います。
by lequiche (2016-05-08 02:08)
lequicheさん,ありがとうございます。
夏目漱石の現代語訳と言うのは初めて聞きました。
現代語訳があるあたりが古典という見方も出来るのですね。
ある程度評価が定まっている,というのも区切りかも知れませんね。
理系の理論などとは異なり線引きは難しいところでしょうが,作品が多数あることも区切りの難しさなのでしょうか。
by Enrique (2016-05-08 07:08)