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カルカッシのOp.59を見る [演奏]

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福田さんのツイートに影響されて,カルカッシのOp.59を見てみました。
氏はカルカッシのOp.60を上げてからも,道に迷ったら何度もOp.59に戻って音楽性を磨いたと言います。

なぜか「カルカッシは初心者向きで,ピアノのバイエルのようなものだ」と軽視する向きがありますが,全く違います。これをピアノのバイエルだと言う人はどちらの楽譜もまともに見てないのでしょう。

Op.60は楽曲形式は単純でやや技術に振った嫌いがありますが,Op.59では,様々な形式を経験させます。福田さんは50の練習曲の事を言っているものと思われます。ロンド形式あり,変奏曲ありです。バイエルピアノ教則本のどこにロンドや変奏曲形式の曲が出てくるのでしょうか?

さて,私の手元にある阿部編では,入門部分を置き換えているほか,50の練習曲を45番までで止めています。阿部編で最終曲となる45番の変奏曲「ナポレオン二世の愛せし円舞曲」でも,「間違えずに続けるだけでも何週間も練習必要なので,その時間使って有意義な練習曲に入った方が良いようにも思う。」とのコメントです。46番以降カットしたのもそのような理由からでしょう。

やはり当時は初心者向けの教材と見ているところが有るようです。確かに,この曲を弾くのに何週間もかかる生徒にこれを弾かせるのはまずいでしょう。初見で弾ける程度の人が,音楽性を磨く為に使うというのが正解でしょう。

この曲集は有り難い事に,現在ではIMSLPで幾つかの版を見る事が出来ます。右の扉のものはドイツ語フランス語併記のものです。英語版のものもあります。第3部の50曲の楽譜見るだけであればどれでも構わないでしょう。

福田さんが言う様に,上級者であっても音楽性を練習する為であれば,有用でしょう。様々な拍子の曲に加え,ワルツ,カプリッチオ,ロンド,マーチ,狩りの歌などのタイトル曲が繰り返し出て来ます。終わりの方にはイタリア風,スイス風,ウェーバーの主題による変奏曲など,技術は易しくても内容豊富な曲が連なっています。音楽表現を身につける練習として好適でしょう。ギター曲である程度内容があって,初見で弾ける様な曲と言うのはそう多くないのではないでしょうか。身近なところに教材は転がっているものです。昨晩酔った勢いで幾つか弾いてみました。以下は38番の狩りの歌(飲酒演奏です)。

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REIKO

IMSLPでOp.59の全体を見てみました。
最初は入門的な説明から入っていて、その後音階などの基本練習やエクササイズ、短い練習曲…と順に進んでいき、第三部では様々な書法や様式の楽曲で、ここまで学んたことの実践的まとめをする、という構成ですね。
なかなかきちんと書かれている教本だと思いました。
確かに最初の方は「初心者向け」ですけど、最後の方はそんな易しくもないように感じます。
やったことない楽器は楽譜を見ても難易度が分かりませんが、中級の前半くらいですか?

狩りの歌の演奏は、ジャラ~~ン♪のところが威勢よくて、お酒が入ってるせいか?すごく気分よさそうな感じが伝わってきました。
曲は、短調の部分が少し挟まっていれば、もう少し変化がついたかなと思います。 全編明るい曲ですね。
by REIKO (2016-02-14 01:08) 

Enrique

REIKOさん,ありがとうございます。
ギターでは,教本が少ないせいか,ごく入門から入り,かなりのところまでやるようです。少なくともバイエルのレベルは大分越えています。
「ギターのバイエルだ」という見方は入門部分だけを捉えているのだと思います。ただ,従来は手を加えた版しか見られなかったのも原因だと思います。私もIMSLPで見てみるまでその全貌は知りませんでした。
比較的易しい技術で様々な様式を体験させていて中級程度は十分カバーしていると思います。ただ多少楽器や奏法が異なり流派があるようですので,あまり一冊でずうっとやるのが重たいのかも知れません。阿部保夫さんが書いていた様に,45番1曲で何週間もかかるようですと,1年2年では終わらず飽きてしまう恐れがあると思います。カルカッシの時代ならば十分バラエティに富んだ内容だったとしても,その後の音楽の展開も大きいですから。
ちなみにWalter Jacobsによる版では,第3部の後に本格的な新し目の曲から成る第4部を追加しています。我が国のカルカッシもそうですが,時代と国とで様々なカルカッシが出来たようです。
基礎から学んでいる方は50の練習曲もかなりやっているのだと思いますが,私はOp.59を一曲も弾いた事が無かった(個別に載っていたものはあったかも?)ので,今になって弾いてみています。
by Enrique (2016-02-14 06:38) 

アヨアン・イゴカー

これはあきらかにバイエルとは水準が異なると思います。
技術的にも音楽としても。
よった勢いで弾かれた演奏、とても楽しく拝聴しました。文章を読む前に演奏を聴いて、これはどうも『狩の歌』風だと思っていたら、やはりChasseだったのですね。角笛で追いかける印象でしょうか、三度、五度、六度の音程の流れがあるとそういう風に感じます。ブルグミュラーにも狩の曲がありますが。
by アヨアン・イゴカー (2016-02-14 22:16) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,ありがとうございます。
このOp.59は入門からなので,ピアノのバイエルも含みますが,終わりの方はブルグミュラーのOp100やチェルニーの何番かも含んでいると思います。カルカッシのOp.60も含めるとショパンの練習曲に匹敵との指摘もあります。
当然バイエルのそれの何倍も時間を掛けないければならないはずです。
楽譜が一段なので,ピアノ譜よりもページ数が少なく見えるせいもあるのかも知れません。古い古い,役に立たない,と言われ続けているのですが,しっかりと価値を見直してみることも重要でしょう。少なくとも,カルカッシの時代までの古典曲をやるには極めて妥当なものでしょう。入門後のモチベーションの維持は大変と思いますが,どのレベルでやり直しても構わないでしょう。
by Enrique (2016-02-15 05:32) 

カステラミルク

Enrique様、お久しぶりです。

黄色いカルカッシ(溝淵編)、大好きです。
あれは、「カルカッシねえー…」と手が回る人に首を傾げられた苦い思い出が…。

手が動くようになる教材ではないですね。
単旋律とごく簡単な和音を弾いたら、
即ほんものを弾こうみたいな。
研修無しで仕事しながら仕事を覚えるみたいな。
本の最初に溝淵先生が、生徒をやめさせない教材を作ったみたいなことを書かれていて、劣等生だった私が見事にやめていないので、
やっぱりすごい教材だなって、思います。

私は、頑張って弾いて、悩んで、置いて、また帰って、少しずつこれが弾ければ、ギターは十分です。

by カステラミルク (2017-10-30 17:08) 

Enrique

カステラミルクさん,お久しぶりです。
技術難度の高い派手な曲をバリバリ弾くと言うのももちろんアリでしょうが,それ至上主義は私も反対です。
Op.59はさまざまな楽曲形式を経験させ音楽性を身につける曲。技術難度の高い曲でそれをやったらおっつきませんから。カルカッシは不当に低く見られている(いた)ところがあると思います。むしろ見直されているのではないかと思います。福田さんの様な名手がそう言ってくれると心強いですね。

by Enrique (2017-10-31 09:18) 

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